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「将来有望な男ランキング」1位の座を15年連続で守り続けてきた魔術界のサラブレッドにして時計塔の一級講師ケイネス・エルメロイ・アーチボルトは、2018年の冬、講師3年目の転属新人魔術講師ディルムッド・オディナにその座を奪われ、連覇の道を絶たれてしまう。
8歳の身より守り続けてきたトップの座から陥落するということは、いかに低俗で普段から軽視していた凡人共の行うお遊び半分のランキングであったとしても無視できるものではなく、ケイネスの高すぎるプライドを大きく傷つける結果となった。

しかしこの結果をより一層最悪なものとしてケイネスの記憶に刻み付けてしまう出来事が起こる。なんと初恋の相手にして学部長の娘であるソラウ・ヌァザレ・ソフィアリが学部長と楽し気にランキングのことを話しているのを耳にしてしまったのだ!

「で、ソラウ…君はもちろんケイネスに投票したのだろうね?」
「まさか!私はディルムッドに投票したわ。だって彼はケイネスより遥かに輝いているんですもの」
「そうか…まぁ、お前が誰に投票しようが構わないが、その事を彼には言うんじゃないぞ。仮にもお前の最も有力な婚約者候補なのだからな」
「あら、彼はこんな低俗なもの気にしないわよ。彼はいつだって馬鹿にして鼻で笑っているんだから」

(あぁそうだ、ソラウ。君のいう通りだ。いままで私は「こんな低俗なもの」と馬鹿にしていた。君がディルムッドに投票したと知るまでは!そしてこの私が君の婚約者候補なのだと知るまでは!!)

今まで私は、名門生まれ故、己の地位や実績に関して自身の才に付随する「当然の事実」であると考え、そこには驕りも、高慢さもなかった。だか事ここに至ったからにはその考え…改めさせてもらうより他ないようだ。

「許さんぞ…ディルムッド・オディナ…とかいうやつ!!!」


・:*三☆・:*三☆・:*三☆


あのランキングから一週間。ケイネスの憎しみを一心に受けるディルムッド・オディナだったが、幸か不幸か、二人が時計塔内で遭遇することは一度もなかった。
なぜならディルムッド・オディナは「将来有望な男ランキング」だけでなく「優秀な講師ランキング」「人気講師ランキング」「抱かれたい男ランキング」でも一位を獲得し、公私ともに忙しい日々を送り、北欧から栄転してきた若き美貌の講師を歓待する場すら設けられていなかったのだ。加えてケイネスが鉱石科であるのに対し、ディルムッドは降霊科に属していたため、ケイネスがディルムッドと相対するためには降霊科の講師の飲み会にでも誘われない限り不可能であった。

そんな状況に人知れず歯噛みし、兼任する降霊科において若手講師に声をかけようか掛けまいかと考えあぐねていたとき、運命の女神は彼に微笑んだ。
もっとも、今となってはその「微笑み」がどのような類のものであったのかは甚だ疑問であるのだが、この時点で何も知らないケイネスは心から降霊科の学部長に心の中で感謝した。

要約するとこうだ。
久々に我が学部から将来有望な若手講師が現れた。どうだろう、ここは一つ、降霊科講師をも兼任し、将来有望な男二位と一位で特別講義を開き、広く世界中の魔術師たちに聴講させてやっては。
オディナ君は確かに将来有望ではあるが、現段階では新米講師に過ぎない。是非とも彼の指導を頼みたい!
君たちは降霊科のツートップだ!

青筋を額に浮かべながらケイネス・エルメロイ・アーチボルトは満面の笑みで承諾の意を伝えた。

「是非とも引き受けさせていただきます。私も前々から彼のことは気になっていましたから。えぇ、もちろん、彼が降霊科の将来を担える人間になるよう、この私自らが懇切丁寧に指導しますとも。どうかご安心を。これで彼の将来は決まったも同然です!」

ブッ潰してやる!!!
待っていろ、ディルムッド・オディナァアアアア!


・:*三☆・:*三☆・:*三☆


ディルムッドへの憎悪が募る程、ケイネスの笑みは深くなっていく。

「ケイネス!あなたディルムッドと二人で特別講義を開くんですって!?ぜひ私も聴講したいわっ」
「ソラウ…それ程までに私の講義に興味を持ってくれるとは…!!」
「あなたと一緒ならディルムッドも安心ね!くれぐれも彼に恥をかかせないで頂戴、お願いよケイネス」
「あぁ…まかせてくれ…」

そして漸く忙しい二人の日程調整が済み、降霊科特別講義の開催日が決定した翌日、ここで初めて二人は顔を合わせるに至った。場所は降霊科の会議室。その後、学部長の私的な談話室へ移り酒などが供されることになる。

「お久しぶりです、ケイネス殿!!」

新米講師であるにも関わらず、既に場に馴染んでいるディルムッド・オディナが眩しい笑みで握手を求め、挨拶してくる。

「はて…私の記憶が確かなら、君とは初対面のはずなのだがねぇ、ディルムッド・オディナ君」

人差し指で額をトントンと叩きながらケイネスはいつもの要領で挨拶らしからぬ挨拶を返した。
魔術階梯が下の者とケイネスが握手を交わすことなどない。言葉を返しただけマシな方だ。
こうして内心いい感情を抱いていないディルムッドとの共演講義の挨拶は終わった。後は話題の特別講義に一枚噛みたい「協力者」という名のハイエナどもを交え、講義の内容を協議し、大まかな流れまでを決めて場所を移したのだったが、その移動後の記憶がケイネスには欠落していた。

朝、痛む頭と共に目を覚ますと、そこは見知らぬ安ベッドのうえで、なぜか隣に全裸のディルムッド・オディナが横たわり、例のキラキラした笑みでこちらを見ていた。

「おはようございます、ケイネス殿っ」

こうして現実を直視できないケイネス・エルメロイ・アーチボルトの「現実」が動き出したのであった。

「何が起きた…。私は、いったい…っ」

うわぁああああーーーーー!!!!

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