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あの世での扉間の私生活について考えてみた!





オレにはあの世にいってから出来た秘密がある。
兄者にも誰にも話していない秘密だ。

なんとオレはあの世でイズナと結婚したのだ…。

とはいえ、木ノ葉崩しの際、かつてオレ自身が作った穢土転生によって現世に呼び戻され、挙句、サルに屍鬼封尽されて鬼の腹のなかに封印され早数年。穢土にも戻れずにいたのだが、ひょんなことから屍鬼封尽が解かれ、再び穢土転生によりこの世に舞い戻ることとになったオレ。

しかも今回、よりにもよってマダラまでもが穢土転生されているという始末…。非常に頭が痛い。

とはいえ、現状をなんとかせねばイズナの待つあの世に戻るに戻れない。

(はぁ…やるしかないか)

マダラの名を聞き一人張り切る兄者を横目に、オレは人知れず溜息をつくのだった。


・:*三☆・:*三☆・:*三☆

広大で果てのないあの世。
そんなあの世で父でもなく母でもなく先に死んだ弟たちでもなく、また兄者でもなく、イズナと巡り合ったのも何かの縁なのだろう。
正直なところ、死の直前に考えていたのがイズナのことだったからではないのか…とオレは見当をつけているのだが、確かめるすべもなくすべては謎のままだ。

願って会えるものならば兄者にだって会いたかった。
弟たちにだって、父上にだって会いたかったし、母上にも会いたかった。

だがオレが出会えたのはイズナだけだった。

「人は死んだらどこへ行くのか」

それはすべての人にとって永遠の謎だった。行った人間から話をきかなければ誰にもわからない。しかし行った人間は行ったきり戻ってくることはないのだ。だから誰にも何もわからない。
そして実際に住んでいる(といっていいのか?)オレにもよく解からない場所だった。

一般的に「穢土」と「浄土」は対をなすように考えられている。だが「穢土」において罪を犯した者は「浄土」へは行けず、あの世で裁かれるというのもまた一般的な考えだ。宗教によってはこれらの示唆するものも違っており、生者にとってあの世ほど謎な空間はない。

その謎な空間から、穢土に死者を転生させ一時的に生を与えるのが穢土転生の術なのだ。

で、オレやイズナはどこにいるのか。
少なくとも「浄土」ではないだろう。だが「地獄」でもなかった。

オレたちのいる場所は何もかもが曖昧で、悪くいってしまえば「いい加減」な場所だった。
時間の概念はなく、空間にも果てがなく、薄霧がかった広大な世界だった。そのくせご都合主義も極まれりとばかりに念じれば何でも空から降ってきた。
ちなみに、オレとイズナの私邸も空から降ってきた。互いに思い描いたものが違ったのだろう、降ってきた家は「邸宅」といって差支えない立派な佇まいのものであったが、千手とうちはの家の特徴を併せ持つちぐはぐな家だった。

「なにこれ…変なの…」

降ってきた家を見て呟いたイズナの言葉は、屍鬼封尽により家に帰れず穢土で数年の時を過ごした今でも忘れられない。
オレとイズナは死してなお「千手」であり「うちは」なのだ。

空腹も感じず、老化もなく、時の流れを感じない世界で、それでもオレたちは家を持ち、飯を食べ生活していた。
イズナは最後にオレと対峙したあの時のまま若かった。そしてオレもまたイズナと最後に対峙したあの時の姿に戻っていた。不思議なもので服装も自然とその時期によく来ていた黒の上下になっていた。

ちなみに、オレたちのいた世界は空間が広大過ぎるため、人口密度は極めて低く、オレが知るどんな田舎よりも閑散としていた。
何もない、ともすれば天地さえ見失いそうになる薄霧がかった空間に存在する邸宅は珍しいらしく、オレたちが忘れたころに一人、二人と家を訪ねてくる者があったが、みな一様に自分の置かれた状況を考えあぐねている様だった。

人を殺しても地獄には落ちない。

それが唯一あの空間でオレたちが出せた答えだった。もしかしたらこの世界には「穢土」と「あの世」しか存在しないのかもしれない。
あるいは、「地獄」に落ちるべき人間のすべてはふるいにかけられ、「浄土」に行くべき人間は救い上げられ、そのあとの残りカスが行き着くような空間だったのかもしれないが…。

なににせよ、あの広大な空間でオレは何の苦も無くイズナに出会い、イズナの方も時間の概念のない空間を面白半分にそぞろ歩きしていたらオレに出くわした、という感動も何もない再会だった。
互いに死んでいる自覚はあるため、再び武器を手に戦おうとは思わない。

紆余曲折の末、オレたちは結ばれ、死後の世界で生産性のない関係を築いたわけだ。
だがオレは幸せだった。生きている間に持てなかった家庭というものを持ち、生前には無自覚だったにせよ思いを寄せていた相手と添うことが出来たのだ。

だのに、そんな生活がどれだけか続いたある日、オレは穢土へと呼び戻された。

「穢土」とは読んで字のごとく、けがれた国土を指し、現世を意味する。

実際のところ、屍鬼封尽から解放された直後、オレはあの世に一瞬だけ戻っていた。戻っていたのだ!
見慣れた私邸の門扉を開こうと手を伸ばしたところで再び穢土へと呼び戻された。家の中からは「扉間…扉間なの!?」とイズナが玄関に向かって駆けてくる気配があった。

なのに次の瞬間には穢土だ…。
しかもマダラまでいるという…。

最悪以外の何物でもない。

あの世でイズナはボケ老人のように定期的にマダラの話をオレに振ってきた。オレはその話に静かに相槌を打つだけだ。

正直、オレはイズナに嘘をついている。

時間の概念が欠落したあの空間で、オレたちはいつまでも新婚夫婦だ。誰が云える?イズナが死んでからマダラの辿った人生を。
云えるわけがない。

オレより先にマダラが死んだことは伝えてあったが、戦争で負傷し死亡したと伝えるに止めておいた。

よってイズナの話の結論はいつもコレだ。

「あぁ~、兄さんに会いたいなぁ」

正直、オレはまったくもってマダラになど会いたくなかった。

「ここでなら戦争もないし、兄さんも柱間と仲良く暮らせるよね」
「あの河原でのこと、僕、少しだけ後悔してた。それに同盟に反対してたことも、いまは後悔してる」
「結局、兄さん一人に全部押し付けちゃった…」

イズナはいう、「兄さんに会いたい」と。「謝りたい」と。


ところが現実はどうだ…。
マダラは実際90過ぎまで生きていたのだ!
つまり、オレがイズナと新婚生活を送りつつ、いつマダラがやってくるか気が気でない生活を送っていた間中、穢土で兄者の細胞を培養し、一人楽しく穴倉生活をしていたというわけだ!

イズナよ…お前が会いたがっていた兄は手の付けようがないほど狂っているぞ。このまま合わない方がお前のためだ。

「兄さんに会いたい…」と、寂しげに呟く思い出の中のイズナに語り掛けながら、オレはそっと目頭を押さえた。

(早く家に帰りたい…っ)

しかし同時にそれが何を意味するのかも理解しているつもりだ。
この戦争が終わったら、今度こそ、マダラがうちにくるかもしれない…。

(マダラより先にあの世に行かねば!!)

オレは決意も新たにチャクラを腹の底から練り上げた。

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