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少しエロ要素がある扉イズのお話。

「要らないのならオレに寄越せ。オレがもらう」

そういって扉間は、失明しかけて布団の上で失意に沈む僕にキスをし、そのまま押し倒した。
依然として僕の身体には扉間から受けた刀傷が生々しく残り、毎夜の如く僕を苛んでいる。

「どういうつもりさ!」
「さぁ…自分で考えてみろ」

理由をいわない男は普段の仏頂面そのままに僕を上から見下ろし、退く気配は微塵もない。
衰えた視力でも間近にある男の顔くらいは判別できる。だが痛む傷跡を抱えたまま抵抗できるほど甘い相手ではなかった。
扉間に押し倒されるという状況がうまく理解できなかった僕はその理由を考えた。
弾き出した答えは実にシンプルで、とても分かりやすい。

「お前が勝者で、僕が敗者だから」

僕の答えに扉間はその是非を示さず、寝たきりで体力が落ち、細くなった僕の首筋に顔を埋め、執拗にキスを落としていった。
夜着の上に這わされた男の手は大きく、自分のものとは違い、力強く節くれ立っていた。

これから何が起こるのかなど考えるまでもない。
戦場ではこれが当たり前だった。
ただ僕にとってタイミングよく両一族の同盟が成り、事が有耶無耶になっていただけのこと。

抵抗しない僕を訝しがる様子もなく、やがて扉間の手が夜着の襟元を乱し中へと入ってきた。
僕は、もうよく見えもしない瞳を静かに閉じ、ただ時が過ぎるのを待った。

兄が里外にでて不在の夜、痛み止めを持ってやってきた男は、もはや僕にとって『勝者』以外の何者でもなかった。

僕は負けたのだ、この男に。


・:*三☆・:*三☆・:*三☆

イズナの腹の傷の治療は、同盟成立と同時に千手にとって最重要事項となった。イズナの生死はそのままマダラの精神状態に影響し、意思決定に直結することが分かっていたからだ。
千手が負わせた傷を、千手が治す。
酷くトンチンカンでありながら、しかし和平に最も近い手段でもあった。

同盟が成り一年が過ぎた頃には、イズナの腹の傷は容体も安定し、生死の境を彷徨うことだけはなくなった。
だが次の問題が浮上した。
イズナの目だ。それは同時にマダラの抱えている問題でもある。

うちはの目をどうするか。
それは千手にとって最も頭の痛い課題だった。

千手はうちはより医療の面において優れている。何より兄者の力を使えば治せぬ物などないように思えた。実際、兄者はその力で持って、マダラの眼を治そうとしたこともあった。しかしそれは叶わず、マダラはイズナ同様、不自由な視界での生活を余儀なくされていた。

そんな日々が更に一年程続いたある夜の晩。うちはの使いのものが千手の邸を訪れ、強めの痛み止めを処方してもらいたいと言ってきた。
兄者が不在だったためオレが対応したのだが、それが不味かった。

いま思えば、そう…、それが不味かったのだ。

「いままでの薬では痛みが取れぬようなのです。ここ数日、夜な夜なお部屋から苦しげなお声が聞こえて…」

うちはにはマダラに心酔するものも多いが、同じようにイズナに強い思い入れを持つものも多かった。大抵はマダラの傲慢で独善的なやり方についていけない者や、争いを好まない質の者が、穏やかなイズナの方を慕い集まっているようにオレには見えた。

オレたち兄弟とは真逆のような二人。

戦場においては、なんの皮肉か、その真逆の者同士が一騎打ちで戦っていたのだから不思議なものだ。
オレは使いの者にすぐ用意して持っていく旨を伝え、うちは邸へと帰した。

風の強い夜だった。
空を覆っていた雲は風に飛ばされ、散り散りにどこか遠くへ押し流されていったようだ。瞬く星々と夜道を煌々と照らす月だけが、取り残されたように夜空を飾っていた。
冷えた空気の中、オレは薬を手に、かつての好敵手の元を訪った。


・:*三☆・:*三☆・:*三☆

強めに処方した薬には、睡眠導入薬も混ぜておいた。ついでに神経の昂ぶりを抑える薬草も加えておいたが、これらすべて今のイズナにとって必要のないものであることは顔を見てすぐに分かった。

ここ数日、夜毎、苦しげな声を上げ痛みに苦しんでいるようだと使いの者は語ったがそうではない。

泣いていたのだ。
恨めしい、怨めしい、と…己の境遇を嘆いていたのだ。

身体も自由にならず、閉じかけた光の中で、イズナは三年間、気丈に振る舞い弱みを見せなかった。
兄のため、一族のため、誇りのため。イズナは誰にも弱音を吐くことをしなかったのだろう。
久々に見たイズナは、行燈の仄暗い明かりに照らされ憔悴しきっているように見えた。

日の光を殆ど浴びることなく過ごした年月は、戦場においても色白であったイズナを更に白くしていた。なのに頬と唇は紅をさしたようにほんのり色付き、オレを拒絶し伏せられた瞳はしっとりと水を湛え潤んでいた。

ただただ美しいと思った。

ここにいるのはただのか弱い麗人だ。かつて戦場で互いの首を狙い火花を散らしたあの青年はどこにもいない。
肉付きの薄かった身体は、あの頃よりも更に細くなりオレの心を甘く痺れさせる。
白い肌に浮かび上がる青白い血管がわずかに脈打つ首筋からただただ目が離せなかった。

「なにしにきたの」

問いかけには敢えて答えず、涙の跡が残る頬に触れれば、熱が出ているのか、白い肌に似合わぬ熱さがあった。

「お前が寝付けぬようだというのでな、薬を届けにきた」

自分に手傷を負わせた相手に無様な姿など見せたくないのだろう。イズナはオレが訪れる時、いつも布団の上で起きていた。
薄い夜着一枚で布団の上に起きているイズナを見かねて、オレは自分が着てきた外套をイズナの肩にかけた。

「今夜は冷える。熱が出ているのだから、温かくしろ」

だが次の瞬間、烈火のごとく「こんなものいらない!!ほっといてよ!」と外套を叩き返された。
すべてを拒絶し毛を逆立てるかのようなイズナの姿に、オレはイズナの限界がきたのだと悟った。

その後は只ひたすらイズナに詰られた。

どんな言葉がイズナの口から出ようとも、オレは肯定も否定もしなかった。ただその場で、イズナがこの三年間、一人で抱え続けたあらゆるすべてを受け止めた。

ただ一つ、イズナが最後に吐露した本心。それ以外のすべてを…。

「こんな事ならあの時死んでいればよかった!」

そうすれば僕はこんな惨めな姿を晒すことなく死ねたのに!
兄さんに代わりの目だってあげられたはずだ!
こんな…こんな、惨めで何の役にも立たない、無様な僕なんて…、誰も必要としてない!

「こんなの僕じゃない!こんな僕なんて要らない!!さっさと死んじゃえばいいんだッ」


・:*三☆・:*三☆・:*三☆

精も根も尽き果て、寝乱れた布団に突っ伏しながら、扉間の立てる衣擦れの音を聞いている。手早く身繕いを整えた男は、僕に一声もかけずに去っていくらしい。
僕に意識があることを知っているのに…だ。

つい一時間前には「今夜は冷える。温かくしろ」と言っていたくせに、乱れた夜着を辛うじて腕に引っ掛けた程度の状態の僕に、布団一枚かぶせることなく出て行こうとしている。
ひどいやつだ。

部屋から出て行く扉間の背に、鳴き疲れて嗄れた声で僕は問う。

「答え…違った?」

すると男は障子を半分ほど開けたまま動きを止め、「おまえがそう思うんなら、そうなんだろ。お前の中ではな…」と言い残し、今度こそ情事の痕跡が色濃く残る部屋から出て行った。


・:*三☆・:*三☆・:*三☆

二度目に押し倒された時、あまりに無抵抗だったため扉間に「抵抗しないのか?」と尋ねられた。

「勝者の特権なんだろ?」
「三年も経って『特権』もなにもないだろう…」

僕が扉間から傷を貰ってから確かに三年の月日が流れていた。
戦線離脱し半死人で一年を辛うじて生き延び、同盟後は千手の庇護のもと半死人を脱し、そして里で失意のままに一年を過ごした。確かに扉間が勝者の権利を振りかざす機会なら多分にあった。だがこの男は同盟大事、里大事で、僕の予想に反し、実に甲斐甲斐しく僕の世話を焼いていた。

二度目といえど男から受ける慣れない愛撫に身体を不規則にビクつかせながら、僕は最近耳にした言葉を口にした。

「『卑劣な男』は…はぁ、っ何を考えて、いるか…わからないから…っ」

その言葉に、うつ伏せた僕の背から手を回し腰を撫でながら、背骨の一つ一つを数えるように口づけを落としていた男は顔を上げ「耳敏いな…」と耳元で囁いた。
扉間にこうされて初めて知ったことだったが、僕は左側に性感帯が集まっているらしい。左耳はもちろんのこと、扉間が手を這わせている左腰の傷口から足の付け根にかけては特に敏感で一撫でされただけで身体がビクついた。それに左の内股も…。

とにかく扉間は僕の身体のあらゆる場所に手を這わせて、僕の反応を楽しんでいた。
不自由な視界に傷口抱え、体力の落ちた身体に受ける愛撫は過ぎたもので、僕は前回に引き続き開始早々息を切らせて布団にへばっている有様だ。
それでも執拗に自分の気がすむまで僕の身体を弄くり回す扉間はまさに『卑劣』としか言いようがない。

兄の不在を狙った二度目の襲撃は昼日中からで、息も絶え絶えな僕は自分の口から上がる嬌声を抑えることすらできなかった。
いや、正確には抑えようとしなかったのかもしれない。

誰かが異変に気付き部屋に駆けつけても構わないと何処かで思っていたのだ。
そして扉間もまたそう思っているのか、兄の不在を狙っている割に、僕の声を注意したりはしなかった。
むしろ緩く笑みを浮かべながら楽しんでいる風でさえあった。

そして僕もまた心のどこかで、恥も外聞もかなぐり捨て、声を上げて泣くことができるこの瞬間を望んでいたのかもしれない。


・:*三☆・:*三☆・:*三☆

前と同じように扉間は涼しげな顔をして身繕いを済ませ部屋を出て行こうとする。それに対し、僕は枕を投げつけながら不満を爆発させた。

「どういうつもりなんだよ!ココまでしといて、最後までしないって、おまえ、不能かよ!」

僕の言葉に扉間は再びあのセリフを吐きやがった。

「お前がそう思うんなら、そうなんだろ。お前の中ではな…」

閉じかけた視界では相手の顔は見えないが、その様子から薄ら笑いを浮かべていることが容易に想像できて腹立たしい!

「二度とくるな!!」
「『勝者の特権』だったか?また来る…マダラによろしくな」
「ふざけんな!!」

布団の上では投げるものが見つからず、僕は小さな子供のように四肢をばたつかせたのだった。


・:*三☆・:*三☆・:*三☆

「なぜ最後までしないのか」それは難しい問いだった。

イズナは『勝者の特権』として割り切った上で、扉間の行為を受け入れている。きっとどんな事をしようとも誰にも言いはしないだろう。

だが自分は『勝者の特権』とやらでイズナに手を出したわけではない。
要らないというから貰ったまでだ。

だがあの瞬間、確かに自分の中でカッと頭に血が上ったのも事実だ。

「オレもまだまだ若いということか…」

反省するかのように項垂れ、腕を組みひとりごちると、扉間は自分の出した答えに疑問を持つこともなく歩き出した。

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