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扉間、Happy Birthday゚+。*(*´∀`*)*。+゚
(その2)のつづきだよ!
(その2)のつづきだよ!
「ふぅ~、順調、順調」
木の葉の里が出来て早二年。前人未到の試みに、机仕事が山積みになり休みさえままならぬ修羅場が続いていた日々を経て、今ではほんの少し余裕が出てきた昼下がり。『扉間』は一週間ぶりの休みを、千手邸の縁側でごろ寝しながら過ごしていた。
「一週間ぶり」というと、まるで一般人のような優雅さではあるが、これにはチョットした裏がある。
『扉間』にとっては一週間ぶりだが、扉間にとっては一カ月ぶりなのである。
(ごめんね~、お休みまで僕が『扉間』しちゃうなんて)
うーーーん、と大きく伸びをしながら、『扉間』は今頃、執務室で自分の代わりに自分の仕事をしているであろう『イズナ』を思った。
「ホーーント、運のない男だよねぇ」
そういうと『扉間』は普段扉間が絶対に口にしないであろう「うちは煎餅」を手に取り、バリバリ食べ始めたのであった。
実に本日、八枚目のうちは煎餅である。
【デブへの道】
これはチョットした意趣返しなのだとイズナは思っている。
よりによって年に一度しかない大切な自分の誕生日を、よりによって扉間に奪われてしまったのだ。
最初は「神が僕に与えてくれた最高の誕生日プレゼントだ!」と思っていた。だが扉間と入れ替わってから一週間たつというのに、未だに『扉間』のままなのだ。
おまけに、なにか『イズナ』とトラブルがあると大好きな兄が『イズナ』の肩を持つ。
おもしろいわけがない。
最初こそ面白がっていたが、バレンタインの悪戯のあとから、急速に冷めていった。そして行き着いた先が「復讐」である。
「復讐」といっても、そんな恐ろしいものではない。チョットした悪戯のようなものだ。
「一昨日もたくさんチョコ食べたし、昨日も五食たべたし、一キロくらいは太ってるかな~」
神経質なアイツのことだ、自分の身体に一キロも贅肉が付けば絶叫することは必至だろう。
いつ元に戻るかはわからないが、その時が今から楽しみだ。
そうして『扉間』は機嫌よく、本日九枚目のうちは煎餅へと手を伸ばしたのだった。
・:*三☆・:*三☆・:*三☆
予想していたよりも早めに仕事が終わり、『イズナ』は兄であるマダラへと挨拶をすませ足早に帰路についた。
(本当だったら今日はオレが休みだったのだぞ!!)
堪忍袋の緒が切れる、とはまさにこのことだ。
憤懣やる方無い『イズナ』は朝から密かに『扉間』への報復を考えていた。それを妄想することだけが、今の『イズナ』の慰めなのである。
前門の虎後門の狼!
あぁ、なんという不幸…。
しかし『イズナ』は閃いてしまったのだ。力に頼らない復讐の方法を!
(ヤツの弱みを握ればいいだけのこと!!まってろイズナ、今に吠え面かかせてやるッ)
かくして『イズナ』のうちは邸家探しが始まったのである。
【イズナの秘密】
『イズナ』の家探しはまず当然のことながらイズナの部屋から始まった。
しかし悲しいかな、性格に似合わず整理整頓された部屋に秘密など一切見出せず、開始早々『イズナ』は腕を組み途方に暮れてしまうのだった。
基本的に物の少ないこの部屋は、押入れの中を漁っても恋文一つ出てこない。
「本当に何もない部屋だな…」
日記くらいつけているだろうと思っていたのだが、その日記すら出てこない。実際、ゴミ箱の中も覗いてみたのだが、ゴミ箱の中でさえ空っぽの状態だった。初めてイズナの部屋を訪れた九日の日にも思ったのだが、この部屋には生活感というものが欠如している。
自分が持つイズナのイメージと一致しない部屋。それは何を意味するのだろうか。
思えば、イズナの脇腹には自分がつけた大きな傷がある。この傷のせいで一時期イズナは戦線離脱したほどだ。
もっとも、扉間の腕が良かったため、鮮やかな切り口は肉を腐らせることなく絶ち、さらに運よく骨で止まった刃は内臓を傷つけることもなかったため、傷口の縫合と日々の消毒とで時間はかかったが難なくイズナは同盟調印の時期には戦線復帰を果たしていた。
(オレ以外の人間の刃だったら、今頃イズナも死んでいたかもしれんな)
自画自賛のように聞こえるかもしれないが、うちは一族の中でも刀の名手であったイズナに対抗するため、扉間もそれなりに修業は積んでいたのである。
とはいえ、イズナが自分の負わせた傷がもとで長らく寝込んでいたことは事実だ。そこまで考えて、扉間はこの部屋の殺風景の理由が分かったような気がした。
死に直面したとき、人はその価値観を変えるという。
イズナらしくない部屋は、うちは集落からの引越しにあたり不用品を処分したというだけではなく、イズナの中で何らかの変化があったからなのではないだろうか。
でなければ、あんな性格の悪いわがまま末っ子体質のイズナが、これほどまでに整理され、チリ一つ落ちていないような部屋で寝起きしているはずがない。
「他の場所を探すか…」
時刻はまだ日が傾き始めた頃。マダラは当分帰ってこないだろう。家探しするには十分すぎる時間がある。
(本来ならば蔵にある、うちは一族秘伝の書でも拝みたいところだが、まずはイズナの弱みを握らねば…っ)
いつ終わるともしれないこの生活の中にあっては、秘伝の書よりもイズナの弱点である。
扉間は次に家探しする場所を探すため、イズナの部屋を後にしたのだった。
(どうあっても、ココに辿り着いてしまうのか…っ)
うちは邸のもっとも奥にある部屋の前で、『イズナ』は腕を組み、自問自答した。
自分に残された時間はわずかである。危険を冒してまで、この部屋に入り込む意味はあるのか?もし入ったとして、生きて帰れるのだろうか…。
その部屋の持ち主は、うちはマダラ。
このうちは邸の主にして、マジキチ集団の頭であり、イズナの兄である。
粗方の部屋を探し終え、当然のごとく何も出てこなかった扉間は家探しを断念しようかと思った。しかし冷静に考えてみよう。ここは「うちは邸」なのである。マダラの住む家なのである。
いま、自分が『イズナ』だからこそ、ここまで辿り着けたのである!!
そこまで考えた時、扉間は今まで頑なに近づこうとしなかったマダラの部屋に、ある種の義務感のようなものを感じ向かっていってしまった。
(こんなチャンスは滅多にない…やるなら今だろ!!)
こうして扉間はマダラの部屋に入ったのだが、マダラの部屋は扉間の期待を裏切り、実に愛想のない質素な部屋だった。
それはある意味、扉間の知る「マダラ」そのもので、マダラの普段の様子をそのまま形にしたかのような部屋ともいえた。
扉間はマダラのことを嫌ってはいたが、同時に評価もしている。マダラは良くも悪くも、裏表がなく嘘がつけない男だったのだ。
柱間とイズナ以外には、誰に対しても平等に威圧的で攻撃的。そして愛想笑いの一つもない厳つい顔をした感情を隠せない直情型の男。そんな男の部屋に扉間の期待するような秘密などあるはずもない。
できれば政治的に抹殺してやりたいが、おそらく任務に関する不正なども一切ないだろう。
とはいえ、ここまで来たからには最後に押入れの中くらいは漁っておきたい。
人の秘密は蜜の味だ。それがマダラの秘密ともなれば、極上の甘露に違いない。
先ほどまでの迷いが嘘のように扉間は押入れを開け放ち、首を突っ込んだ。
しかしその時、障子が開かれる音がし、『イズナ』を呼ぶ声が…!
「どうした、イズナ」
「くぁwせdrftgyふじこlp!!!」
言葉にならない言葉を叫びながら『イズナ』はそのまま固まることしかできなかった。
(なぜマダラがここに!!なぜ気付けなかった!??この男、自分の家でさえ気配を消しているというのかッ)
当然のことながらイズナは感知タイプではない。そのイズナの身体を使っている『イズナ』もまた、感知タイプではなかったが、混乱した『イズナ』にそんな謎が解けるはずもなく、様子のおかしい『イズナ』にマダラは優しく声をかけるのだった。
「何か探し物か?」
『イズナ』は必死に考えた。この場を丸く収める魔法の言葉を、その卑劣とまで評される抜群の頭脳で必死に探した。
しかしそんな言葉などあるはずがない。相手はあの「うちはマダラ」なのである。
いくらマダラがブラコンでイズナに甘かったとしても、自分の部屋を家探しされれば怒るに違いない。
普段からマダラにはイズナのことで吊し上げられているが、果たして自分の弟に対してマダラはどのような叱責をするのだろうか…。
(この状況は、さすがに兄者でも怒るはずだ…万事休す!)
ギュッと両目を瞑り、身を固くしてマダラからの叱責を待つ『イズナ』。しかし待てど暮らせどマダラから怒声は飛んでこず、チャクラも荒ぶる様子がない。それどころか…
「探し物か?どれ、俺も手伝ってやる」
「は?」
「でもその前にちょっと待ってろよ、これ仕舞っちまうから」
とマダラが懐から何かを取り出し、押入れの中にある小さめの葛籠に仕舞いこもうとするではないか。
「その箱…、オレがやったバレンタインの…」
そう、マダラが仕舞おうとしているのは、忘れもしない14日、イズナに騙され仕方なくイズナ宛のチョコをマダラに横流しした、あの時のチョコの箱だった。
「せっかくお前から貰ったしな。今日、食い終わったから職場から持って帰ってきたんだ」
そういうとマダラは葛籠の蓋を開け、その中へ大事そうに『イズナ』が渡したチョコの箱を入れてしまう。葛籠の中を覗いてみれば、古いものから新しいものまで、多種多様なものが押し込められているではないか。
その中の一つに『イズナ』は目を止め言葉を失った。
「これは…」
「覚えてないか?これ全部、おまえが俺にくれたものだぞ。ほら、この手紙とか」
そういうとマダラは葛籠の下の方から、古ぼけた一枚の紙を取り出して見せた。
「おまえが手習いを初めてすぐのころに、俺に手紙を書いてくれたんだ」
古ぼけた紙にはミミズののたくったような文字で「兄さん大好き」と書かれている。他にもマダラは古い玩具や、手拭い、使い古した皮の手袋など、いろいろなものを取り出しては懐かしそうに目を細め、一人、思い出話に花を咲かせている。
(本当にキチガイだな…こんなものを取って置くなんて。キチガイとしか言いようがない…)
マダラの話に耳を傾けながら、『イズナ』は鼻水を啜り俯いた。
こんなキチガイ染みた真似をする人間を、『イズナ』はもう一人だけ知っていた。
瓦間や板間の持ち物を、扉間は捨てることができず、今でも葛籠に入れて押入れにしまいこんでいるのだ。
その夜『イズナ』は珍しく風呂場で兄の背を洗ってやったのだった。
・:*三☆・:*三☆・:*三☆
『イズナ』が兄の背中を、瞳を潤ませながら洗ってやっている丁度その頃、千手邸では『扉間』が自室で物探しをしていた。
「なんぞ~、こんな時間に。なにか探し物ぞ?」
「うん、そう。日記をね…探してるんだ。絶対つけてるはずなんだけどな~。どこにあるんだろう」
「日記なら、いつもの場所にしまってあるだろう。ないのぞ?」
柱間の言葉に一瞬にして目の色を変えた『扉間』は柱間に詰め寄った。
「いつもの場所ってどこ!!研究室も探したんだけど、なかったんだよね。どこ!?」
「どこって…それは、お主、昔から人に見られたくないものの類は、枕の中に仕舞いこんでおったであろう?そこではないのか?」
懐かしいのぉ…。昔は板間に日記を覗き見られては立腹し。瓦間に隠してあった菓子を取られては大喧嘩をし。
そのうち、どこに物を隠すようになったのか、喧嘩がなくなったと思ったら、人目を忍んで枕の中に隠すようになってな~。
腕を組み、一人、昔を懐かしがる柱間に礼を言い、『扉間』は押入れを勢いよく開け放ったのだった。
「みぃーつけたぁーーーー」
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