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扉間は私の中で永遠の初恋に殉じた人ということになっている!
普段どれだけ「卑劣、卑劣」連呼していてもな!

そいえば扉間の誕生日を祝う人はいても、卑劣様の誕生日まで手広く祝っている人はあんまりいませんでした。
裏切り者どもめ!!!

部屋に入ると同時にイズナが擦り寄ってきた。今日はいつも以上に積極的だ。遊郭の遊女でさえ、こうもがっつきはしまい。
イズナの目的が口淫にあることをその体勢から察したオレは、直様イズナを引き離した。

短期集中決戦に打って出たらしいイズナに、思わず在りし日の戦場での姿を思い出す。扉間より体力面で劣るイズナは、時たま、力に任せて戦局をひっくり返そうとする癖があったのだ。
大抵そういった場合、うちは側になんらかの事情があり、イズナは柱間との戦いで手が離せないマダラに代わり陣の指揮をとっていたりした。

思えば、そう、イズナは気の長い方ではなかったのだ。

「落ち着け!今日は話をしに来ただけだ。お前とどうこうするつもりはない!」

いつもと違うオレの様子に、イズナは不満げに眉を寄せ「じゃあ何のために来たのさ」と悪態を吐く。まるでオレにそれ以外の目的などあるはずがないといわんばかりに。

そんなイズナの様子に溜息をつきつつ、オレは懐からマダラに渡したものと同じ点眼薬をイズナの手に握らせた。

「マダラには効果があった。お前にも効果が期待できるはずだ。一日三回、必ず…」
「要らない!こんなものっ」
「おい!!投げ捨てるやつがあるかッ」

迷わず部屋の隅に点眼薬を放り投げ、イズナはオレの腰に抱き着いてきた。これでは身動きが取れない。オレは投げ捨てられた点眼薬を目で追いながら、再びイズナを引き剥がす羽目になった。

「何を考えているんだ!アレさえあれば目が見えるようになるんだぞ!オレがどれだけ苦心して…」
「そんなもの要らない!目なんて見えるようなったって意味ないよ!僕はもう戦えないんだからッ」

イズナの叫ぶような言葉に、オレは自分自身の甘さを痛感した。
何がイズナを苦しめているのか、それは戦えない自分自身であって、仮に失明したとしても身体が動く限り戦場に立ち続ける…それこそがイズナの望む理想だったのだ。
だがそれは無理な話だ。
既にイズナが望む戦場などどこにもなく、また三年の月日は無情にもイズナから体力とともに忍のカンをも奪っていた。

もうイズナに立てる戦場などどこにもなかったのだ。

扉間の腰に縋り付きながらイズナは泣いていた。泣きながらイズナは繰り返す。「抱けよ、とびらま…っ」と。

「抱けよ!!抱けってば!」

駄々をこねる子供のように懇願するイズナに、扉間はしかしそれだけは出来なかった。
どうしたらイズナを引き留められるのか、扉間は考えた。

考えて、考えて…。でも結局ありきたりな言葉しか出てこなかった。

「マダラが悲しむ…。たった一人の弟が自殺なんてしたら、マダラが…悲しむ…」
「なんでこんな時にそんなこと言うんだよ!馬鹿!意気地なしっ」

やがて扉間から離れ、畳の上に蹲り本格的に声を上げて泣き出したイズナの背を、扉間はいつまでもいつまでも撫で続けた。

こんな時にさえ、うちはの者は気を利かせてやって来る気配はない。
よくよく考えてみれば、昼夜を問わずイズナの部屋から上がる嬌声に誰も気付かぬはずがないのだ。
扉間はイズナの部屋に通される時、いつだって茶の一杯も出された試しがなかったのだ。

変なところで気の利く連中だ…と扉間は思った。そしてそれが、今回ばかりは素直に有難いと思えた。

泣き疲れたイズナを布団に寝かせ、部屋の隅から点眼薬を回収し、枕元に置いておいた。
あとは放っておいても、お節介でブラコンで傲慢で陰気でいけ好かない、あの男が面倒を見るだろう。イズナの目はもう次期見えるようになり、オレの役目も終わる。

もう二度と来ることはないであろう部屋の香りを胸一杯に吸い込み、扉間は眠るイズナに向けて囁いた。

「お前のことが好きだった…」と。


・:*三☆・:*三☆・:*三☆

あれから一ヶ月が経ち、イズナは日常生活に支障をきたさない程度にまで視力が回復した。
マダラについては言わずもがな、というやつだ。

何も知らないマダラは弟の目が見えるようになり素直に喜んでいた。アイツなりに思うところもあるらしく、オレへの風当たりも幾分か和らいだように思える。
兄者はオレとマダラの距離が縮まったこと、マダラやイズナの視力が回復したことを涙を流して喜んでいた。
相変わらず大袈裟な兄者だ。

一方、イズナは…といえば、視力が回復したことに伴い、不自由な身体をおして族長補佐の仕事に復帰したらしい。オレの予想通り、忍として復帰することは難しいと判断したマダラが、内輪の仕事をイズナに回すようになったのだ。

これによりイズナは完全にうちは一族の内勤となり、表舞台に顔を出すことはなくなった。その名を聞くことすら、いつしか稀になり、やがてオレたちの関係を知るうちはの者も減っていった。

そうして時が流れ、オレ自身ですらイズナへの想いを忘れかけた頃に、ふと、部下を従え一族の用事を済ませに外に出てきたイズナを遠目に見かけるたび、オレは胸を鷲掴みされるような苦しい想いに苛まれるのだった。

何年たっても…
何度経験しても…

生涯それだけは慣れることがなかった。

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