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ハッピーバースデー卑劣様゚+。*(*´∀`*)*。+゚

全然祝えてないけど、その3-2のつづき





この世に神がいるというのなら、今年の誕生日、神はいったいオレに何をくれたというのだろうか…。
イズナの身体になってから九日目の夜。オレは天井を見上げながらそんなことを必死になって考えていた。

誕生日まであと50時間。

(オレはいま、試されているのだろうか…)

健全な成年男子の生理的機能として最低でも週に一度は溜まった欲を吐き出す必要がある。
まどろっこしいのは嫌いだから、ハッキリ言おう。

オレはいまイズナの身体でもよおしている。

何をかは訊くな!手洗いでない事だけは確かだ!

思えばイズナの身体になってから一度もそのようなことをした試しがなかった。それでも不自由なく過ごせていたのは、ひとえに「うちはの陣中にいる」という緊張感からだろう。だがその緊張感が、マダラを身近に感じ始めたことで無くなりつつあるのだ。
そして今日、一週間以上溜まりにたまったモノが出口を求め、真夜中にオレを苦しめている。

(もしかしたら今頃イズナのやつも、オレの身体で…)

そう考えると居た堪れない。しかしその一方でイズナがどのように自分の身体に触れたのか興味が湧いてくる。
なににせよ、このままでは眠ることができない。

覚悟を決め、オレは寝巻の裾を割り、褌越しにイズナ自身へと手を伸ばした。

思えばイズナと入れ替わって直ぐの頃は、厠へ行くのも風呂へ入るのも酷く緊張したものだ。あの時、身体が反応してもよおしていなかったことが不思議なほどに、オレの心臓はいつになく高鳴っていた。

「うッ…」

回想に身を委ねながら手早く事を済ましたのは、罪悪感というよりは照れからだ。オレは未だにイズナの身体をしげしげと観察したことがないのだ。とはいえ、自分と同じ「男」の身体なのだからして、観察すべき場所など特にはないのだが、イズナの身体だと思えば落ち着かなくなってくる。

褌を汚してしまったこともあり、一度、着替えねばならなくなったオレは布団から起き出した。しかし寝巻の帯に手を掛けた瞬間、サァーーーと血の気が引いて行った。
汚れた褌の処理方法を失念していたのだ。
このまま洗い場の籠へ入れておけば、通いの者が洗濯することは目に見えている。正直、それは居た堪れないし、イズナもいい顔をしないのではないだろうか。
それに洗い場の籠に入れておいた場合、最悪、マダラに気付かれる可能性もある。

(今から自分で洗うしかないか…)

楽しい時間は一瞬で終わり、残ったのは真夜中に気配を殺しながら、一人、必死で汚れた褌を洗うオレの姿だけだった。


・:*三☆・:*三☆・:*三☆

初めてイズナの身体で致してしまってから、どうにもイズナを直視しにくくなった。そしてそんなオレの挙動不審が伝わるのか、イズナのやつもどことなくオレに対して軽蔑に限りなく近い視線を送ってくる。
誕生日を翌日に控え、オレは何とも言えない気持ちを抱えながら一日を過ごすこととなった。


そして迎えた2月19日。
去年と同じならば、オレの誕生日もまた、うちは邸で行われたイズナの祝宴と同じように、千手邸の大広間で一族上げての宴会になるはずだ。

しかしその宴席にオレはいない。

当たり前だ。うちはが千手の祝宴に顔を出すなど、聞いたことがない。つまり今、オレの目の前で朝からいろいろな人間に祝福されている『扉間』だけが、その宴席に出席するのだ。

「あのさぁ…朝からそんな恨みがましい目で、僕のこと見ないでくれる?そもそも、僕の誕生日は、君がみんなに祝ってもらってたでしょ、僕の代わりに!!」
「それはそうだが…。やはり納得がいかん」

オレの誕生日なのに、オレの姿をしたイズナが扉間として皆に祝われているのだ。思えばイズナもこんな気持ちだったのかもしれない。自分を蚊帳の外に、自分を祝う人々を、オレは物悲しくどこか遠くから眺めていた。

『扉間』は今日の仕事を夕方には切り上げて帰宅する。
祝宴を取り仕切っている兄者はそれよりも早く仕事を切り上げ帰宅するはずだ。

みんなオレを置き去りにいなくなるのだ…。

そんなことを考えながら、オレは一人、仕事を片付けるため無心で筆を走らせた。
やがて火影室から「すまんの、マダラ~」という兄者の声が聞こえ、「さっさと行け、馬鹿」というマダラの声が聞こえ、その二時間後には、同室で仕事をしていた『扉間』が、

「じゃ、僕もう行くから。あんまり気を落とすなよ。心配しなくても、お前の誕生日にまで変なことしないよ。僕だってそこまで鬼じゃないんだから…」

と、慰めの言葉とともに去っていった。

オレは一体何をしているのだろう。
自分の身体をイズナに盗られ、一カ月ぶりの休暇も『扉間』に奪われ、そしてとうとう誕生日までをも『扉間』はオレから奪っていった。

(もしかして、一生このまま元に戻らないのではないのか?)

もしそうなら、オレは兄者や仲間までをも『扉間』に奪われることになる。代わりにオレの手元に残るのは…?

脳裏に、『イズナ』になって初めて目にしたマダラの笑った顔が蘇る。

(オレはマダラの弟にはなれぬ…)

はぁ…と溜息をつき筆をおいたとき、部屋の扉がノックと共に開かれた。そして現れたのは、数瞬前まで脳裏にあったあの笑顔。

「イズナ、仕事終わりそうか?」
「…あぁ」
「元気ねぇな…。量が多いなら俺も手伝ってやるぞ?」

そういって部屋に入ってきたマダラの言葉から、どうやら『イズナ』に早めに仕事を終えてもらいたいのだろうとオレは察し、「この後なにかあるのか?」と訊ねてみた。
本当はどうでもよかったが、ここで訊ねるのが正しいイズナの在り方だと思ったのだ。

生真面目で不器用な自分が呪わしい。
こうしてオレはいつ終わるとも知れない『イズナ』の生活を、マダラやイズナに怯えながら続けていくのだろうか…。

ふつふつとネガティブな思いが湧き上がってくる。だが、これも里に混乱を招かぬためと思えば、我慢できないこともない。しかしそんなオレの苦しい胸の内を吹き飛ばすような言葉がマダラから出てきたのであった。貴様が神か!!

「お前は嫌がるかもしれないが、帰りにチョットだけでいいから、千手の家に顔出してかねーか?」
「いく!!もちろん行く!!今すぐ行こう、兄さんッ」

マダラの腕を掴み、部屋を出ていこうとするオレに、マダラは苦笑いしながら「おいおい、殴り込みじゃねーんだぞ。ったく」とオレの頭を撫でたのだった。

まさかマダラにこんなことをされる日がくるとは…!


・:*三☆・:*三☆・:*三☆

千手邸の大広間に突如現れた「うちは」に、酒に酔った千手の面々が驚きに固まったのは言うまでもない。
見慣れた顔ぶれの揃う広間だったが、オレたちに向けられる視線はオレの知らないものだった。きっとオレもこんな目で「うちは」を見ていたのだろう。

そこにあるのは「警戒」「恐怖」「不信感」といったネガティブなものばかりだった。

だがその中にあって一人だけ、心からオレたちの登場を喜ぶ人物がいた。兄者だ。きっとマダラと兄者は、今日この日に祝宴に顔を出すことを事前に約束していたのだろう。
いや、あるいは、マダラから言い出したのかもしれない。あれで礼儀だけは通す男だからな。

「よく来てくれたマダラ!待っておったのぞ」
「あぁ…邪魔するぜ」

そういってマダラは兄者に、持ってきた酒瓶を突き出した。それはうちは秘伝の酒で、いわゆる門外不出の酒というやつだった。兄者は当然のようにそれを受け取ると、マダラの背中を押して自分の席へと連れていってしまう。

(おい!オレへの挨拶はなしかッ)

咄嗟に声を上げそうになったが、寸でのところで押し留める。今のオレは『イズナ』なのだ。兄者の行いを注意できる立場ではない。だが、そうなると、一体だれが今日の主役である扉間に祝辞を述べ、祝いの品を送るのか…。

(オレか!!)

兄者にしてみれば、普段から犬猿の仲のオレとマダラを早々に引き離すことで、「うちはが宴席に顔を出した」という平和な事実だけを作りたいのだろう。いや、あの兄者がそこまで考えていたとは到底思えぬが、今回に限っては最良の判断といえよう!
なぜなら、今回の主役は『扉間』なのである。
マダラの登場に、明らかに瞳を輝かせ喜びを顕わにしている『扉間』は異様としか言いようがない。

(早々になんとかせねば!!あのブラコンめっ)

マダラの荷物持ちも兼ね、千手邸を訪れたオレの手には扉間宛の祝いの品がある。うちはの家紋が染め抜かれた紅色の風呂敷に包まれたそれの中身をオレは知らないが、マダラのことだ、そう悪いものは入っていまい。むしろ実用的で良い物のような気さえする。

少なくとも、兄者が渡してくる春画よりは確実に良い物だろう。

オレは覚悟を決めると『扉間』を中心に酒を酌み交わしている集団へと足を向けた。
今更居住まいを正し、どこかで聞いたことのあるお決まりの祝辞を述べる気にもなれず(そもそもコレはオレの誕生日を祝っているのだ!!)オレは『扉間』目の前にいくと、無言で風呂敷包みを突き出した。

『扉間』を取り囲む千手からの視線が痛い。

仲間であった時との落差に、オレは悲しさを通り越して呆れさえ感じてしまう。
そんなオレの白けた空気を感じ取ったのか、『扉間』は立ち上がり、オレと視線を合わせて(それはオレの身体だ!!)「悪いな。うちはからの祝いの品、有難く頂戴しよう」と手を伸ばし…

そして固まった。
もちろん、オレも固まった。

何が起きたのか理解できなかったのだ。

(目の前にオレがいる…?)

オレは『イズナ』であり、イズナは『扉間』である。つまり、オレの目の前には『扉間』がいるわけで、イズナの目の前には『イズナ』がいるはずだ。
なのに、いま、オレの目の前にはイズナがいた。

咄嗟に自分の顔に手を当て、その形状を確認する。

「おい…まさか、これは…」
「もどってる?」

しかし俄かには信じがたい。なぜなら、オレの目の前にいるのはイズナなのだ。もしかしたらオレをぬか喜びさせて嘲笑うために、『扉間』からイズナに変化した可能性だってある!!

「オレを担いでいるわけではないだろうな」
「それは僕のセリフだよ。今までの仕返しに、僕をぬか喜びさせようってこと?」

互いに互いを探り合うように見つめ合う。しかし特に変わったところは見つからず、とうとう互いに手が手始めた。

「変化…ってわけじゃなさそうだけど」とイズナがオレの髪を触る。
「幻術の類というわけでもないな」とオレがイズナの頬を撫でる。

そしてオレたちは確信に至った。

「「戻った!!!」」

その時の喜びと感動を、なんと表現したらいいのだろうか。

あぁ、神よ!!ありがとうございますッ
あなたはオレを見捨てたりしなかった!!

互いに手を取り合い、オレたちは喜びを分かち合った。この苦難の日々を、この喜びを、共有できるのはこの場にただ一人だけ!

「イズナ!!」
「扉間ぁ!!」
「よかった、本当に良かった!!」
「僕も、僕もそう思う!!良かった、本当に良かったッ」

オレたちは祝いの品を放り出し、互いに抱き締めあった。そして互いを讃えあった。

「大変だったでしょ?いろいろ我儘いってごめんね!でも、僕、扉間のこと信じてたからっ」
「馬鹿…もうそんなこと気にするな。すべて終わったことだ」

ひとしきり抱き締めあい感情の昂ぶりも納まったところで、オレたちは抱擁を解いた。
するとそれを見計らったかのように兄者から声が上がった。

「扉間、俺はお前がそれでいいのなら、何も言わんのぞ!きっとマダラも同じ気持ちぞ…な?」

兄者に話を振られ、マダラは複雑そうな顔したまま「イズナがそれでいいのなら、俺も何もいったりしねぇ…」といった。

里ってのは、いろんな一族が一つのところに集まって暮らすもんだ。いつかは誰かが一族の枠を超えるだろうと思っていた。そう続けるマダラの言葉は、どこか悲しそうだった。

やがてどこからともなく拍手が巻き起こり、オレとイズナはその場にいたすべての酔っ払いどもに心から祝福された。

「おめでとう!」
「おめでとうございますっ」
「千手万歳!」

なにかマズイ展開のような気がするのだが…これは、一体。

その夜は、誰もが信じられないくらい酒を飲み、祝宴は朝まで続いたのだった。




翌朝、12日振りに戻った自室は、綺麗に整理整頓されており、酒に酔い千鳥足のオレを優しく迎え入れてくれた。
ここで長らくイズナが『扉間』として生活していたのだと思うと、まるで自分の部屋でないような気恥しさを感じてしまう。

イズナも今頃、オレと同じような気持ちで部屋に帰っているのだろうか…。

オレは夢見心地で『扉間』の香りのする自分の布団に倒れ込み、心地よい眠りについた。
数時間後に待っている二日酔いのことなど想像もしていなかったし、オレとイズナの関係が歪んだ形で人々に伝えられていることなど、当然、知る由もなかった。

ただ、起きて直ぐ気が付いたことは、枕の中身がなくなっていたことと、身体がいつもより重たいことだけだ。

いったい、この数日の間に、オレの身に何が起きたんだ??

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