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禁術開発のために徹夜する扉間もいいけど、徹夜しない扉間もいいと思う!
ちゃんと時間の管理ができている扉間である。
ちゃんと時間の管理ができている扉間である。
連日の禁術開発にともなう徹夜で、日中、全力で居眠りする扉間…とか想像してたんだけどな〜。期待が外れちゃったよ。
などと失礼なことをのたまうイズナに、本日分の事務仕事を手渡せば、ヤツの口にはしっかり涎の跡が残っていた。
ふぅ…と一つ溜息をつき、ヤツの落ち度を見逃し、「オレは徹夜などせん。効率を考えて行動しているからな」と、澄まし顔でイズナの勝手な妄想を否定しておくのだが、実際のところ、今日で徹夜二日目だったりする。だがイズナと違い、オレは幸か不幸か布団以外では眠れない質なのだ。
オレの返答に納得がいかないらしいイズナは、書類に目を通しながら再度口を開く。
「扉間ってさ、同じ24時間を生きてるとは到底思えないアクティブさだよね…。仕事に女に柱間の世話、加えて趣味の禁術開発」
指折り数えあげるイズナに思うところがあり、先ほど見逃してやった事柄を持ち出してしまったが、すべてイズナが悪い。よりによって女のことなど持ち出すからだ。オレはどういうわけだか自分でもわからないが、イズナの口からだけは、その話題に触れられたくないのだ…。
「そりゃあ、居眠り大王のお前に比べればな」
「ははは…何いってんの〜、寝てませんよ〜。ね・て・ま・せ・んっ」
「口の端にヨダレがついたままだぞ」
「え、うそ!?」
慌てて口元を擦るが、後の祭りだ。
オレは最初からイズナの居眠りなど見抜いていたのだから。
しかし末っ子とは、こうも可愛らしいものだったか?
板間はもう少し男らしい面があったような気がするが、イズナを見ているとどうにも小動物的な可愛さが目立って仕方がない。
いや、少し違うな…。
なんというか、何をしていても無条件で可愛いのだ。
その場凌ぎの取り繕った真面目な顔も、涎の跡の残る口元も、机に突っ伏して寝ていたために赤くなっている額も…。
そこまで考えてハタと気づいた。
天を仰ぎ額に手を当て「あーーーー」と間抜けな声を出す。
「どうやらオレも少し休んだ方がいいようだ…お前のことを可愛く思える日が来るなんて、どう考えても異常だ」
「どういう意味だよ!」
騒ぎ立てるイズナを残し、オレは仮眠室へと歩き出す。
自分の胸に去来する甘酸っぱいようなこの思いはなんなのか。逆流性胃炎なのか、それとも睡眠不足からくる体調不良か?
(兄者の言う通り、しばらく徹夜は控えたほうがよさそうだ…)
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