忍者ブログ
<< 2024 / 09 >>
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30
[ 3348 ] [ 3345 ] [ 3342 ] [ 3344 ] [ 3341 ] [ 3340 ] [ 3328 ] [ 3338 ] [ 3336 ] [ 3337 ] [ 3334 ]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

仏間さんとタジマさんがくっ付いて兄弟になった扉間とショタイズナの雨の日のお話。

「あっめ、あっめ、降れ降れ、母さんが〜」

赤いポンチョ型の雨合羽をきたイズナがオレの左手を握りながらご機嫌で雨の中をズンズン歩いて行く。
小さな足には可愛らしい長靴をはき、水溜りをものともせずバッシャバッシャと豪快に水飛沫を上げて歩くものだから、隣で傘をさしながらイズナに付き合うオレのズボンは左側だけがずぶ濡れだ。
しかしオレは文句一つ言わずイズナに黙って付き合う。歩調を幼いイズナに合わせ、のんびり雨の中、傘をさして歩いていく。

やがて目的の場所が近くなった頃、イズナはふと顔を上げ、前方を指差し喜びを露わにした。

「あ!父様っ」

そして幼い手で握り締めていたオレの手を離し走り出す。
その様子を、雨の中、同じく傘をさし二人を待っていたタジマが微笑みながら見つめている。
オレはその様子を「好ましい…」と思った。
そして父である仏間が彼を選んだ理由に改めて得心がいった。

タジマ殿に抱きつきながらイズナは全力ではしゃいでいる。よほど父に会ったのが嬉しいらしい。その様子をオレも目を細めて見ていたのだが、タジマ殿は、

「こら…イズナ、少し大人しくさない。そんなに騒がしく足を動かしていたら、水飛沫が上がってしまいますよ…?」

とイズナを優しくたしなめ、次いでオレへと視線を向け申し訳なさそうに言葉を続ける。

「ご覧なさい、貴方があまりにはしゃぐものだから扉間くんのズボンが、水飛沫で濡れています」

タジマ殿の言葉にイズナは「あ!」というような顔をした。

「すみませんでした」

イズナの肩へと手を置き、タジマ殿がオレに謝罪する。そして父に促され、イズナもオレに「ごめんね、扉間」と小首を傾げながら謝ってくる。
それに対し、オレは「気にすることはない」と首を振って見せたのだが、どうやらタジマ殿は、余程、律儀な質らしい。
オレの言葉を受け、タジマ殿はイズナの頭を撫でながら「怒られなくて良かったですね。扉間くんにちゃんとお礼をいいなさい」と言い聞かせたのだった。

まだ幼いイズナは、素直にオレに礼を言う。
あざといまでの可愛さを振りまきながら、「ありがと、扉間っ」と…。

その仕草に、その言葉に、オレの胸は、どうしようもないほどにざわついた。

そんなオレをどう思っているのか、タジマ殿はオレに笑みながら「貴方も随分とイズナには甘いようですね」と小声でオレにだけ聞こえるように話しかけるのだった。

返答に困るオレを置き去りにし、二人は家へと歩いていく。
可愛いオレの弟は、今年でまだ五つになったばかりだ。

PR
[ 3348 ] [ 3345 ] [ 3342 ] [ 3344 ] [ 3341 ] [ 3340 ] [ 3328 ] [ 3338 ] [ 3336 ] [ 3337 ] [ 3334 ]
リンク
Template by kura07, Photo by Abundant Shine
忍者ブログ [PR]