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何度も生まれ変わり巡り会う柱マダ。中世ヨーロッパに生を受けた頃の二人のお話。






俺の転生人生の中で最も苦い記憶。
長く続く人生の中で、唯一思い出したくもない記憶。

マダラと俺に起きたイレギュラーな出来事。

聞きたいか?何が起きたのか…


・:*三☆・:*三☆・:*三☆

その時、俺は人生で初めて「千手柱間」の生まれた大陸を離れ、海を隔てた遠い異国の地で生を受けていた。
丁度時代は今でいうところの「中世」あたりだろうか。
俺の生まれた大陸では「大名」が国を支配していたが、異国の地では「皇帝」が国を支配していた。

表向きは…。

というのも、俺の生まれた異国の地では宗教がかなり幅を利かせており「教皇」という名の宗教指導者が政治にも戦争にも強い発言力を持っていたのだ。そして俺が生まれる十数年前、新しい皇帝を選出する際に皇族出身者と教皇親族の間で争いになり、以来、国は「皇族派」と「教皇派」に分かれ国内おいて熾烈な争いが繰り広げている。
そしてこの争いは国内だけに留まらず、姻戚関係にある周辺国へも影響を及ぼすに至っているのだが…まぁ、それはこの際どうでもいい些末なことだ。
俺の人生にとって大切なことはただ一つ。マダラに巡り会う、それだけなのだから。

俺は家庭教師の話を右から左に受け流しながら、そっと窓の外を見た。

「よろしいですか、ハシラマ様。皇帝派筆頭の家柄に生まれたからには、例え次男といえども重責を担うことになるのです。いつまでも子供のように天真爛漫というわけにはいきません!」

今年で15になる俺は成人を迎える。この辺りはどこの国でも変わらないようで、「柱間」だったころも15で成人を迎えていたのだった。そして俺の生まれた家は、運がいいのか悪いのか教皇派筆頭の家なのだった。
食うものにも寝る場所にも困らない。贅沢三昧の日々だ。忍だった頃からは想像もつかないが、しかしよく考えてみれば忍だったころも「千手」という強大な忍一族の嫡男に生まれ、戦場に出向き命のやり取りをすること以外では何不自由なく暮らしていたのだと思い至る。

(運がいいのだろうな…)

では一体、マダラはどこで何をしているのだろうか?
生まれる場所はばらばらで統一性などありはしないが、不思議と俺たちはいつも同じ年齢で、同じ性別に生まれついていた。いつ巡り合えるかは分からないが、必ずいつか巡り会う。そういう人生を、もう何度も繰り返していた。

(マダラ…マダラはどこにおるんぞ…)

俺の口から洩れた溜息を、家庭教師はどう捉えたのだろうか。小言を切り上げ、神妙な面持ちになると「教皇派筆頭の家には、いま、男子がいません。この好機を逃す手はないのですよ。くれぐれも、家名に傷をつけるような行いは慎んでください」と、いつもの言葉で締めくくったのだった。

しかしそう締めくくられたところで、俺の行動が改善されるはずもない。俺という人間は元来能天気で人を疑うということをせず、誰彼かまわず話しかけ友を作り、どこへでも一人で出かけてしまう…そういう人間なのだった。

要するに、身分に相応しくない行動をよく取ってしまうのだ。

そしてその日も、俺は自分の好奇心といつになっても失うことのない純粋さでもって、屋敷を抜け出し教皇派筆頭の某家の一人娘の15歳の誕生日を祝う舞踏会へと赴くのだった。
まさかそこで変わり果てた姿のマダラと出会うとも思わず…。


・:*三☆・:*三☆・:*三☆

この国には俺の生まれた場所とは違い、人はいくつかの名前を持って生きている。
家の名前、宗教的名前、生まれた時の名前、身分に応じて付加された名前。

俺は家では「ハシラマ」と呼ばれているが、外では別の名前で呼ばれていた。それは小難しい呪文のような名前だ。
そしてマダラもまた、俺と同じように幾つかの名前を持ち、普段は「マダラ」とは呼ばれていないことを俺は教皇派筆頭の某家の舞踏会で知ることとなった。

マダラは女に生まれており、キャピュレットという舌を噛みそうな名前をもち、大きな屋敷で何人ものメイドにかしずかれ、豪奢なドレスに身を包みビクトール人形のように蒼白な顔をして無表情に日々を送っていたらしい。

そりゃあそうなるだろう。

舞踏会の壁際に設置された椅子に座り、誰と話すことも、誰をダンスに誘うこともなく、俺はただただ見慣れない姿になったマダラを遠目に見つめていた。
名前も顔もマダラそのものなのだが、コルセットによって寄せて上げて無理やり作られた胸元だけが俺の知るマダラから逸脱し、何とも言えない気分にさせる。

まさか女に生まれていたとは夢にも思わなかった。

15になったばかりの俺は、まだ舞踏会では顔は知られておらず、「キャピュレット嬢の母方の遠縁の貴族の息子」として会場に入り込んでいた。実際のところ、この会場に俺の顔を知る者は一人としていない。なぜなら、ここは政敵の本拠地で、ここにいる人間は皆例外なく「教皇派」なのだ。「皇帝派」の次男の顔など誰も知りはしない。

逆に知れ渡っているのは兄の顔の方だ。

兄はどことなく扉間に似た容姿をしていて、時折、俺を切なくさせる。
母譲りの銀髪の髪に、恵まれた体躯。怜悧な眼差しに理路整然としたクリアな思考。兄は「初代火影」であり「忍の神」とまで呼ばれたこの俺からみても、次世代を担うに相応しい人物だった。そして何より、正装に身を包んだ兄はその容姿と相まって人目を引いた。
青が良く似あう兄。そんなところも含めて、兄は扉間を思い出させる存在だった。

そんな兄から「どうしたハシラマ。元気がないな」などと気遣われると、今度は瓦間や板間のことを思い出してしまう。もう何度も転生して、いくつもの家族を持ったというのに、いつだって思い出すのは「あの頃」なのだ。
扉間は俺の弟だったが、瓦間や板間にとっては「兄」だった。そして今、俺は人生で初めて「弟」となり、扉間のような兄を持っている。

兄のことが大好きだ。

きっと瓦間や板間も同じ気持ちだったのだろう。そして扉間も同じ気持ちで、兄である俺のことが大好きだったのだ。弟になった今なら分かる。

だから兄に迷惑をかけたくはない。だから帰ろう。マダラがどこで何をしているのかは分かった。だから帰ろう。

マダラが俺に気付いたかどうか、それすら確認することなく俺は給仕が渡してきたシャンパンを飲み干し席を立ったのだった。


・:*三☆・:*三☆・:*三☆

その翌日のことだ。
夜、何かか窓を叩く音がする。

俺の部屋は次男らしく、嫡男である兄や家長である父の部屋からは離れた場所に用意されている。とはいえ、四階建ての洋館の最上階に部屋はあり、なぜ四階の窓を叩くような音がするのか理解に苦しむ。

(幽霊かのぉ…。皇帝と姻戚関係にある貴族とはいえ、ご先祖様は相当あくどいやり方で政敵を葬ってきたらしいからの。くわばらくわばら…)

ブランケットを頭からかぶり、俺はベットの中でこの国の神ではない別の地に存在する神の名を呟いた。

「神様、仏様、六道仙人様…」

するとその言葉に盛大に突っ込みを入れる者がいた。

「おい、ここにそいつらはいねーぞ!管轄違いだ!」

窓の外から聞こえてきた声は聞きなれない女の声だった。




簡素な黒いドレスに黒い外套。そして高く結い上げられた黒い髪。手には黒のロンググローブ。マダラは「魔女」のような格好で俺の部屋の窓に貼り着いていた。

「うら若い乙女がすることではないぞ!!」
「生憎、俺は未だもって『うちはマダラ』だ」

窓に貼り着くマダラを部屋へと引き上げ、説教をしたところで相変わらずの答えが返ってきた。どうやら本当にマダラは「マダラ」のままらしい。
そしてこれもまたいつもの事なのだが、

「よぉ…」
「久しぶりだな、マダラ」

と恒例となった挨拶を交わした。

「マダラがここにいるということは、俺の存在に気付いてたってことだな」
「母方の遠縁の貴族を必死に探させていただいたぜ、この野郎!」

ロングドレスを引きずりながら歩くマダラの姿は堂に入っていて、マダラが本当にこの15年の歳月を「女」として生きてきたのだと思わされる。
そのままマダラは部屋の中央に置かれたソファへと腰を下ろし、紅茶を要求してきた。

「喉が渇いた。くそっ…こんなに動いたのは久しぶりだ」

その言葉に俺は思わず笑ってしまう。これはとんだじゃじゃ馬ではないか。教皇に連なる大貴族のご令嬢が、真夜中に一人で宿敵の邸にやってきたのだ。それだけではない、

「なぁ、マダラ。一体どうやって四階まで壁を登ってきたんだ?」
「はぁ?そんなモン、テメーの部屋の横の雨どいを使って登ってきたに決まってんだろ。さすがにチャクラなんて使えねーからな」
「そうか…くっ クク…フッ…ハハハ、成程。うん、なる…ブフォ!!!」

「おい!笑うな!!俺は真剣だったんだぞッ」

あの時、声をかけようにも女の自分から声をかけることもできず、そのうち舞踏会の主役である自分の元に挨拶にくるだろうと思って待っていれば途中でいなくなってしまう。追いかけようにもドレスの下に着込んだコルセットが苦しくて貧血を起こし、あの後大変だったんだ。

メイドを呼び出し作らせ、持ってこさせた紅茶をマダラに差し出す間にも、マダラは憤懣やるかたないといった様子で言葉を続ける。やがて話の内容は女になった自分自身のこととなり、最後にはこう締めくくられた。

「お前も女になってると思ってたのに…。なんでだよ、チクショウ」
「すまぬ。俺は今回も男ぞ!」

ニカッと笑ってやれば、嫌そうな顔をしてマダラはそっぽを向いた。

「しかし見れば見るほど女だのぉ~」
「なんだよその言い方」
「昔、頼んだことがあったの、覚えておるか?変化の術を使って女になってくれと、一度だけ頼んだことがあっただろう」
「あったな、そんなことも」
「予想通り美人だったな!」
「けっ…誰にモノ言ってんだよ。うちは一族は痩身優美と相場が決まってんだよ。イズナほどじゃなくても、俺だってな…」

そこで言葉を区切り、マダラは黙り込んだ。その様子が、いつかのマダラを思い出させて、俺は慌てて声をかける。

「どうしたんぞ、何かあったのか?」

しかし運命とは皮肉なものだ。
マダラを心配し、身体を近づけたところで、部屋にノックの音が響き渡ったのだ。

「ハシラマ?まだ起きてるのか。少し話があるんだが…」
「起きておる!起きてはおるのだが、その…いま、あの…」
「来客中か?」
「いや!誰もおらぬぞッ」

咄嗟にマダラと顔を見合わせ、俺たちはあたふたと視線を彷徨わせた。マダラがここにいることを知られるのは非常にまずい。
政敵の一人娘を、真夜中に部屋に連れ込んでいたなど、人に知れたら殺されても文句は言えない。なにより、マダラが傷物として扱われてしまう!

(それだけは避けなければ!!)

俺は慌ててマダラにクローゼットに隠れるよう指示を出したのだが、察しの良い兄は「また明日にしよう。お休み」とあっさり引き下がってしまった。

「大丈夫ぞ!本当に大丈夫ぞ!」

思わず自室の扉を開け放ち、無実を主張するかのように叫んだ俺。しかし外から戻ったばかりらしい兄は、どこか疲れたような笑みを浮かべ「おまえが良くても、相手は嫌な思いをする。女性には優しくしろ」と長い廊下の先へと消えてしまったのだった。
置き去りにされた俺は兄の様子に常にないものを感じ、少しばかり不安になったのだが、それも部屋からひょっこり顔を出したマダラの言葉で消え去ることになった。

「お前の兄さん、扉間そっくりだな。驚いた…」
「やはり、そう思うか?」
「声を聞いただけで鳥肌が立った。できれば関わり合いになりたくないな」

あの頃同様、マダラは扉間を嫌っていた。
いや、昔より感情がストレートに口に出せるようになった分、マダラの気持ちに整理がついているのかもしれない。

兄が去った廊下の先を、不機嫌そうに見ているマダラをみて、俺はふとした疑問がわいてきた。

「ところでマダラ。お主、今夜はどうするつもりぞ?」
「どうって…そりゃ帰るだろ。俺がいなくなったことがバレたら大騒ぎになる。父上も卒倒するし、それに…」

再び言葉を区切ったマダラは、また何かを言いたげに口を噤んでしまう。こういう時のマダラはどれだけ粘っても口を割らないことを俺は知っている。

(自分から言ってくれるまで待つしかないの…)

だが、その判断が俺のこの「マダラが女」という夢のような人生を、人生で最も苦いものにしてしまうのだ。
いつだってそう、俺の優しさはマダラにとっては何の意味もない。むしろマダラの背中を押すことにしかならない。

マダラの決意はいつだってマダラを苛酷な道へと進ませる。
そして俺は結果的にその後押しをするような事しかしないのだった。

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