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何度も生まれ変わり巡り会う柱マダ。戦時中に巡り会った二人のお話。






「いつの世も戦か…」

最期のマダラとの邂逅以降、何の因果か運命か、俺たちはもう何度も生まれ変わり、その都度巡り逢っていた。
生まれる場所はばらばらで統一性などありはしないが、不思議と俺たちはいつも同じ年齢で、同じ性別に生まれついていた。ただいつ巡り合えるかは皆目見当もつかない。「今生では逢わずに終わるのか…」と病に侵され、病院のベットで失意に沈んでいた時、隣のベッドにマダラがやってきたこともあったし、逆に産まれて数時間後には乳児室でマダラと隣同士なんてこともあった。
どれもこれも今となっては笑い話だ。

そして今生の俺たちは…というと、俺は軍人。マダラは赤紙で徴収を受けた学徒という立場だった。

ここしばらく戦争などとは縁遠いところで生きてきただけに、どこか遠くに置き去りにしてきたものが騒ぐような感覚を覚え、俺は気が付けば軍人への道を歩んでいた。生まれた家も代々が軍人の家系で、俺は高学歴故に入隊後すぐに部下がつきエリートコースに乗っかることとなったのだが、その俺ですら徴兵された俄か仕込みの学徒兵の指導に当たらねばならぬほど、戦局は悪化の一途をたどっていた。

マダラはどうしているのだろう…。
まさか敵国に生れ落ちたのではなかろうか。
戦場で顔を合わせることにでもなるのか?いつかのように…

そんなことを考えながら日々を過ごしていたときだ、新しくトラックの荷台に乗せられやってきた学徒の中にマダラの姿はあった。
姿かたちは互いにあの時のまま、俺たちは数えるのも馬鹿らしくなるようなお決まりの挨拶を交わした。

「よぉ…」
「久しぶりだな」

マダラの言葉と俺の様子に部下の一人が「お知合いですか?」と訊ねてきたが、不信感は拭えないだろう。徴収を受けたマダラは院生で、軍人畑の俺とは接点がまったくなかった。
マダラとの関係性をうまく説明することもできず、俺は曖昧に笑い、話を濁すしかなかった。
だがこの会話のおかげで、士官学校を代用して急造された学徒訓練所におけるマダラの待遇は、明らかに他の学生たちよりも良いものとなった。
訓練が終われば、学徒は戦場へと送り出される。戦死者の数はここしばらく右肩上がりだ。先月送り出した学徒も、もう半分が鬼籍に名を連ねていることを俺は知っていた。
そして恐らくマダラも、戦場を駆け抜けた者として、本能的にこの戦いの行く先を見抜いていたのだろう。

日を重ねるごとに俺たちは共にあっても言葉少なになっていき、やがて会話もなくなり、ただ訓練が終わり、皆が寝静まった後に屋上で星を見上げながらひっそりと酒を酌み交わすだけになっていった。

俺は迷っていた。
日々学徒の指導にあたりながら、俺は迷っていた。
俺の力でマダラを戦線離脱させることはできる。どうとでも理由をつけて家に帰せばいいのだ。心臓に疾患があるとか何とか一筆書き上に提出すればいい。だがマダラはそれを良しとしないだろう。

忍の神と双璧をなし、戦国の世を生き抜いただけあって、今生でもマダラはその才能を遺憾無く発揮し、指導教官からも常に「良」を貰っている。

「少しは手を抜けばいいものを…。もう俺たちは『チャクラ』も練れん一般人ぞ?」
「わかってる…」

責めるようにそういえば、マダラは自嘲気味に笑い肩を揺らした。

その数日後だ。
マダラの名が特攻隊員の名簿に書かれていたのは。

俺は上から回ってきた名簿を握りしめ、白昼堂々、訓練中のマダラに詰め寄った。
多くの者が見ていたし、誰もが上官の乱心を止めに入った。

「どういう事ぞ、マダラ!!お主、自分から志願したのか!??なぜだッ」

マダラの胸ぐらを掴み上げ、俺は怒鳴った。それは俺の悲痛な叫びだった。
特攻志願は徴収を受けて直ぐにマダラ自身が行ったものだった。

「なぜ命を無駄にする!!答えろ、マダラッ」

止めに入る部下を薙ぎ払い、俺はマダラに叫び続けた。
しかし帰ってきた答えは俺が予想もしていないものだった。

「特攻が戦術として使われるようじゃ、この国も先が見えてる。でもなぁ、特攻の話を聞いたとき、俺はこの戦術を採用したやつのことを誰も責められないと思った…」

昔の俺と同じだ。
イズナを失って自棄になって、負け戦だと分かっていながら多くの仲間を引き連れてお前との戦いに臨んだ。結果、どれだけの者が死んだことか…。

「俺がしたことと同じだ…。だから俺は誰も責めないし、この選択に後悔もない」

マダラの声はどこまでも静かだった。その瞳は穏やかで、自分の死期を悟った老人のようですらあった。
全身から力が抜け落ち、俺はその場に崩れ落ちた。

何を言ってもマダラの決意は変わらない。あの時と同じだ。

「また…先に逝くのか…マダラよ」
「お前は長生きしろよ…」


俺たちの人生は何度やり直しても変わらないことがある。
不思議なことにと俺たちはいつも同じ年齢で、同じ性別に生まれつく。ただいつ巡り合えるかは互いに分からない。だがいつも先に逝くのはマダラだった。

翌日、朝一番で前線からマダラへの直接招集がかかった。特攻要員が足りなくなったのだそうだ。
俺は召集令状を破り捨てながら涙を流した。

マダラは何を思ったのか、昨夜のうちに訓練所を去り、自ら前線に赴いたのだという。


『長生きしろよ』

お前はいつもそういって先に逝く。
俺はお前の言う通り、いつも長生きしてお前よりもあとに逝く。

その時間がどれほど長く苦しいものか…、お前は知っているか、マダラよ。

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