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猟奇的な闇を抱える扉間のお話。





ふとした瞬間に猟奇的になる自分がいる。
人には知られていないが、どうやら自分は相当な変態らしい。

もっとも、そういった性癖を自らが持っているということの自覚がある分だけ、人よりマシなのかもしれないが…。


・:*三☆・:*三☆・:*三☆

オレが自らの欲望を満たすために行うこと。
それは非合法でありながら合法であり、欲望のためでありながら里にも貢献できるという、オレならではの方法だった。

遺体の解剖。

それこそがオレの欲望を満たす唯一の方法であった。
オレの研究室は研究論文や、実証データなどの紙束。そして古来からの巻物といったカビ臭いもので構成されている。オレはあくまで理論的に成立したものだけを術として開発研究しているのだ。故に、研究時間の殆どは紙と向き合い過ぎてゆく。

だから誰も何も知らないのだ。

研究室の地下。更にその奥に地下よりも深い場所に繋がる扉が隠されていることを…誰も知らないのだ。

その扉が開かれることは多くとも月に数度。少ない時には数カ月にわたり開かれることはない。
いつ扉が開かれるか、それはオレの狂気の趣くに任されている。

ただどうしようもなく我慢が利かなくなったとき、オレはその扉に手を伸ばすのだ。身体の奥深い場所が疼き、脈拍が速くなり、浅い息を繰り返し、まるでその事しか考えられなくなる…そんな感覚。

飢えた獣のような有様だと自分でも思う。
しかしそれを押し留める必要性を全く感じないのだ。

興味の向くままにメスを振るい、冷たく薄い皮膚を切り裂いてゆく。
そこには悲鳴や慟哭などといったものは一切存在せず、絶望も存在しない。

当たり前だ。屍体はすでに生命活動を停止し、永遠に沈黙している。

オレの扱う屍体は大抵が血系限界のもので、だからこそ非合法は「研究室」の名の下に合法となった。
決して表には出てこない里のために行われる研究。しかし生命活動を停止した身体から得られる情報などたかが知れている。
本当に必要なデータを集めるためには生きた素材こそ必要なのだ。

だからオレは、オレのこの行為が、自分の性癖に依るものであることを深く自覚しているのだ。
効率を追求し合理性を求めるこのオレが、自分の欲望に振り回され、無駄な時間を仄暗い地下で過ごしている。

時間の無駄。
労力の無駄。
費用対効果の低い、価値の見出せない行為。

それでもオレはオレの欲望を満たすため「研究」という名のマスターベーションを繰り返す。

そして今日もまた、顔も知らぬ男の屍体にメスを走らせながら思うのだ。

イズナを解剖したい…と。


・:*三☆・:*三☆・:*三☆

そもそもオレがこういった行為に手を染めるようになったのには原因がある。
そう…すべての物事には原因と結果があるのだ。

結論から言おう。
オレは里ができるまで屍体の解剖になど手を染めたことはない。専ら新術の開発研究がオレの趣味であり、それは自らを高めると同時に一族に貢献できる唯一の方法だった。

しかし里ができ、族長補佐となり、自らの研究室を持ち、仕事のかたわら研究室にこもるようになると不埒な考えが頭をもたげ始めたのだ。

真夜中。蝋燭の炎に照らし出された薄暗い室内で、里に迎合した他族から献上された古い巻物を精読していたときのことだ。
ふと集中が途切れると同時に、ある疑問がオレの頭をよぎった。

イズナの死因はなんだったのだろうか…。

オレの飛雷神斬りにより脇腹を斬り付けられたイズナではあったが、それが直ちに死因とは考えられない。何故なら手応えがなかったからだ。
傷はついたが深いものではなく、死因というには軽すぎるものだった。

オレの予想では一、二ヶ月の療養ののち前線復帰する程度の傷だったのだ。

だからだろう…。マダラからその死を聞かされた折、オレは少なからず驚いた。そして人々の言葉に、らしくもなく耳を傾け驚愕した。
人から又聞きした話を真実であるかのように錯覚し、そしてマダラを嫌悪した。

らしくない話だ。

何事にも客観性を持ち真実を探求する旨をよしとするこのオレが、人伝に聞いた感情論混じりの批判的な言葉に耳を傾けたのだ。
それほどにイズナの死はオレの中で信じがたいことだった。

そしてオレは真実を知りたいと願うようになる。
それは人から聞いた話ではなく、ましてやマダラから語られる真実でもなく、オレ自身の手によってもたらされる真実だ。

イズナの屍体を解剖すれば死因は明らかとなる。

オレはイズナの屍体を求めた。極秘裏に、人知れず、ひっそりと、夜陰に紛れその墓を暴いた。
だがそこにあったのは白い骨だけであった。
荼毘に付され血肉を失ったイズナの骨は乾燥し軽くなり、触るごとにパラパラと崩れ落ちていった。

そこに真実など見出せるはずもない。

血系限界を保ち続けた「うちは」の埋葬方法は完璧であった。

「賢明な処理方法だ。血系限界解明のため、墓を暴く愚か者が後を絶たなかっただろうからな」

どんなに望んでもイズナの屍体は手に入らない。オレは暴いた墓の前で骨壷の中に納まった白い骨を握り締めて立ち尽くした。
この結果は想像していなかったのだ…。

千手では遺体を荼毘に付すことなどしなかったのだから。

火遁に始まり火遁に終わる。うちはらしい考えでもあった。



その日以来、オレは屍体に異様なまでの興奮を覚えるようになる。やがて屍体を研究室に持ち込み、解剖するまでにそう時間はかからなかった。

手も足も出ない現実を前に、オレは無心で見知らぬ男たちの屍体を解剖した。
そして手に入らないイズナの身体を想像するにつけ、オレは激しく興奮するのだった。


・:*三☆・:*三☆・:*三☆

オレの想像するイズナはとても無口だ。

検視台に横たわる身体はどこまでも白く冷たく、閉ざされた両の目が開くことは決してない。
戦場でのみ耳にすることが叶ったその声も同様で、色をなくした唇が開くことは二度とない。

ただそこに横たわる冷たい物体。それがイズナだ。

火影の補佐役として職務に当たっている時。あるいは忍としての道を解くものとして生徒たちと接している時。オレはたまに現実逃避をしてしまう。
たぶん疲れがたまっているのだろう。
気がつくと頭の中でイズナの身体を解剖しているのだ。

正確には、イズナの屍体を解剖する自分というものを想像しているのだ。

そんな時は大抵、気がつくと想像の中でメスを持つ手の動きを、現実の手が追いかけている。
まるて指揮者がタクトを振るうかのように、淀みなく迷いなく、イズナの白い肌にメスを走らせる手を、筆を持つ手が…あるいはクナイを持つ手が、再現していた。

そういう時、オレはとても機嫌がいい。

そんなオレを見て、生徒たちは曇りのない澄んだ眼差しで興味津々といった具合に訊いてくるのだ。

「先生、なんだか今日はご機嫌ですね」
「何かいいことでもあったんですか?」

当然のことだが、機嫌がいい理由を、オレは人に語ったことはない。

オレはオレ自身の異常性に気付いているのだ。

これは解剖でも、血系限界の探求でもなく、単なる欲望だ。

オレはイズナを切りたくて堪らないのだ。
その白い肌を切りたくて堪らないのだ。
イズナの死からもう何年も経っている。

死後30分で斑紋状の死斑があらわれる
1時間30分で融合の開始
2~3時間後には死後硬直が顎関節に発現
6~7時間後に全身諸関節に発現
10時間まで、死斑の指圧や転位による消失
12時間で角膜が濁りだす
12~15時間、死後硬直最高
15時間、死斑最高
24時間、下腹部が腐敗しはじめ変色してくる
48時間前後、角膜が完全に濁り瞳孔の透見不可能に
48時間前後、死後硬直の緩解がはじまる

きっとイズナの死後、この辺りで屍体は棺桶に詰められ火葬されたはずだ。
だが仮に火葬にされず、千手のように土葬であったのなら…?

成人のミイラ化は3ヶ月で完成する。

皮下脂肪の屍ろう化の開始(金属石鹸化)水中で1~2ヶ月
皮下脂肪の屍ろう化完了 2~4ヶ月
筋肉の屍ろう化開始 2~3ヶ月
土の中での全身屍ろう化 約1年
土の中の死体の白骨化 3~5年
骨が乾燥し脆くなる 10~15年

何度考えても答えは同じ。仮に土葬にしても間に合わなかったのだ。

(オレはイズナを手に入れることはできない…)

何故もっと早くオレはイズナの屍体に手を出さなかったのか。
イズナを斬り付けたあの日、なぜイズナを捕えなかったのか。
なぜマダラとともに行かせてしまったのか。

引き止めることは出来たはずだ。

「弟の傷を治してやる」とでもいえば、マダラは簡単に乗ってきたのではないか?

なぜだ。
なぜ…どうして…オレはそうしなかった!?


・:*三☆・:*三☆・:*三☆

過去を思う時、オレはひどい頭痛に悩まされる。
そして今日もまた、あの扉を開くのだ。

イズナに会うために…

『おかえり扉間。今回はちょっと時間が空いちゃったね。忙しかったの?』
「あぁ…すまない、イズナ」


あの日から遠ざかるほどに近くなる。この感情の名前を誰か教えてくれないか…

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