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【前回までのあらすじ】
糖尿病に侵された銀時の身体を案し、自らの血を捧げることを決意した松陽。果たしてアルタナの力は糖尿病に打ち勝つことができるのか…!!
銀時は自らの余命を延ばすことができるのか!(ナレーション:朧)

「だから!まだ糖尿病じゃねーっつってんだろーがッ」






「は?アルタナフルコースじゃねーか!!なんつーことしてくれたんだアンタァアアア!!」

松陽が血のように真っ赤なゼリーを笑顔でオレたちに出してきたのは丁度三時のおやつ時だった。
昨日の今日でコレである。オレもさすがに驚いたよね。もう素直に驚いたよね!
「え、これ、まさか…」って焦ったよね!!

「いやですね、単なるトマトゼリーですよ」

オレの顔色が変わり、スプーンを持ったまま固まったため、鈍い松陽でもオレが何を考えているのかわかったらしい。

「なんだ…そうか、ははは。一瞬焦ったじゃねーか」
「まぁ…トマトをカットしている時に軽く指を切って出血してますけどね」

笑顔でバンドエイドの巻かれた人差し指を見せてくる松陽。
ったく、アンタってやつは、ホント変なところでそそっかしいよなぁ。昔っからそうだ。なーんて、過ぎ去りし日々を思い出して苦笑いするオレ。

あれ…でも、ちょっと待てよ??
人差し指を切って、出血してるって…

「食うなぁあああ!!!!全員それ吐き出せぇえええーーーー」

神楽の後頭部を叩き、新八の頭頂部にゲンコツを食らわせ、定春のエサ皿を蹴り飛ばす。朧と松陽はまぁこの際手が回らないから放っておく。どうせ今更だしな…。

「全員無事か!!」

「無事じゃないアル…メチャクソ痛いネ!!!いきなり何するアルカ!!」
「いきなり何なんですか!!せっかくゼリー食べようとしてたのにッ」

ついでに犬までオレに吠えてきやがる。なんだよ、いっちょまえに命を助けてくれた飼い主様に文句タレてやがんのか?

「お前らなぁ、オレが止めなかったら今頃どうなってたと思ってんだ!!朧みてぇに目の下にクマ作って一生を過ごすことになってたかもしれねーんだぞ、コラァ!!」

そもそも誰だ?松陽に料理なんてさせた馬鹿は!
松陽はなぁ、外見があんなでも、家事全般はイマイチなんだよッ

味は悪くねぇけど料理中は10回に3回は指切るし、針仕事なんて20針に1回の割合でテメーの指を針でぶっ刺してんだぞ!
ぶっちゃけ、オレの方が家事に向いてるよ。
5歳くらいの時に松陽に拾われてから、アイツが捕縛されるまでずっと一緒に生活してたんだ。アイツが意外とドン臭くて間抜けで、変なところで天然で世間ズレしていることは、このオレが一番よく分かってるんだよ!

そう、針仕事中に流血。
そんでもって、料理中に流血。
でもって…

(あれ…なんかこれって、ヤバくね??)

唐突に湧き上がった不安に、オレは衝撃に固まった身体を無理やり動かし、ギギギ…っと首を松陽へと向ける。

「なぁ松陽…。アルタナってさ、どの程度のレベルで人体に吸収されンの…」
「もしかし昨日の冗談を真に受けているんですか?イヤですねぇ~、可愛い弟子を半不死体になんてもうしませんよ。朧のことで、私も自らの血の危険性は十二分に理解しましたから…」

悲し気に瞳を伏せる松陽。
それを横から気遣う朧(ゼリー完食済み!!)。

いやいや、お前ら大変なことを見落としてるよぉ~。
目の前に大変なことになってる人間がいるよぉ~。
ねぇ、気付いてる?
気付いてないよね?

もしもだ、アルタナの力が、血液だけじゃなく、クシャミとか唾液とかからも微量ながらも体内に蓄積されるのであるならばだ、

(アウトじゃねーか…手遅れじゃねーか…。おい、マジかよ…)

ガキの頃、松陽の食べ残した焼き芋を盗み食いした、あの日の自分の後頭部を思いっきり叩いてやりたい。

「銀ちゃんどうしたアルカ…?急に黙り込んで」
「どうかしたんですか、銀さん??」

「なんでもねーよ…ははは」

もう笑うしかねーだろ!!チクショーーーーー


・:*三☆・:*三☆・:*三☆

「え…なに?アルタナって実は大したことねーの??」

「おいアンタ、高血圧じゃねーか!」
「いえ、これは高血圧寸前なだけです。そして朧は低血圧…」

オレの健康診断書の到着から遅れること一週間。松陽の健康診断の結果が到着した。そして衝撃の事実が発覚したわけだが…

「どうりでな…。朝は朧のやつ、もっさりしてやがると思ったんだ」
「病気には至ってませんが、小太郎は偏った食生活によるビタミンB1不足、晋助は過度な喫煙による病をそれぞれ注意されたそうです」
「おいおい、マトモなやついねーじゃねーか!どーなってんだ松下村塾っ」

オレと同じで、松陽との同居を通じてアルタナの恩恵を受けてそうなやつまで病気一歩手前って、ナニコレ!
実はアルタナって、半不死以外の恩恵ないわけ?
病気に片足突っ込んだままの状態で生き続けるとか、ホントどんな力だよ!!フザケンナッ
どうせなら全部治してくれよ!!快適な甘味ライフを満喫させてくれよッ

オレが一人、アルタナの限界について煩悶しているその横で、元凶である松陽は暢気に診断書片手に首を傾げているではないか。

「でも、おかしいですよねぇ…。なぜ私が高血圧一歩手前なんでしょう」
「そりゃアンタ、毎日毎日、漬物ばっかポリポリポリポリ、ポリポリポリポリ暇を見つけては一人旨そうに食ってたもんな。あんなことしてりゃあ高血圧にもなんだろーが!」

実は松陽が我が家に来てから万事屋の冷蔵庫は、食料がない日でも漬物だけは常備されている…という状態が続いているのだ。

「漬物禁止!」
「そんな殺生な!漬物だけは…後生ですから、後生ですから、漬物だけはっ」
「どこの老人だよ!漬物ばっか旨そうにポリポリポリポリ食ってんじゃねぇええええ」
「仮に高血圧になったとしても私は死にませんから!死んでも生き返りますからッ」
「やめろっつってんだろぉおおおお!!!そういうのがイヤなんだよ、オレはッ」

オレと松陽が朝飯前にそんなやり取りをしていると、もっさり朧が洗顔と歯磨きを終え和室に戻ってきた。そして心底眠そうな顔でいうのだ。

「先生は獄中でも漬物だけは欠かさなかったのだ…。そこは許してやるのが弟子というものだろう」
「おまえはホント松陽に甘めぇなぁ!!ってか、大丈夫か?ふらふらしてるぞ…」
「今日は少し血圧が…うぅ」

オレの正面では神楽が我関せずといった様子で、卵かけられご飯を黙々と準備している。
ねぇ、なんでそんな真剣な顔して卵かけられご飯、用意してんの??

(ホントここにはマトモなやついねぇなぁあああーーーー!!)


・:*三☆・:*三☆・:*三☆

「何だかんだ言って松陽先生も人間なわけで…」

チート過ぎるラスボス虚を倒してから数カ月後。僕らの元に銀さんの師匠の松陽先生がやってきた。
銀さんは言葉にこそしなかったが心底嬉しそうで、実は兄弟子であることが発覚した朧さんとも最近では仲良くやっている。

人の人生なんて分からないものだ。まさかこんな楽しい日々が再びやってくるなんて、あの時の僕らには想像もできなかったのだから。

でも僕は信じてたんだ。必ずみんなでこの万事屋に…よろず…

「ちょっと!??なんで家が半分吹き飛んでるの!!」

それは僕が無くなったトイレットペーパーを買いに行った15分の間に起きた悲劇だったという。
丁度、吹き飛んだのは事務所とその続きの和室。何かあったことは経験から直ぐに分かった。
一部の壁と天井を失った万事屋から、銀さんの叫び声が聞こえてくる。

「誰だ!イモムシなんて危険なもん松陽に見せたやつはぁあああーーー」
「いやぁあああ!!!!」
「頼む落ち着いてくれ!これ以上家を壊さないでくれぇええええーーー」
「いもむ…いやぁあああああーーーーーー」

松陽先生も人間で、苦手なものがあって、なんでも散歩から帰ってきた定春の身体に芋虫がくっついていたのだそうだ。

「すみません、つい取り乱してしまって…」

恥ずかしそうに身を縮めて俯く松陽先生は、どこからどうみても綺麗で儚げで、これがどうやったらあのラスボスになるのか、僕には未だに理解できない。まぁ、錯乱するとアルタナを暴発させる…という点だけは勘弁してもらいたいが。

「もう大丈夫ですよ。アレは公園の方に捨ててきましたから」
「ありがとう…新八くん」

…といった30分後。神楽ちゃんが物凄い良い笑顔で、アレを拾ってきたのは「お約束」ということで。

「完全に屋根なくなっちゃいましたね…」
「午後から雨だって、結野アナいってたよな…」
「私は傘あるから、だいじょーぶアル!」

こんな時に限って朧さんは仕事で出ているし、帰ってきたら驚くんだろうな…。

「すみません、本当に…本当に、アレだけは駄目なんですッ」


・:*三☆・:*三☆・:*三☆

「お前らみんなアルタナに夢見過ぎなんだって!!」

神楽に会いに来たというハゲ散らかしたオッサンが、万事屋の事務所のソファに座り、松陽と話し込んでいる。
しかも妙に下手にでてねぇか、あのハゲ。

「もう600年以上生きてるんですよね?」
「その割にアレじゃないです?髪…フッサフサですよね」
「やっぱアルタナですか?」

しかも質問攻めかよ、あのハゲ。

自分が戦った虚と、目の前にいる松陽との違いを、このハゲがどうやって納得したのか、それはオレの知る所ではないが、松陽の方もいつになく気を遣っているような態度を取っている。

「私の場合は年をとりませんから」
「あぁそうなんですか!やっぱ毛根も20代なんですか!?」

ただわかることは、社長椅子に怠惰に座るオレの目の前で、ソファに座った二人が延々と髪の毛(主にハゲの方が一方的に)の話をしているということだけだ。

「今からでも間に合いますかね!?」
「スキンヘッドもお似合いだと思いますよ?」
「松陽先生。実は私、一つ物凄いことを考えたんですよ…。アルタナの力を毛生え薬に混ぜてですねぇ」

まぁ、予想はできてたよね!!
ハゲの考えそうなことといえばソレだよねッ

「どんだけ必死なんだテメェーは!!!テメェーの毛根はもう手遅れなんだよ、かえれ!」

アルタナはなぁ、馬鹿につけても天才にはならねぇし、糖尿病にも低血圧にも効かねぇんだよ!!!死滅した毛根に塗っても毛が生えてくるわけねぇーだろッ

オレと朧が証明だ!!現実みろ、ボケ!


・:*三☆・:*三☆・:*三☆

「酒はダメだ…。アレはほんとダメだ。」

世間一般では「男親」ってやつは、成長した息子と一杯やるのが夢らしい。
オレにはイマイチわかんねーけど、確かに居酒屋で息子と酒飲んでる親父たちはどこか嬉しそうだ。

で、なんかよく分かんねーケド、朧のやつがオレに金渡してきて「先生と飲みに行ってこい」とかいってきたから、有難くパチンコに繰り出したら新八に殴られて説教された。

「なにガキみたいなことしてんですか!!僕なんて、もうどんなに願っても父上とお酒を酌み交わすことなんて一生できないんですよっ」

そりゃ、分かっちゃいるけどよぉ…。
今更っつーか、よくよく考えたら、オレは松陽と真面目に向き合ったことが三回くらいしかないのだ。しかもそのどれもが人生のターニングポイントだった。

(いまさらどんな顔して松陽とはなせっつーんだよ…)

そもそもさぁ、お前ら分かってんだろ?オレが酒に強くねぇこと。
オレになにやらせてーんだよ。お前らが思ってるような感動の展開になんてなるワケねーだろ、ボケ!


…とか思ってたんだが、まぁ、なんか色々語り始めちゃったよね。
明日の朝、たぶんオレ、死んでるわ。
恥ずかしくって松陽の顔とか見られなくなってるわ!!

「いつまでたっても先生を追越せねぇなぁ〜って思うわけよ」(しねオレ!だまれオレ!)
「そうですか?私としては、もう随分前にあなたには追い越されちゃってるつもりなんですけど」

オレの行きつけの店(それはツケが溜まりまくっている店だ)のカウンターで、辛口の冷酒を涼やかに口に運びながら松陽はそういって少し笑った。
昔からそうだったが、松陽は濃い色より薄い色のものが良く似あう。いまも冷酒は白い透明なガラスに淡いかめのぞき色でラインの描かれた涼し気なものに入れられていて、そろいの猪口を口に運ぶ松陽は、オレが今まで見たどんな松陽とも違う表情をしていた。

「全然追い越されてなんてねぇよ。相変わらずオレはアンタから学ぶことも多いし…」(ウソです!ぜんぶウソ!)
「あなたは十分立派な大人になりましたよ」

目を細めて微笑む松陽を見ていると、オレはなんだか泣きたくなってくる。
ガキみたいに松陽に縋りついて泣きたくなってくる。

「ガキどもの面倒みるようになってさ、ようやくアンタの気持ちがわかったような気がした」(もうやめて!!だれかオレをだまらせて!)
「私があなたにしてあげられたことは、そんなに多くありませんよ。あの頃は私自身も何もかもが手探りでしたから」
「そんなことねぇよ!アンタはよくやってくれた!ヅラや高杉だって、アンタの事大好きで、ホント大好きだったから…。オレもアンタの事、大好きだったから!」(ころせぇええええーーーー!!!!)
「過去形ですか?」
「いまも!いまもだけど、アレだよ、いろいろあっただろ…。朧のことも、オレたちは全然知らなかったし。酷い事いったり、したりした…」(ころしてくれぇええええーーーー)

酒って怖い!!
ゲロ意外にも身体の中に納めてるモン一気に撒き散らすから怖い!!
うがぁあああああ!!!!

挙句の果てに、新八や神楽のことまで語り出しっちゃってるオレ!!

「あいつ等もさ、いつか大人になって巣立ってくんだよなぁ。いつか追い抜かれて、それを笑って見送ってやんなきゃいけねーんだよな」
「そうですね…」
「それが、大人の役目なんだよな。でもスゲー悲しい…。あんたも、こんな気持ちだったの?」
「銀時…」
「オレはぜってー離れねぇよ。アンタが嫌だッつっても、離れるつもりなんて全然ねぇよ!アンタがオレのこと拾ったときから、オレは、ずっと…アンタの事、家族だって思ってるからさ。一人で置いてけぼりになんてするわけねーじゃん」

しねぇえええええーーーー!!!!
ころせぇえええええ!!!
ころし…ウォゲロボ…オボロロロロロ…

そこでオレの記憶は途切れているわけだが、翌日、二日酔いで苦しむオレに対して、なんかスッゲー朧が優しくて気持ち悪かった。生温かい目でオレのこと見るの止めてくれ。ねぇ、やめてよ??
やめろっつってんだろぉおおおお!!!

「銀時、ちゃんと朧にお礼は言いましたか?昨日は大変だったんですよ。あなた、迎えに来た朧に…」
「やめろぉおおおーーーーー!!!!ききたくねぇよそんな話ぃいいいい」


・:*三☆・:*三☆・:*三☆

「最近話題について行けなくて突っ込みどころじゃないんですけど…」

松陽先生のことを間違えて「母上」と呼んでしまった。
固まる空気。
そして困ったように微笑む松陽先生。

うわぁあああーーーみんなに絶対馬鹿にされる!
絶対みんなに死ぬまでネタにされる!!
笑い者にされるぅうううーーー

よりによって僕がそんな凡ミスをしたのは、万事屋メンバーが全員そろって事務所でお茶を飲んでいる最中だった。

寺子屋の女の先生を「母上」と呼ぶのはギリセーフだ。一時的に笑いものにはなるが、誰しも一度はやらかす過ちといえる!
しかし松陽先生はマズイ…。
なにがマズイって、松陽先生はあんな外見でも「男」だ!しかも「先生」とはいっても僕の先生ではなく銀さんの先生だ!

例えるのならこれは、人妻を旦那の目の前で口説いたのと同じくらいマズイ!!(と僕は思う)

俯き固まり、みんなからくるであろう罵詈雑言を覚悟する僕。
だがどれだけ待っても予想された言葉は飛んでこず、むしろ空気が和やかなのだが??

「あーーー、ぱっつぁんもやっちまったか~」
「私なんて昨日も間違えたネ」

「え…みんなも間違えてたんですか!?」

意外な展開にホッと胸を撫で下ろす僕。でも一人だけ話の波に乗れず、真剣な顔をして僕の顔を見つめてくる人間がいる。朧さんだ…。

「俺は一度もない」

別のとこからメッチャ気まずいのキタァアアアーーー

「そ、そのうちきっと間違えますよ~。ね、みんなもそう思うでしょ?」

って話振ってんのに、全員別の話題に移ってる!!!松陽先生まで移ってる!

「ちょっと、僕と朧さん置いてけぼりにしないでくださいよ!!」

朧さんメッチャこっち見てる!
無表情でじっとこっち見てるッ

「ご、ごめんなさい、悪気はなかったんです!本当ですっ」
「別に…そこまで気にはしていない」
「あ…そうなんですか。そうなんですね」

なんで僕が朧さんに謝ってんだよ!!おかしいだろッ
なにこれ、どうなってんの!??
励ましとけばいいの??

でも…励ましようがないんだけど…。

「あの、朧さん…」

「なぁ朧、お前もそう思うよな~」
「朧は銀ちゃんとは違うネ」
「私も興味あります。朧はどうなんですか?」

って、朧さんまで、別の話題に移ってるーーーーーー!!!

信じられない展開に、思わず話題の渦中の朧さんの顔を凝視する僕。見つめ返す朧さん。凝視する僕。見つめ返す朧さん。凝視する僕!見つめ返す朧さん!!

「…メガネだな」

なにがぁああああ!????なに話してたんですかーーー!
もう泣いていいですかッ


・:*三☆・:*三☆・:*三☆

「一緒に洗濯もの干してただけなんですけど…」

「新八って松陽先生のこと好きなんじゃね〜」と銀さんが僕に向かっていったとき、僕は松陽先生と一緒に洗濯物を干していた。

「新八のやつ、ようやく身近な人間に目を向けたかと思ったらそこアルカ。しかもデッカいコブつきネ」
「ほんとほんと。年上で男で、しかも元奈落首領がもれなくオマケで付いてくるんだぜ?」

悪ふざけだとは分かっているが、それにしてもやることがガキっぽい。
僕は一つ溜息をつき、タオルを干しながら「はいはい、そうですね~」とおざなりに返してやった。こういう時は下手に否定するより、適当にあしらう方が二人も飽きて話題が移る。

そんな僕たちのやり取りを、クスクス笑いながら松陽先生は楽しそうに見ている。どうやら松陽先生の様子からいくと、銀さんは子供のころもこんな感じで友達のことをからかっていたんだろう。成長のなさに溜息が出てくる。

「でもそれでいくと私と新八くん、相当な年の差カップルになっちゃいますよ?」
「あー大丈夫だいじょうぶ、五年後のぱっつぁんは、老け顔イケメン黒髪メガネだから、バランスとれンじゃね?」
「そうなんですか?それは五年後が楽しみですね~」

「松陽先生まで二人に乗っからないでくださいよ~」

有り得ない未来の話に盛り上がり笑いが漏れる。しかし平和だったのもそこまでだ…

「その場合…おとうさん、と呼ぶべきか」

全員が物干し所に集まっていたせいか、それまで事務所で新聞を読んでいた朧さんが顔を出し、唐突に無表情に爆弾を投下してきたのだ。
この人、なにか僕に恨みでもあるんだろうか…。

思い当たる節なら、あるような…ないような…。

万事屋の家事全般を請け負っている僕のことを、よく松陽先生は手伝ってくれる。今だってそうだ。僕が洗濯ものを干していると、松陽先生がどこからともなくやってきて「手伝います」といって二人で雑談しながら干し物をしていたのだ。
もしかしたら朧さんは僕が邪魔なのではないだろうか…。
大好きな松陽先生を、パッと出の僕に奪われたような気がしているのではないだろうか。
だとしたら、早々に誤解を解かないと、僕の身が危ない…!!

「あの、朧さん!ちょっと勘違い…」

「こら朧。新八くんに失礼ですよ。新八くんはまだ10代なんです。朧みたいに大きな子供が急に出来たら戸惑ってしまいます。ここは『新八さん』で、ね?」
「…」

事態が悪化してる!!!

無表情に僕を見る朧さん。顔をそむける僕。僕を見る朧さん。視線を逸らす僕。僕を凝視する朧さん!洗濯ものに意識を集中する僕!!

(ころされるのかもしれない…)




次回「嘘と冗談と本気の違いがまったく見分けられない義理の息子について相談させてください(匿名希望)」お楽しみに~

新八「今度こそ続かないですからね!!新八×松陽になっちゃいますからっ」

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