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銀さんと朧と松陽先生が万事屋で暮らしている話
「全部アンタのせいなんだけど、全然分かってなかったよね??」
「銀さんに怖いものなんてあるんですか?」
なーんて新八が訊いてくるモンだから、たまにはカッコいいことの一つでも云っといてやるか~ってなもんで、
「そりゃおまえアレだよ…。大切な者を失う事…かな」
つって切ない顔して頬杖ついて視線を遠くにやったってのに、オレの名台詞に被せるように松陽のやつが「幽霊とお化けですよね」とか、笑顔で言ってくるから全部台無しだよね!
アンタはオレになにか恨みでもあるのか?
そりゃ確かにアンタの首と胴体を二度ほど切り離したわけだけれども!!!
でもさぁ、アレだよ?そもそもオレがスタンド苦手になったのも、お化け苦手になったのもアレだからね!?
全部アンタのせいなんだからね!??
ガキの頃はこんなんじゃなかった。
そもそもオレが松陽に出会う前に、なぜ一人きりでも生きていけたのかというと戦場にいた親切なおっさんが『おまえアレだぞ…それ、質屋に持ってくと金になるぞ。俺の親父の形見だけど気にすんな。俺ももう死ん…割愛』生きかた教えてくれたり、鬼みてぇな顔して鉈を持った三つ目のババアが『死んだ坊やにそっくりだぁ…』って世話焼いてくれたり色々あったからだ。
なのに松陽のやつ、ある日突然、笑顔で
「銀時って猫みたいなとこありますよね」
「ねこ?」
「えぇ…。だって猫もよくなにもない空間をじっと見つめてたりするじゃないですか〜」
「??」
「まぁ銀時の場合、何もないところに話しかけたり、色々やってますけどね。空想のお友達でもいるんですか?」
「!!?」
その時オレは悟ったのだ。マトモな人生を送るためには見ちゃいけねーモンもあるんだなって。
でもそれだけならオレだってこんなに苦手にはならなかった。
忘れもしない…松陽と長逗留した、とある宿で起きたあの事件。
その部屋は古臭い部屋で、そしていつもいつも知らない間に押入れがほんの少し空いているという不思議な部屋だった。幼心にオレはそんな不思議な押入れに違和感を感じていた。そして松陽に何度かそのことを指摘したのだ。
しかし当然、変なところで天然で鈍感な松陽に伝わるはずもなく…。
そしてとうとうその時を迎えたのだった。
「また開いてんじゃん…チッ」
いい加減な性格の癖に変なところで神経質なオレは、中途半端に少し開いた襖が気になり、閉じようとしたのだ。その時、オレは押入れの中にあらぬものを見てしまった…。
「ぎぃやぁあああ!!!!へ、ヘルペスミィイイイイーー」
オレが助けを求めていたその時、松陽が何をしていたか。
風呂上がりに手ぬぐいを首に引っ掛け、卓球に勤しんでしたのだ…信じられない!
「やったーーー!!!大勝利ですよ!これで旅館代はタダです、銀時ーーー!あれ、銀時?」
松陽がきたとき、襖は吹っ飛び、押入れの前で倒れ込むオレがいたのだという。
あのとき、オレが何を見たのか。オレは覚えていない。
またあるときはこうだ…。
それはオレが旅先で栗拾いに夢中になり石につまづき、小山から転がり落ち骨折し、近くの病院に入院することになった。
骨折はまぁ仕方ないとしよう。
入院もこの際だ、致し方ない。
だがな、オレの隣のベットに黒いローブを着てフードを目深に被った、大鎌を手にした変な奴がいたとする!
よりによってオレの部屋は八人部屋で、にもかかわらず部屋にはオレとそいつしかない!!
さぁどうするッ
「うぎぃやぁあああ!!!!ヘルペスミィイイイイーー!しょーよぉおおお」
その時、松陽がどこにいたかというと…
「ごめんなさい、お手洗いにいってました〜、へへへっ」
「こ、ころされ、る!」
「しっかりしてください銀時。大丈夫、大丈夫、1ヶ月もすれば元どおりですよ〜」
「ちがう!ちがう!となりのベッドォオオオオ」
オレはたっぷり1ヶ月、黒いローブを着てフードを目深に被ったの男と共に大部屋で二人きりで過ごしたのだった。
『おう坊主、ちょっくら仕事にいってくらぁ〜』
「し、しごとって、なに…」
『坊主もおとなになりゃわかる時がくるさ…ふっ』
わかるよ、わかる!たぶん借金の取り立てとか、そんなだよね!間違っても人の魂とか回収するのがお仕事とか、そんなんじゃないよねッ
ってか、なんで病院に住み着いてんだよ、フザケンナァアアアア!!!
またある時はこうだ…。
それはオレが松陽と旅先の神社に参った時のことだった。
「絵馬ですって!私たちも書きましょう」
「えーーー、めんどくせぇ」
「せっかく字を覚えたんですから!銀時も、ねっ」
そしてオレの目の前に差し出された一枚の絵馬。オレはなんの疑問もなくその絵馬を受け取ったのだが…
「ほら銀時、絵馬ですよ〜って、あれ?もう絵馬もってるんですか銀時」
「え?だってさっき松陽が…」
「私は今まで絵馬を買いに社務所に行ってましたけど?」
「え…え…えぇえええーーー!!!ヘルペスミィイイイイーー!!」
「またそれですか銀時…ふぅ」
そしてまたある時は…
オレが意識を半分飛ばしながら過ぎ去りし日々を思い出していると、神楽のやつが、「でも信仰心のかけらもない銀ちゃんに、そんなもの見えるはずナイネ」と完全に馬鹿にしきった顔でいってやがるじゃねーか!
バカヤロウ!!
誰がテメーを雪吹きすさぶスタンドだらけの温泉旅館から生還させてやったと思ってやがんだ!
オレの心の叫びを受け、新八がここぞとばかりに口を開く。よしよし、さすがは突っ込み担当だ。ビシッといってやれ!
「そんなことないよ神楽ちゃん!神楽ちゃんや姉上を幽霊から…」と新八が言い出すからソッコー沈めたよね。
「スタンドだっつってんだろぉおおおーーーー!!!」
スタンド以外の言葉でスタンドをよぶとなぁ、おまえ、アレだぞ、スタンドが来るんだよッ
・:*三☆・:*三☆・:*三☆
「プラモ以下って時点ですでにアレだったけれども…」
「なんかさー、金時のときもそうだったけどよぉ…おまえら、薄情すぎねぇ!?」
金時の次はおまえら、朧かよ!!
わかるよ、確かに頼りになるね。だって元奈落首領だもの!
わかるよ、仕事完璧だし酒のまねぇし、パチンコしねぇし、夕方5時には必ず家にいるし、就寝はキッチリ11時だし、人としてしっかりしてるよね!
目の下のクマも薄くなっちゃってさ、たまに笑うようになってさ、ギャップ萌え狙ってんの?ねぇ、狙ってんの!?
「ふざけんなよ!!万事屋の社長はオレだよ!?万事屋銀ちゃんだよ!??100%オレでできてるからね、ここは!」
オレが二日酔いを引きずって二日ぶりに帰ってきた万事屋は、オレの知らない間に「万事屋朧」状態になっていた。
最早誰が居候だか分からない。
オレは一体何ものだったっけ?
え…もしかして、万事屋の居候って、オレの方だった??
新八と神楽にエアスルーされ、朧には溜息をつかれ、ある意味いつぞやの金時事件よりもピンチである。しかしオレが怠惰に外で過ごした二日間はどう頑張っても帰ってこない。やり直すことはできないのである。
だが立ち尽くすオレの肩を優しく叩く人物が一人…。
「子供たちはずっとあなたの帰りを待ってたんですよ?」
その言葉はどんな言葉よりもオレの身に染みるものだった。
この年になると叱責されるよりもへこむ叱られ方があるのだと、オレは初めて学んだ。
「わるかったよ…」
万事屋が始まって以来、いや、もしかしたら子供の時以来かもしれない。素直に謝罪の言葉が口に出た瞬間だった。
その日の夕飯はチョットだけオレの夕飯が豪華になっていて、改めてオレはここが自分の帰る場所で必要とされているのだと実感した。
・:*三☆・:*三☆・:*三☆
「子供は成長と共に白ブリーフからも卒業するもんなんだよ!!」
「ほら、金やるから。これで何か自分のもの買ってこいよ」
「ぎんとき…っ」
そういってオレが松陽を人生初のバーゲンセールに送り出したのは午前中のことだ。在庫一掃セールというだけあって半額商品が目白押しで、正直この激戦から松陽が無事帰ってこれるのか少し心配な部分もあるが、かといってガキどものお守りのためにセール会場にいく気力はオレにはない。…ということでガキどもと共に松陽(と朧)を送り出したのだが。
松陽のやつ、満面の笑みでとんでもねぇモン買ってきやがった!!!
「下着のストック買ってきましたよ、銀時」
「は?なにこれ…」
公衆の面前(それは万事屋の事務所だ)でオレに差し出されたのは純白のブリーフ!将軍家御用達のアレであるッ
純白のブリーフなんて何で買ってきてんだよ!オレはそんなモン買いに行かせるために金を渡したわけじゃねーんだぞ、オイ!
しかも新八や神楽の目の前で堂々と渡しやがってぇええええーーーー!!!
アンタはオレのかーちゃんか!??
たいだい、今時ブリーフってどういうこと!??
(おい…もしかしてと思うけど…)
「先生…アンタもしかして…ブリーフ派なの?」
恐る恐る松陽に訊ねてみる。
「いいえ、褌派です。それがなにか?」
アウトォオオオオ!!!!
いや、セーフなのか??これはむしろセーフなのか?
もう訳が分からなくなってくる。
だがそうなってくると、松陽命の朧の下半身も気になってくるではないか。オレに白ブリ買ってくるということはだ、当然、朧にだって買ったんじゃねーの??
(おいおい、まさかファザコン拗らせてる30代の元奈落首領の下半身が、純白のブリーフに優しく包まれている…なんてことは…)
「まさか…アンタも?」
「…」
「頬を染めて照れるなぁあああ!!!オレはゼッテーはかねえぞ!オレは攘夷時代からトランクス派なんだよッ」
あれ?待てよ、そういえば…最近よく手拭いが干してあるなぁ~、とは思ってたけどアレって…。
しかもこの間…オレ…タオル取りに行くのがめんどくさくて、近くに干してあった手拭いを使…(自主規制)
「手拭いじゃなくて松陽の褌かよォオオオオーーーーー!!!!!」
・:*三☆・:*三☆・:*三☆
「オレに糖尿病寸前のまま半永久的に生きろってのかコノヤロー!」
松陽にオレの健康診断の結果を知られてしまった…。
よりによって診断結果を郵送するってどうなんだよ!本人に直接渡せよ、あのヤブ医者ッ
診断結果を片手に顔を曇らせる松陽。どうする…どうなる…どうしたら!!
「銀時…私の血、要りますか?」
「いらねーよ!変な気まわすなバカヤロー!!」
「しかしこの結果では…もう…」
口元をおおいオレから顔をそむけ、悲し気に俯く松陽。
ねぇ止めてよ。たかが糖尿病寸前なだけだよ?不治の病にでもなったみたいな反応止めてよ!!!やめろっつってんだろぉおおおお!!!
「私の血で糖尿病が治るかどうか、試したことがないので分かりませんが、試す価値はあると思います!」
「ねぇ、それって治らなかった場合、オレは半永久的に糖尿病寸前のまま生き続けるってこと!??」
それ酷くね!??
最悪だろッ
もう拷問だよッ
アルタナの力で治らないの!??今まで試した人がいないってことは、みんな健康な人ばっかだったの!??
「安心しろ。もしもの時は俺も先生から再び血を頂く。先生とお前の面倒は俺がみる」
「やめろよ、お前ら最悪だよ!!単なる糖尿病だよ、落ち着けよッ」
次回「アルタナの力は糖尿病には効かない」お楽しみに。
いや、ないない。
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