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万事屋に松陽先生と朧がいる話のつづき







「クーラーをつけましょう」

松陽のやつがクーラーを買ってくれた。

「もしかして夏の暑さに地味にキレてた??」
「さぁ…どうでしょう」

例の笑みでオレの部屋のクーラー取り付け作業を見守る松陽は、猛暑の中にあっても汗一つかいていない。しかしそれでもオレに何の相談もなく、ある日突然、和室にクーラーを自腹で購入し取り付けたということは、男三人で川の字で眠るという蒸し風呂状態の部屋に、実は密かに嫌気がさしていたのだろう。
実はオレも限界を感じていたのだ…。
タッパ175越えの男三人が、この猛暑の中にあって窓を開けただけの部屋に扇風機一台で夏を乗り越えようなんて、虫の良い話だったのだ。

なにより松陽のやつは川の字の真ん中である。
立場上、口には出せなかっただろうが両隣からの熱気と汗の臭い、さらに寝苦しさから募るイライラに耐えられなかったのだろう。
どんなに美形枠でも30間近のオッサン(もちろんオレのことだ)と、30代のオッサンと、600歳越えのジジイが押し込められた部屋である。間違ってもフローラルな香りなどするはずがない!!

朧が気付いていたかどうかは知らないが、松陽のやつがオレと朧の枕に消臭剤を振りかけていたことをオレは知っている。
さらに毎朝部屋に消臭剤を撒いていたこともオレは知っている。

(朧が知ったら泣くな…)

ま、とにかくだ、松陽のおかげでようやく万事屋にもクーラーという文明の利器がやってきたわけである!!
これで寝苦しい夜ともオサラバだぜ!!
ついでにオレの部屋の障子を開けておけば、続きの間である事務所の方にも涼しい空気が回ってくるから、1日24時間快適空間で今年の夏を過ごせるというワケだ!

ありがとう先生!!やっぱ持つべきものは金を持ってる師匠だなッ



…と、クーラーが取り付けられるまでオレは暢気に考えていた。
しかし実際はどうだ。
この家には神楽がいるのだ。神楽はあんなでも「女」だ。

神楽は言った「私もクーラーの効いた部屋で休みたいネ」と。

しかしだ、よく考えてみろ。クーラーの効いた部屋には男ばかり三人。

「あのなぁ神楽、おまえ一応女の子だろ。ダメだよ~、嫁入り前の女の子が、男と同じ部屋で寝たいだなんて」
「今までも銀ちゃんと寝てたことあるネ」
「いや、オレは良いんだよオレは。オレはお前の保護者だし、ガキに興味なんてねーから。けど…なぁ?」

と朧に話を振れば、「俺は別に構わんが」と返ってくる。

おいおい、お前に常識ってモンはないのか!?
出会って間もない男女が、同じ部屋で寝るなんてふしだらな!お父さん許しませんよッ

「松陽、アンタからもなんか言ってやれよ」
「私も別に構いませんよ」
「ほらみろ~、松陽も…って、えええええーーーーー!!!許可すんのかよッ」
「この猛暑の中、押入れで寝て熱中症になる方が問題だと思いますよ?確かに外聞は悪いですが、夏だけのことですし」

いや、でもさぁ、布団どこに敷くの?スペース的に四枚布団敷くのは苦しいだろ!すし詰め状態の部屋で本当にやってけんのオレたち…。
悪い予感しかしないんだが!?

(マジかよぉおおおおーーーー)



ところが悲劇はこれだけでは終わらなかった。なんと今日に限って新八のやつが万事屋に泊まっていくというのだ。

おいおい、オレの部屋に一体どうやって5人分の布団を敷くってんだ!!オレの部屋は四次元ポケットじゃねーんだぞッ

結局、夜は襖を開け事務所と和室に別れて眠ることになった。もちろん、新八と神楽が事務所である。

「なんだか修学旅行みたいですね!」
「みんなで寝るの楽しいアル!」

なーんでガキ共は言っているが、よく考えていただきたい。和室と事務所の二間を一台のクーラーで果たして効率的に冷やすことができるだろうか。答えはノーだ!

「なんだかこっちの部屋、暑くないですか?銀さん、もう少し温度設定下げてくださいよ」
「銀ちゃんたちばっか涼しくて狡いアル!!」

「バカヤロー!こっちの温度設定は25度になってんだよ。これ以上下げたらオレたちが寒くなっちまうだろっ」

事務所まで冷風が届くよう、風量は既に「強」である。
そもそもガキというのは無駄に暑がりなのだ。これ以上温度を下げられてはオレが風邪をひく!ってか、既に松陽は毛布を被っているし、朧のやつも多分アレ寒がってる…。
起きてるときならともかく、寝てるときに強風の25度はツライ!

しかしなおもギャイギャイ言い募るガキどもに、とうとう松陽が「部屋を換わりましょうか」と言い出すではないか。オレは一気に申し訳ない気持ちになり、「わりぃ…」と松陽に謝罪した。

「気にしないでください。こういう事には慣れていますから」

自分の布団を事務所の方に移し始める松陽は、「子供は暑がりですからね。忘れていました」と苦笑い気味だ。そういえばオレがガキの頃、扇風機なんて気の利いたものはまだなくて、夏の夜になると「あっちーーー!!暑くて眠れねぇ!!」と大騒ぎしていたんだった。
その度に松陽はオレが眠るまで団扇を仰いで風を送ってくれていたっけ…。

『全然涼しくねーよ、しょーよー!もっと!』
『はいはい…。どうですか?』
『ん…ちょっと涼しくなった』

なんか、大人になっても松陽には迷惑かけっぱなしだな、オレ…。情けねぇ。

オレが猛省している間にも松陽と朧は布団の移動を完了し、空いたスペースには神楽と新八が布団を敷いている。

「お前ら、もう大人しく寝ろよ。いいな」

「分かってます。松陽先生、朧さん、すいません我儘いっちゃって」
「ありがとアル!」

二人の言葉に松陽も朧も笑いながら「おやすみ」と返している。
しかしだ、これで終わるはずがないのが、このメンバーのいいところだ。

部屋を移って一時間程したころだろうか。松陽から声が上がったのだ。

「神楽ちゃんや新八君のいうとおり、この部屋すこし暑いですね…」

その言葉を受け、松陽に懐いている神楽が早速とばかりにリモコンに手を伸ばしピッピッと設定温度を2度下げたではないか。つまり和室に吹き荒れる風は強風23度!
寝てるときに23度の強風!
いい加減、オレは寒くなってきた…。

「あ…神楽ちゃん、いい感じです」と風を受けて微笑む松陽。
「直風だと身体が冷えませんか先生」と朧。
「神楽ちゃん、さすがに23度の強風はちょっと…。みんな風邪ひいちゃうよ」と新八。
「おいぃいい、もう寒すぎだろこの部屋!」とオレ。
「そうアルカ?私、全然平気ヨ」と神楽。

更に何事が操作する音が聞こえてくるではないか!!

「おい、神楽テメェいま温度さげただろ!!」とオレ。
「ちょっとこれは寒すぎますね…」と松陽。
「風量を弱にしたらどうだ」と朧。
「神楽ちゃん、めっちゃ寒いんだけど!」と新八。
「じゃぁコレでどうあるか?」と、また何事か暗闇の中、操作し始める神楽。

ハッキリ言って落ち着かない!落ち着けない!

「もう全然眠れねーよ!!おい、リモコン貸せ神楽!」
「いやアル!銀ちゃんに渡したら絶対25度にするネ。私はそれじゃ暑いアル」
「結局テメーはどこにいたって暑いんだろーが!」

オレと神楽の間で勃発したリモコン戦争に、間に挟まれた新八が「喧嘩は止めようよ二人とも」と仲裁に入るが、そんなことでこのイライラが落ち着くはずもない。

「いい加減リモコン渡せって神楽!おもちゃじゃねーんだぞッ」
「いやアル!私は真剣ネ!!」

そんなやり取りの中、とうとう松陽が「襖を閉めましょう。そうすれば和室の温度を25度にしても十二分涼しくなりますから」と言い出した。
ゲンコツじゃなくて、この妥協案!

アンタ…実は相当、暑さと寒さに弱かったんだな…。

この言葉に新八は心底驚いたようで、飛び起きて暗闇の中、松陽の居る方をみた。

「え、でもそれじゃあ松陽先生と朧さんはどうするんですか!?」
「扇風機がありますから大丈夫ですよ。朧と二人だけなら、三人の時より熱気も臭いも篭りませんから、それほど暑さも感じないでしょう」
「ダメです、クーラーは松陽先生が買われたものです!先生が使わないなら僕たちも使えませんっ」

しかしそのやり取りの間にもオレと神楽のリモコン戦争は続いており、ピッピ、ピッピとリモコンの操作音が止むことなくBGMのようになっていた。

「はい、25度!」
「させるカァアアア!!!20度!」
「風量弱!」
「ウガァアアア!!!!暑い!暑すぎルゥウウウ!はい、最強ッ」

まぁ、アレだよね。こんなこと続けてたら、アレだよね。松陽の買った最新式のクーラーもスト起こすよね。
そもそも松陽が買ったクーラーは、高機能センサーを多数搭載するもので学習機能までついている。人の位置や、部屋の間取り。さらには日射の加減などを検知する複数のセンサーを搭載し、さらにはセンサーがサーモグラフィーにより人の体温を検知する。これにより汗だくの火照った人間と身体の冷えている人間を見分け、それぞれに最適な温度の風を送るっているのだ。

ところがこの部屋の分布はどうだ?

20度推奨の馬鹿と、25度推奨のオレがいて、更には風量「中」を推奨するヤツもいれば完全に毛布を被っているやつまでいる。挙句の果てに神楽とオレのリモコン争奪戦である。
もうメチャクチャだ。

「アレ…??クーラーが反応しないネ」
「おい、壊れてんのかコレ」

「え、ちょっと何やったんですか二人とも!!貸してください」

もう後は分かるな?

音もなく起き出してきた松陽にオレと神楽はそろってゲンコツを食らい、そのまま安らかな眠りについた。要は気絶だ。

「新八君、クーラーのコンセント抜きましょうか?」
「は…はいぃいいいい!!!!ただいまッ」

「朧、窓を全部開けて、扇風機まわしましょう。『強』でお願いしますね」
「はい…」

こうしてオレたちのクーラー生活一日目は終わり、以後、クーラーのリモコンがオレたちの手に渡ることはなかった。



「なぁ松陽…コレ何度設定?」
「28度設定です」

「風量はなにアルカ…」
「風量は『弱』です」

なんてゆーか、わざわざ電気代使ってまで使うモンじゃないよね、クーラーって。ははは…

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