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マダラちゃんが妊娠するお話




兄者が自殺未遂をした。
切欠を作ったのはオレで、原因を作ったのはマダラだった。

前々からマダラに懸想していた兄者にほとほと呆れ果てたオレは「ならいっそのこと思いを伝えてみてはどうだ」といったのだ。
結果はオレの予想通り。兄者は見事マダラに振られて帰ってきた。

よしよし、これで兄者の目も覚めるだろう。とオレは思った。

しかし現実は違ったのだ。
マダラにプロポーズし付き合ってほしい旨を伝え、「それは無理だ」と断わられた兄者は、その日の内に自殺未遂を図った。
普通の怪我程度ではビクともしない兄者は、こともあろうに自らの手首を切り落とすことで自殺を図った。屋敷に漂う血生臭いにおいに気付き、オレが千手お抱えの医師を呼びに走った時には、兄者の部屋は一面血の海だった。
普段からやることが豪快な男だとは思っていたが、自殺未遂まで豪快だとは思ってもみなかった。

切り落とされた腕は兄者の先天的特異体質によりあっけなく元に戻ったが、オレが心に受けたダメージはでかかった。
オレは血液不足でこんこんと眠り込む兄者の横に座り込み、目頭を押さえながらマダラに告げた。

「こういうキチガイ染みたことは事はお前の専売特許だと思っていたのに…、まさか兄者がなぁ」

こうなったからには仕方がない。オレは渋々二人の交際を認めることにした。

「兄者を…まったく頼みたくはないが、よろしく頼む」
「ふざけんな!俺の意思は無視かッ」

悪態をつき、部屋の前で仁王立ちでがなり立てるマダラだったが、その胸の内は痛いほど分かっている。
マダラも兄者のことを憎からず思っているのだ。でなければ、オレが遣いを寄越す前から、息を切らせて千手邸に駆け付けるはずがない。

「今まで済まなかったな…」

オレの言葉にマダラは黙ったまま、そっぽを向いた。


・:*三☆・:*三☆・:*三☆

兄者とマダラが付き合い始めてどれだけが経っただろう。
二カ月は経っていたと思う。

オレはある異変に気づいてしまった。
まったく気づきたくもなかったし、まったく意味がわからなかったが、とにかく妙なことに気付いてしまったのだ…。

その日、オレたちは大掛かりな任務のため里外にでていた。火影となった兄者は別として、里の主立った実力者たちが顔を揃える近年まれにみる大仕事だったと記憶している。
そこで常のように自らの感知能力を使い軍の指揮をしていたオレの第六感が、今までにないチャクラを感知したのだ。

当初、敵の斥候でも軍に入り込んだのだろうと思っていたのだが、どうにもその気配がマダラのチャクラの近くから感じられる。

(これは一体…)

マダラの首を狙う何者かが入り込んだ可能性も当然否定できない。「うちはマダラ」の名は恐怖の別名であると同時に、怨嗟の象徴のような名なのだ。
なににせよ、感知されたチャクラは極々小さなもので、それこそ一般人かと思うほどに微弱なものであった。どうしたものか…と考えた末、オレは些末なことと切り捨て、あえてマダラにも告げなかった。

それがいけなかった。

平時、忍はチャクラなど練らない。
同様に、オレたち感知能力を持つものとて、平時においてチャクラの感知などしようとは思わない。

つまり…だ、いくら里随一の感知能力を持つオレであったとしても、他人の身体の異変になど気付きようがないのである。

そして、その大がかりな戦から、さらに一月が経過したある日、すべての謎は解明されることとなったのである。


・:*三☆・:*三☆・:*三☆

その日、朝からマダラの顔色は悪かった。
正確には、ここ一二週間、マダラは体調を崩し、兄者がマダラの体調を気遣う日々が続いていた。

そしてとうとう、その日の午前中。巳の刻半頃だっただろうか…。
突如としてマダラが目を通していた書類を放り出し、口元を押さえて部屋から駆け出して行ったのだ。
兄者は慣れた様子で「大丈夫か、マダラ」とあとを追いかけ部屋を出ていったが、一人、執務室に取り残されたオレは茫然自失だ。

(こんなに体調が悪いとはな…)

オレは普段、兄者から、のろけ話のついでとばかりにマダラの体調が思わしくないことを聞いていたが、実際に症状を目にしたのはこれが初めてだった。

うちはマダラも人の子だったか。と気を取り直し、マダラが放り出した書類を拾い上げるオレ。
その日、マダラと兄者は執務室には帰ってこず、その事がマダラの体調の悪さを物語っている様だった。

翌日、うちは邸に泊まり込み一晩中マダラに付き添っていたという兄者が、申し訳なさそうに謝ってきた。

「昨日はすまなかったの…」
「マダラは休みか?」
「あぁ…朝から体調が悪くての。本人は風邪だといっておるのだが、心配ぞ…」

確かに心配だ。オレは素直にそう思った。オレの記憶が確かなら、マダラはかれこれ二週間以上体調を崩している。

「風邪にしては長い。一度、医者に診せた方がいいんじゃないか?」

オレの言葉に兄者は驚いたようにオレの顔を凝視し、「マダラを心配しておるのぞ??」と…。

「兄者はオレをなんだと思っている。マダラのことを良く思っていないとはいえ、いくらなんでも病の者に追い打ちをかけるような真似などせんぞ」

不機嫌を顕わにそう言ってやれば、兄者は「なんだかんだ言いつつ、扉間は優しいのぞ~」と嬉しそうに笑いながらオレの肩を叩いてきた。能天気にも程がある。

本当はマダラなどどうでもよいのだ。
だがマダラにもしものことがあれば、兄者はまた平気でキチガイ染みたことをするだろう。それがオレにどれほどのショックを与えるのかも知らずに、兄者はマダラのためにその身を投げ出すのだ。

始まりは四人兄弟だった。
今ではたった二人きりの兄弟だ。

兄者を失うということは、家族を失うということなのだ。

その辛さが兄者には分からないのだろうか?
いや、あるいは、オレの方こそ分かっていないのだろうか…。

家族以外の大切なものを作る機会を、オレはオレ自身の手で永遠に闇に葬ってしまったから。

(イズナが生きていたら、オレの人生も、何かが変わっていたのだろうか…兄者のように)


・:*三☆・:*三☆・:*三☆

医者嫌いのマダラを説き伏せ、兄者が医者にマダラを診せたのは、それから二日後のことだった。

一人目の医者はうちはお抱えの者で、マダラを幼いころから知っているらしい。一通りマダラの診察を終えると一言「異常なし」といったそうだ。
二人目の医者は千手お抱えの者で、兄者もオレも幼いころから世話になっていた。医者は初めての患者ということもあり、隅々までマダラを触診しチャクラの流れも確認し、更には問診まで行った末に、やはり「異常はありませんな」といった。
三人目はうちはの忍で、長らく戦場では救護班のような役割を果たしている者だった。最初にマダラの身体にある古傷を隅々まで調べた後、下痢の有無を尋ね、「風邪でも食中毒でもないことだけは確かです」と答えたそうだ。
四人目は千手の忍で、これまた長らく戦場で救護班の役割を果たし、特にうちはの扱う火遁で負った傷の治療では、右に出る者はいない程の治癒力を持った者だった。まずマダラの前に座り顔色を確認した後、背後に回ったところでマダラに殴り飛ばされ気絶したそうだ。

「で、原因はわからんのか?」
「そうなのぞ…医者もダメ、救護の者もダメとなると、あとは誰に診せたらいいのか…」

そこでオレはふと、一月前、戦場で感じた不思議なチャクラのことを思い出した。

「まさかとは思うが、何かに憑かれているのではないだろうな…」
「憑かれるとは…つまり、物の怪や幽霊の類に取り憑かれておるということぞ?」
「そうだ。実はな、一月前の戦場で妙なチャクラを感知したのだ」

ここで話がおかしな方向へ行ったことはいうまでもない。

オレも反省しているし、兄者も反省している。

「テメー等は、この俺を狐憑きか何かと思ってんのか!??」

狐憑きに吐き気と倦怠感があるのか、と尋ねられれば大抵の者は「否」と答えるだろう。しかしこの時オレたちは本気で信じていたのだ。

「どこへ連れていくのかと思えば、医者の次は神社か!!ふざけんなッ」

護摩を焚き、経を読み上げ、最後に滝で身を清める段階でマダラはブチ切れた。

「申し訳ないのぞ…」
「非科学的だったということだけは認める」

二人ともマダラにこってり絞られ、この線もほどなく消えた。

しかし…だ、オレは怒り狂うマダラのチャクラの中に、あってはならないものを感知し、マダラの体調不良の理由に思い至ってしまったのだった。

(まさか、とは思うが…そんな、馬鹿な…)

あぁ、誰か、嘘だと言ってくれ…!!

現実を直視したくないオレは、自分が感知したものから目をそらし口を噤むのだった。






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