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マダラちゃんが妊娠するお話のつづき





「恋は人を変える」というが、この世の理や、果ては自然の摂理までをも変えてしまうものなのだろうか…。
ということは、イズナも生きていれば、オレの子を身籠ったりしたのだろうか。

マダラを南賀ノ神社へ連れていき御祓いをした日から更に半月が経った頃、兄者は満面の笑みでオレに告げてきた。

「子ができたのぞ!!」

聞きたくなかった!!!
その言葉だけは兄者の口からは聞きたくなかったッ

精神的ショックを沈痛な面持ちでやり過ごし、オレは厳かに口を開いた。

「子ができたことを知らなかったのは、兄者とマダラだけだ」
「ぞ!!?」

驚く兄者に、逆に問い質したいものだ。日々大きく膨れていくマダラの腹をどう思っていたのか、と!

オレなんて妊娠2カ月目の時に気付いていた。正確に認識できたのは妊娠3カ月目だが、おそらく誰よりも早くマダラの妊娠に気づいていたであろうと自負している。
だが敢えて黙っていた。

しかし元々細身だったこともあり、日を追うごとに胴回りだけが太ってゆくマダラに、里内の女たちが「マダラ様、妊娠してるんじゃない?」と囁き始め、4カ月前に起きた兄者の自殺未遂と相まって、実は「うちはマダラ妊娠疑惑」は収拾がつかない状態になっていたのだ。

「兄者の手前、誰も何もいわなかったが、裏ではこの話題で持ちきりだぞ」
「そうなのぞ!??」
「『そうなのぞ~!?』ではない!!いったい、何がどうなって、男のマダラが、兄者の子を身籠ったのか!オレにわかるように説明してくれッ」

オレは兄者に泣きつかんばかりの勢いで、兄者の胸倉を掴み上げた。

甥っ子が生まれるのは正直うれしい!
それが例え、誰の腹から生まれようと、兄者の子であることに違いはない!

しかしだ、マダラは男だ!

なにがどうなっているのか、それが問題なのだッ

詰め寄るオレに、兄者は気圧されながらも呟いた。

「ヤルことヤッたら子はできるのぞ…」

兄者の言葉に、オレはすべてを悟った。
これが木遁忍術の副作用というものなのか…と。

馬鹿も極めれば自然の摂理を変えることができるらしい。

その日一日、オレは乾いた笑いを止めることができなかった。ははは、ははははは…あははは、はっはっは…はぁ


・:*三☆・:*三☆・:*三☆

日に日に大きくなってゆく腹を擦りながらマダラが一つ息を吐いた。

「ふぅ…さすがにしんどいな」

兄者も兄者なら、マダラもまたマダラであった。

通常、妊娠中はチャクラの流れに乱れが生じ、どれ程の手練れであってもそれを気力と根性だけでやり過ごすことはできない。しかしマダラはこの4カ月あまり、「何か変だな」と思いつつ、チャクラを練っていたというのだ。

『体調も優れなかったし、それが原因かと思っていた…。まさか子が出来ていたとは』

戸惑うような表情を見せつつも、特にいつもと変わらぬ様子のマダラに扉間は詰め寄ったものだ。

『他に言うことはないのか!?』
『そうはいっても、俺の腹に子がいることだけは事実だからな…』

腹を擦りながらそういうマダラも実は現状をうまく理解していなかったのかもしれない。つわりの時期が過ぎ、マダラの体調も落ち着き、日に日に腹が大きくなってきた妊娠四ヶ月目。体調不良が治り、よかったよかった…と兄者と二人で木の葉商店街を歩いていたところ、棺桶に片足を突っ込んだような産婆に呼び止められ妊娠が発覚したのである。

その産婆はこの世の終わりでも見るかのような目でマダラを見据え、ハッキリとこういったそうだ。

『おぬし、子を孕んでおるぞっ』

高齢の産婆にとってはまさに「この世の終わり」であろう。男が子を妊娠するなど、これまで何百人と赤子を取り上げてきた産婆でさえ経験のない未曽有の出来事である。
恐れおののくように、小さく、しかし確かな膨らみを持つマダラの腹にしわがれた手を当て、そこに宿る小さなチャクラを感知し老婆は息絶えたそうだ。

もとい、気を失ったそうだ。

『おぉおおぉおおおーーーーーこ、これはぁああ…、!!』

『お、おいババア!!しっかりしろっ』
『しっかりするのぞ、誰ぞ、医者を!』

そして老婆に付き添い、兄者とマダラは医者のもとへ…。しかしそこでもまた初老の医師に奇異の目を向けられ、マダラは腹を触診され、正式に妊娠が告げられたのであった。

『こ、これは…!!そんな、馬鹿なッ』

『なんなんだ、さっきからテメー等は!』
『マダラ…まさかとは思うが、その腹…赤子がおるのではないのか??』

おめでとうございます。妊娠四カ月です。

って、ふざけんな!!!

かくして、妊娠発覚を機に、マダラは自宅から千手邸へと居を移し、今朝もオレと同じ食卓で朝食の秋刀魚をつつきながら腹をさすっている。

「大丈夫なのぞ?もう一人の身体ではないのだから、無理をしてはいかんぞ、マダラ」
「大丈夫だ。ちょっと腹が邪魔で、飯が食いにくいだけだ」

「なに!?それはいかん!!マダラには丈夫な子を産んでもらわねばならぬからな~」と、兄者がマダラの茶碗を取り上げ、食べさせ始める。するとマダラが「やめろ、扉間がいるだろう」と兄者を押し留める。

こんな形でマダラに気を使われる日がくるとはな!!!

オレは目頭を押さえながら一言「オレのことは気にするな」と視線を兄者たちから逸らしたのであった。


・:*三☆・:*三☆・:*三☆

チャクラを練ることが本格的に困難になってから、マダラは日に日に大きく育ってゆく腹を抱えながら事務仕事に精を出していた。妊娠発覚以降、マダラには事務仕事以外の任務は一切与えられていない。千手邸と火影の執務室を往復するだけの日々が始まったのだ。

付け加えて、マダラの懐妊は公表されていない。

というか、公表のしようがない。

だから誰にも何も言わず押し通すことにした。
子が出来たからといって男同士で祝言を挙げるわけにもいかず、かといって千手頭首であり火影である千手柱間の初めての子を懐妊したマダラを放置するわけにもいかず、マダラは宙ぶらりんな状態のまま兄者の子を腹に抱え「うちは頭首」で「火影の相談役」の「最近太り気味な、うちはマダラ」として生活していた。

しかしオレと同じ感知タイプや、察しのいい者は、既にマダラの身に何が起こっているのか気付いていた。
うちはマダラ妊娠疑惑は最早「疑惑」ではなく、確定事項に変わったのだ。
だが公表されていないため誰も何も言わない。

ところが兄者はあの日以来ご機嫌で、たまに人からその理由について尋ねられると口を滑らせては「子が出来たのぞ~」とデレデレ話している。
執務室に行けば火影の隣には常にマダラがおり、その腹が日に日に大きくなっていく。
加えて、千手の者ならば兄者がマダラに昔からご執心であることは誰もが知っていた。そして千手の者でなくとも、火影のマダラ贔屓は誰もが知っていた。

誰も何も言わないが、「うちはマダラが火影様の子を身籠った」という新たな噂が出回るのに、そう時間はかからなかった。


・:*三☆・:*三☆・:*三☆

妊娠五ヶ月目になると、とうとうささすがのマダラもチャクラを練ることが出来なくなった。医師が予想していたよりも母体へ及ぼす影響が大きいらしい。
当然だ。腹の中には千手とうちは両方の血を受け継ぐ子供が息づいているのだ。

その子供は木遁使いの父を持ち、最恐の写輪眼を持つ者の血を受け継ぎ生まれてくる。

兄者の初めての子は生まれる前から「最強」の名を欲しいままにしていた。
そして生まれる前からこのオレの愛情をも独占していた。

(初めての甥っ子か…)

こういっては驚くかもしれないが、兄者には今まで一度も子が出来た試しがない。

兄者も年齢的に言えば、子の一人や二人いてもおかしくはない。ましてや戦国の世を生き抜いてきた忍だ。通常であれば、元服とともに妻を娶るなり、女のもとへ通い子の一人でも作っていてしかるべきなのだが、兄者には子が出来なかった。
どんなに女の元に通っても子が出来なかった。
誰と睦み合っても子が出来なかった。

生前、父である仏間は言ったものである。

『強すぎる力をもって生まれたが故の宿命なのかもしれぬ』

要は、兄者に子種がないと断言していたのだ。
であるからして、兄者には妻もおらず子もおらず、里創設後はマダラ一筋で通っていた女とも疎遠になり、とうとうどこかで頭をぶつけたのか「マダラと付き合いたい」といいだし、あとは見ての通りだ。

(父上が知ったら喜びそうだが、子がうちはの腹から生まれると知ったら渋い顔をするのだろうな…)

オレは青く澄んだ秋の空を眺めながら、いまはまだマダラの腹の中にいる甥っ子に思いを馳せた。
最近人から、「表情が柔らかくなった」といわれるのだが、それもそのはずだ。

(あと五ヶ月後には生まれるのか…)

生まれてくるのは兄者の子供で、オレの甥っ子だ。嬉しくないわけがない!まるで我が事のように喜んでいる。

緩み始めた頬を引き締め、オレは再び目の前の巻物へ視線を移した。

甥っ子の名は、もう決まっているのだろうか…。

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