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度が過ぎた博愛主義ゆえに大切な者を失う柱間の話。

俺は全てのものを平等に愛している。
だがなぜだろう…。
失えないと思う者ばかりが、俺の両手から滑り落ち、いなくなってしまうのだ。


・:*三☆・:*三☆・:*三☆


人種・宗教・風習などの違いをこえ、俺は「人」というものを愛している。
人は誰でも分け隔てなく互いに協力し合うべきだと考えているし、すべての人間が互いを傷つけ合うことなく、憎み合うことなく、平和に平等に暮らせる世界…そんな世界を夢見ていた。

だが夢見るだけでは世界はなにも変わらない。
願うだけでも、思うだけでも、世界は変わらない。
だからこそ、マダラとの出会いは俺にとって天啓だったのだ。

俺はマダラに出会ったことで、自らの考えに自信を持ち、夢を実現させるため、前に進むことができたのだから。
同じ世界を見て語り合える「マダラ」という存在を得たからこそ、俺はいまの「俺」になれたのだ。

マダラとの出会いと別れを通じ、俺は大きく成長した。
自分の夢をただ一人胸の中に仕舞い込み、誰にも理解されるはずがないとどこかで孤独を感じていた幼かった少年は、やがて族長となり、みなに頼られる存在となった。
終わりの見えない戦国の世で、それでも夢を信じ、平和へと続く道に山積する問題をひとつひとつ解決してゆくことは、俺に未来への確信を与えてくれた。

(他の一族とも手を取り合えるのなら、うちは一族ともやがては手を取り合える日がくるはずだ)

長く続く戦の中で、千手を頼り身を寄せる者たちを受け入れながら俺は新しい時代が近くまで来ていることを感じていた。
もっとも、扉間や周りの者たちには「誰にでも良い顔をするな」と叱られることもあったが、「平等」を目指す以上、みなを受け入れ、その言葉に耳を傾けることは当然のことだ。
多少の無理難題も夢のためと思えば、笑って許すことができた。

すべては幼いあの日、マダラと語り合ったあの夢へと繋がっている。
みなが「平和」に「平等」に暮らせる、争いのない場所。

もちろん、その一方で俺のやり方に問題があるという指摘にも一理あった。
俺のやり方は、悪く言えば相手を甘やかしている。相手を甘やかし続けることで、俺を頼りにし「千手柱間」という存在に依存する者を増やしてしまったのだ。
そしてそれは「木ノ葉」とい夢の里ができた頃、一気に噴出し目に見える形となって現れた。
その犠牲となったのがうちは一族であり、マダラである…。

俺はすべてのものの信頼を裏切らないため、全力を尽くしたつもりだ。「平和」で「平等」な世界を目指す以上、「特別」は存在してはならない。だからこそ、俺はすべての者に「平等」に接した。
だがどうしても、「マダラ」と「うちは」に里人たちの視線が集まってしまう。
里人曰く「うちはは千手柱間に贔屓されている」というのだ。

俺はあくまで物の道理に従い、同盟を結び里の礎をともに築いた一族として「うちは」を重んじていた。個人的な感情ではなく政策としてうちはを重んじていたつもりだ。
そして実際、彼らは里のためによく働いてくれていた。
にもかかわらず、どれだけ「平等」であろうとも、周囲の人間がそれを理解することは終ぞなかった。


思えば俺は、あまりにも多くの愛を振りまき過ぎていたのかもしれない。マダラが俺と距離を取り始めたとき、俺はそのことに気付くべきだったのだ。
だが俺はただ、去っていこうとするマダラを引き留めるばかりで、自らの行いを省みることはなかった。

いまなら解る。
誰にも分け隔てなく愛情を注ぐ事で成り立っていた俺の世界は、実は多くの矛盾を孕み、一番大切な者を傷付けていたのだ。

分け隔てなく愛情を注ぐこと、それは誰か一人を不安にさせたり、嫌な思いをさせていては成り立たない。他の誰かを助ける為に、他の誰かを犠牲にすることはおかしいのだ。

誰か一人でも不幸にしてしまえば、それは「平等」でも「平和」でもない。分け隔てなく愛情を注いだのではなく、「平等」という言葉のもとに、無責任な愛を振りまいただけのこと。
真の平和を求めるのなら、まずは目の前で苦しんでいるマダラをこそ、救ってやるべきだったのだ!

かつてマダラが河原で俺の命を救おうとしたように…。
俺がマダラの命を救おうとしたように。
目の前の存在を救ってやるべきだったのだ!


俺は愛を振りまき過ぎた。
結果、マダラは新しく見つけた「平和」を求め旅立っていった。

俺と木ノ葉を残して…。


・:*三☆・:*三☆・:*三☆


かつて扉間はいった。「兄者の博愛は度を越しているのだ」と。
マダラもいった。「すべての者は平等ではない。皆がお前と同じように思えるわけではない」と。

俺は一体どこで間違えた?
すべての人間を信じ、尊重し、慈しみ思いやる。そのことが間違っていたのか?
俺はただ、みなの中にある優しさを信じ、過去の遺恨を許しあい、共に手を取り暮らせる平和な里を望んだだけだ。
それがこれほどまでに困難なことだったとは…。

思い出すのは、マダラが俺との接触を頑なに拒むあの仕草だ。並んで歩くその指先に触れるだけで距離を取る。

(俺はお前にその理由を問うべきだったのか?マダラよ…)

平和なはずの里に、俺が、俺自身の手で争いの種を蒔いてしまったのだと気づがいたのは、俺が二度目に死ぬ、その時だった…。

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