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松下村塾《晋助編》
オムニバス形式の晋→松のお話。



恋をして「さよなら」の一言が悲しくなった。

銀時は絶対に「さよなら」はいわない。だって先生と一緒に暮らしているから。

初めて人を羨ましいと思った。




先生のことが好きだ。
きっと桂も先生のことが好きだろう。もちろん普段憎まれ口を叩いている銀時だって好きなはずだ。でなかったらアイツが先生と一緒になんているはずがない。
でもそうじゃなくて、俺の「好き」は桂や銀時の「好き」とは違っていて、胸にもやもやくる「好き」なのだ。

銀時が先生と長らく二人きりで旅をしていたと知って銀時が憎らしく思えた。
銀時が先生と一つ屋根の下で暮らしていることが腹立たしく思えた。
銀時には身寄りがなく先生が銀時を引き取って育てたのだと知った時、なぜ先生が銀時を引き取ったのか、その理由が知りたくなった。銀時だから引き取ったのか、身寄りのない子供だから引き取ったのか、それは俺にとってとても重要な部分だからだ。

二人の間には二人にしか分からない空気がある。
たしかに先生は俺たちに平等で分け隔てなく接してくれる。でも銀時に対する先生の態度はやっぱり違っていて、先生にとって銀時は特別なのだと思うとどうしようもなく銀時の存在が嫉ましく思えた。

こんなに誰かのことを苦々しく思うなんて初めてだ。
誰かのようになりたいなんて思ったこともなかったのに、いまは銀時が羨ましくて仕方がない。

アイツが俺より強いのも腹が立つ。

でも俺が銀時になれないことは分かっているから、だから今日も俺は先生の前では良い子になるし、銀時には負けたくねぇし、突っかかるし、ガキみてぇなことして先生に叱られたりして、でも毎日なんやかんや楽しくて…。

でもやっぱり先生の一番になりたいし、帰りたくねぇし。

「さよなら」は悲しい。




「高杉はいつも講義が終わると元気がなくなるな。家に帰りたくないのか?」
「別に…」

講義後ギリギリまで自主練で居座り続けた村塾から桂と二人、家路につく。
夕日に照らされ長く伸びた二つの影が、より一層、俺の胸を締め付ける。

今頃、銀時は先生の作った夕食を、先生と二人で食べているのだろう。
羨ましくて嫉ましくて、悲しい。

俺のいない時間を、二人は村塾でどうやって過ごしているのだろう…。
「さよなら」がなくなればいいのに。

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