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現世で仕事頑張りすぎて来世で残念なことになった扉間先生と、来世でもエリートコースを歩んでいる弟子たちのお話。






「輪廻転生」なんて言葉がこの世にはあるわけだが、さて、この言葉…一体誰が初めに言い出したんだ??
誰かが実際に体験して生まれた言葉なのか?
だとしたら、それは一体、どこのどいつなんだ?

しかし少なくともオレ、猿飛 蒜山は胸を張ってこういえる!

「この世には本当に輪廻転生が存在する」と!!


・:*三☆・:*三☆・:*三☆

昨今の小学生といえば塾通いは当たり前。ましてエリート養成学校のような有名私立小学校ともなれば、学校帰りに通う塾はステータスともいえる。そして当然、通う塾のレベルで、その人間の評価が決まるといっても言い。
授業料だけで一般家庭の年収を超えるエリート小学校へ通い、月謝だけでこれまた一般家庭の月収の半分以上を必要とする人気有名講師が集まるエリートな塾に通う事。それが今のオレの人生だ。

きっとこれからもそんなエリートな学校やエリートな塾へ通い、エリートな人生を送っていくのだろう。そして超有名外資系企業か、あるいは上級国家公務員あたりになり、テキトーな年齢で親の眼鏡にかなったそれなりの家柄の美人と結婚し、子供ができ、エリートらしく順当に出世し、やがて子供が大人になり、孫ができ、定年が来て、そして死ぬのだ。
あぁ…自分が心安らかな表情で棺桶に納まる姿までオレには想像できてしまう!
なんて悲しいんだ!!
だがオレが、なによりも、なによりも、悲しいのは…ッ

「オレなんてかーちゃんがビワコだぞ、ビワコ!元嫁だぞ!!想像つくか!?」

塾帰り、オレはいつものメンバーと少しお高めなファミレスに入り、かなり遅めの夕食を口にしながら涙した。
そう…、オレの今生での母親は「猿飛びわこ」つまりそれは、前世のオレの妻なのだ!!

オレの心からの叫びに、しかし志村ダンZO(笑えるが今生ではこれがダンゾウの名前なのだ)はしらけた様子で和牛ハンバークに特性デミグラスソースを絡めながら頬張り、「一生独身だった俺には関係ない話だな…。それより、サッサと食って今週のジャンプ買ってこようぜ」と話題を変えてくるではないか!

なんという非常さ!!
貴様には血も涙もないのか!??

激しい憤りを感じつつも空腹には耐えられない。オレも負けじと切り分けた和牛ハンバーグに、これまた特性デミグラスソースをたっぷり絡め、口へと放り込み…

「おまえはむかしっからつめてぇーんだよ!そんなんだからけっこんできねーし、なまえだってダンZOになるんだよっ」
「おい、きたねぇーな!俺の目の前で口の中の物を飛ばしながら喋るんじゃねーよ、サルッ」

既にお察しのこととは思うが、ご覧のとおり、オレたちは今生でも相変わらずだ。
家柄も学力も運動能力も、加えて選ぶメニューまで被っている。被っていないのは見た目と性格くらいなものではないだろうか?
そもそもコイツとは前世では初恋の相手まで被っていたのだ。

「ビワコ」それはオレとダンゾウの最初のターニングポイントでもあったのだ…。

しかし中身が「大人」でも、身体が「子供」だと、どうにも行動までもが身体の方に傾いてしまう。昔なら互いに無言のまま睨みあい、互いに一歩も引かぬまま顔を逸らし、背をそむけ、わだかまりだけが澱のように心の奥底にたまっていったのだが、今はどうだ?

互いに同じメニューを頼んだがために、いつの間にかオレとダンゾウは早食い競争をしている。夕飯を先に食べ終わった方が勝ちという、実に馬鹿らしい事に真剣に取り組み、喉を詰まらせ水をがぶ飲みしている。メニューが被ったために意地になり、ダンゾウはご飯を大盛りにし、オレは追加でコーンスープとポテトフライを頼むことによって差別化を図ろうとして自爆している。

実に平和だ。過去の確執が嘘のように、オレたちはガキだった。

「完敗だ…。お前の勝ちだ、ファミレスよ。オレたちの腹は…、もう限界だッ」
「くそっ…飯大盛りになんてするんじゃなかった。甘く見てたぜ、馬鹿に感化された…うぐぅ」

オレとダンゾウが互いに現実を受け入れ、ファミレスに負けたことを受け入れた丁度その時、それまでダンゾウの隣でミスジステーキを優雅に食べていた美少女張りの美少年が遠くを見つめながら呟いた。

「扉間先生…今頃どうしてるんだろうね」

その美少年は名を、団扇 鑑といい、この国を代表する舞踊の家元の一人息子である。千年以上の歴史を誇る由緒正しい家柄であると同時に、世界規模で展開する舞踏教室から得る収入も相まって、今生においてオレとダンゾウの上を行く存在でもある。
まぁ、大体お察しの通り、オレの家はそんなに古くはないし爺さんの代で事業が成功して上流階級の仲間入りを果たした口だ。ダンゾウの方は…というと、「ダンZO」の名前から察する通り、ちょっと複雑な生まれだが金とコネには苦労しない家に生まれていた。

ところどころ前世と被る部分があり、オレは「なるほど、輪廻転生恐るべし!」と思わされることしばしばである。

って、オレたちのことはどうでもいいとして、先生だ!

今もオレたちの胸に刻まれている先生の教え。…と、「卑劣」の二文字。
いままで誰も口には出さなかったが、みなそれぞれ先生に対しては思うところがあるというのが実情だ。
先生を「師」とし、ともに扉間小隊に所属したオレたちだが、その人生は全員が納得できるものではなかった。かくいうオレだとて、先生から引き継いだ「火影」という職務。そして「火の意思」に生涯思い悩み、迷う日々であった。

ところがどういうわけだか、今夜に限ってカガミの口から扉間先生の名がでた。
そしてオレも、あえて話題を逸らすことなくカガミの言葉に応じた。
もちろんダンゾウだって乗ってきた。

本当に不思議な夜だった。

それはオレたち三人が有名私立小学校付属のお受験専門幼稚園で出会った4歳のあの日から、いま、今日という日に至るまで、誰もが無意識に回避し続けた名だったのだ。
オレたちは人生10年目にして現実に立ち向かおうとしていた。

だがオレたちはいかんせん若かった。
中身こそ老人二人と青年一人だったが、身体は10歳の子供だった。ファミレスで夕食をとりながら、親の迎えや、使用人の迎えを待つくらいには若かった。

夜の10時といえば、10歳児にとっては真夜中も同じ!
オレたちのテンションは最高潮に達し…

「ベンチャー企業の社長!」
「研究機関の主任」
「悪の組織のボスとか!」

今生の先生も、前世同様バリバリ働いているのだろう…と、オレたちは当然のように考えていた。
オレとダンゾウはカッコイイ先生を想像したが、カガミの想像した先生は悪人で、オレとダンゾウはカガミに突っ込みを入れながらもゲラゲラと声を上げて笑った。
だって先生には「卑の意思」があるのだ。
ついたあだ名だって「卑劣様」だった。

昔は腹を立てた先生の不名誉な通り名も、今のオレたちには笑いの種だ。

本当にいい夜だった。
一切のわだかまりを捨て、オレたちは心から10歳という年齢を謳歌した。



【輪廻転生】仏教用語の一つで、生き物が絶え間なく生死を繰り返すことを指す。六道のいずれかに生まれ変わり、死に代わりすることである。
ちなみにインドにおいて「業」の思想と一体となって発達した考えらしい。

さて、ならば扉間先生の今生とは、果たしてどのようなものなのだろうか…。



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