忍者ブログ
<< 2024 / 09 >>
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30
[ 3367 ] [ 3366 ] [ 3365 ] [ 3364 ] [ 3362 ] [ 3360 ] [ 3359 ] [ 3358 ] [ 3357 ] [ 3356 ] [ 3354 ]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

再び妊婦マダラちゃんのターン__(⌒(_'ω' )_





うちは邸に家族総出で引っ越してきて二日。
それは同時に、木の葉の里長が住む千手邸が、もぬけの殻になって二日が経過したことを意味する。

こんなことで本当にいいのだろうか…。



「そういえば…誰にも引っ越したことを知らせておらんのぞ~」

引越し時、バタバタしていて不在である旨の張り紙ひとつ残してきていないことに兄者とオレが気付いたのは、朝食の席でのことだった。

「あまりに忙しなかったからな…オレも失念していた。仕方ない、今日中に暇を見て、門扉に貼り紙をしておこう」
「おぉ、すまんの扉間!頼んだぞ」

眉を顰めつつ張り紙の文面を考えるオレとは対照的に、兄者は実に機嫌がいい。
おそらく初めて口にするうちはの食事がいたく気に入ったのだろう。こういった辺り、兄者はとても分かり易いのだ。一方のオレは…といえば、「まぁ、可もなく不可もなく」といったところだろうか。
ここ二日、出される食事に文句はつけていない。

うちは邸で振る舞われる食事は、千手のそれとは明らかに違い、肉食であった。
今更ではあるが、マダラはよく文句もいわずオレの作った草食料理を食べていたものだと思わされる。
そもそも、「千手」と「うちは」は誰が見ても間違えようがないほどに身体的特徴がはっきりしているが、まさか食に関しても、ここまではっきりした違いがあったとは夢にも思わなかった。

(明らかに造血を目的とした肉料理の数々だな…)

味付けもはっきりしており、薄味の千手とは漬物の味一つとっても違う。
しかし、さしもの「うちは」も肉ばかりを食べているわけではなく、しっかり野菜料理も交えつつの一汁三菜の膳であった。

とはいえ、やはり随所に顔を出す「肉」が多少気になる。
こういった肉食系の食事も、うちはの攻撃的な性格を生み出す要因の一つなのではないかと思えて仕方がない。そんなことを考えつつ食事をするオレとは違い、兄者の方は、元来、食に拘りがないせいかバクバクといつも通りの食いっぷりである。

いや、もしかしたらいつも以上の食いっぷりかもしれない。

たしかに、濃い味付けの食事は白米に合う。

これだけはオレも認めよう。正直、白米は千手の料理より、うちはの料理の方が進む。だがそれはどうやら千手の人間に限った感想らしい。給仕にやってきたうちはの女は、兄者の食いっぷりに驚いた顔をして、仕舞にはクスクスと笑い出してしまったのだ。

「兄者…もう少し控えめに…」
「いやぁ~美味い!!うちはの食事はうまいのぉー、朝から三膳は軽くいけるな!」

兄者の差し出した空の碗を受け取りながら、器量の良いうちはの女は笑いながら「昨日もそう仰ってましたよ」と嬉しそうに碗に白米を盛っている。

「こんなに料理上手で美人なら引く手数多ぞ~!毎朝これが食せる男が羨ましいのぞ」

女がどう思っているのかは知らないが、兄者のこれは本気の言葉だ。兄者は基本、嘘がつけない上に他人を持ち上げることができない。良くも悪くも「正直」なのだ。
そしてオレもまた嘘がつけない男であった。

兄者の言葉に「もう結婚しています」と、ふふ…と笑みながら碗を渡す女に「切り損なった漬物が二枚連なっていたこと以外は、今日の飯も悪くなかった」と伝え、オレは手を合わせ、席を立つのだった。


・:*三☆・:*三☆・:*三☆

慣れない枕のせいか、それとも見知らぬ天井のせいか、殺気も感じない静かな環境であるというのに、うちは邸に移り住んでから起床の時間が1時間ほど早くなってしまった。
やはり数年前まで敵として殺しあった一族が多く住む住宅街にきてしまったためであろうか。寝つきは悪くないのだが、無意味に朝が早くなった。

とはいえ、まだ三日目なのだがな!

些細なことに思い悩みつつ、出勤までの貴重な余暇を利用し、オレは千手邸の門扉に貼る張り紙を書き上げるべく文机に向かっていた。
本来ならばこういった時間を有効活用し、イズナの世話をするのだが、今は兄者がイズナを連れてマダラの寝室へ顔を出している最中であった。

正直、ここに越してきて良かったのか悪かったのか…。

ヒカク曰く「体調の思わしくないときこそ、慣れ親しんだ身体に馴染む食事を摂り、心身ともに寛ぐべきなのです」とのことだが、味付けの濃いうちはの食事は、現在のマダラには不評だったらしく三日続けて朝食を摂らず眠り続けている有様だ。

(オレの作った薄味の料理のときの方が、今のマダラには食べやすいと思うがな…)

そもそも、イズナの時だとてオレの料理を食べてマダラは生きていたのだ。いうなれば、イズナを育てたのはオレの料理ということになる!その後もなんやかんやでマダラはオレの料理を食べてイズナに乳をやっていたのだから、イズナの血肉を作ったのは、まさにオレの料理と言える。

つまり千手の料理こそがイズナを作ったのだ!!

(越してきたのはやはり間違いだったな…)

考えれば考えるほど越してきた理由が分からなくなる。
大体、「里帰り」といっても、マダラはイズナを亡くしてから独り身の一人暮らしで使用人すら雇っていなかったというのだから、帰る意味もないだろう。加えて、一族の連中とも距離を取っていたマダラの邸は「族長」とは名ばかりで、人の寄り付かない屋敷であったという話だ。

里が出来、一族単位で移り住んだとはいっても、一族ごとに区画整理することを嫌がった兄者が各々好きな場所に家を建てるよう通達していたため、住宅地は思いの外、いろいろな一族が入り混じっている。
中には各一族の情報収集も兼ね、わざと族長宅の近くに家を建てる者たちもおり、例にもれず、マダラの家の周辺にも千手のほか主立った一族の情報に携わる者がこじんまりとした家を建て、周囲に溶け込み暮らしていた。
逆に「うちは」はあらゆる意味で目立つため、どの住宅地にあっても不思議と周囲に溶け込む事はなかった。

そこまで考えて、オレは張り紙の文面を考えることが、酷く無意味なことであることに気が付いた。

オレたちが引っ越したことは、きっと里中の者に知れ渡っているのだ。里に住む一般人の耳には入っていなかったとしても、忍を生業とする者たちの耳には入っていて然るべきなのだ。
詳細は分からずとも、今現在、千手邸がもぬけの殻であることを多くの者が知っている。その状況下で、どんな言葉を張り紙に書き連ねようと、人々の好奇心を押さえることはできない。

そう…今まさに、このうちは邸の門前に、小さな子供たちがたむろして中を窺っているように、やがては大人たちが手土産片手に内情を探りに来るだろう。

あるいは、もうそれが始まっているのかもしれない。

オレは一つ溜息をつき、重い腰を上げると、門へと向かうのだった。


・:*三☆・:*三☆・:*三☆

「あまかった…」オレの感想はその一言に尽きる。

大人さえ寄り付かない、恐ろしい鬼が住むという「うちはの族長邸」の門前には、オレの予想を裏切る面子が顔を揃えていた。

(てっきり、うちはの子供たちが物珍しさに集まってきたのだと思ったが…)

門を開け、「ここで何をしている」と厳めしく問いかければ、蜘蛛の子を散らしたように逃げていくだろうと安直に考えたのもいけなかった。

「散歩をしていました」と答えたのは、おそらく志村の子供だろう。
「物凄く可愛い赤ちゃんがいるって聞いたから!」と答えたのは、どうみても猿飛の息子だろう。
最後に口を開いた子供は、間違えようもない、うちはの子供だった。

うちはの子供は近所の子供としても、志村と猿飛は里の東側に住んでいることを知っているため、わざわざ出向いてきたことになる。

(子供を使うとは…考えたな)

腕を組み項垂れ、考え込むオレに、猿飛の息子は「赤ちゃんが見たいです!」と目を輝かせながらせがんでくる。どうやら子供たちには事情は知らされていないらしい。

…というより、自分たちでさえ事情が分からない物事について、子供たちに説明のしようもないのだろう。
マダラの第二子妊娠も、家族総出の里帰りも、ここ二日ばかりでバタバタと決まったことであり情報通の忍といえど、仕事が追い付かなかったのだ。

家に帰れば、それぞれが家の者に根掘り葉掘りここで見聞きしたことを問い質されるのだろう…。それはかつて兄者の後を付け回し、父に報告させられていた幼い頃の自分と重なる。

自分のしたことの意味も分からず、その後、何が待ち受けているのかも知らず。やがて大切なものを失った自分。

(後悔は先にも後にも立たぬものよ…)

オレは子供たちに「赤子はいま寝ておる。菓子をやるから今日は家に帰れ」といい、慣れないうちはの台所で朝から菓子を漁るはめになるのだった。

PR
[ 3367 ] [ 3366 ] [ 3365 ] [ 3364 ] [ 3362 ] [ 3360 ] [ 3359 ] [ 3358 ] [ 3357 ] [ 3356 ] [ 3354 ]
リンク
Template by kura07, Photo by Abundant Shine
忍者ブログ [PR]