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誕生日に扉間と意識が入れ替わってしまったイズナちゃんのお話(。´A`)

イズナ「よりによってこんな日に!!」
扉間「安心しろ、もうすぐオレも誕生日だ。少し日にちが変わっただけだろ」

「フザケンナ!!!」





僕の名は、うちはイズナ。
戦国最強の呼び名も高い「うちは一族」の族長にして、「木の葉の里」創設の立役者うちはマダラの弟だ。

そしていま僕の目の前にいる男は、戦国最強の呼び名も高い「うちは一族」のライバル的存在として名を馳せた「千手一族」の族長にして、「木の葉の里」創設のもう一人の立役者である千手柱間の弟、千手扉間だ。

時は二月九日。場所は行きつけの蕎麦屋。

僕たちは人生最大の危機に直面していた。


・:*三☆・:*三☆・:*三☆

話せば長いことながら、端的にいうのであれば、こうだ。

二月九日、月曜日。午前中の仕事を終え、僕と扉間は昼食をとりに本部棟近くにある蕎麦屋に赴いた。別に仲良く二人で赴いたわけではない。仕事の都合上、たまたま昼の時間が重なったのである。
通常こういったことは珍しく、僕たち二人は互いに道を譲ることも、時間をずらすこともできず、不可抗力で、同じ時間に同じ道を歩き、そして同じ店に並んで入る結果となった。

非常に不本意である。

しかし僕から扉間に対して気を遣うには少々憚られる理由が、この時の僕にはあった。
明日、二月十日は僕の誕生日なのだ…。
そのせいか、周りは僕に気を遣い優しくしてくれる。直接僕に欲しいものを訊ねてくる者もあれば、間接的に聞き出そうとする者もいるし、物を渡さない代わりにいつもより親切にしてくれる者たちもいた。

とにかく僕はチヤホヤされていたのだ。

当然のことながら兄さんは二月に入ってからは僕の下僕状態だ。何でもいうことを聞いてくれるし、家事だって僕の代わりに率先してやってくれる。一族の人間たちも僕に優しい。
みんな戦争が終わり、里で暮らすようになって精神的にも金銭的にも余裕が出てきたから、いままで出来なかったことをしてやりたいという気持ちが強いのだろう。
去年の誕生日は、大広間で一族を上げての酒盛りだった。
参加したものは皆、僕へのプレゼントを持参していたし、なにより里に住むすべての一族からそれぞれ僕への祝いの品が届いていて、僕はちょっとした大名気分を味わった。

「よかったなイズナ。里の連中みんなが、お前を祝ってるんだぞ!」

僕の隣で酒を飲む兄さんは上機嫌で、自分の誕生日よりもテンションが高かった。
そんな兄さんをみて一族の男たちも気が緩んだのだろう。酒盛りは今までにないほどに盛り上がった。

誰もが笑い、誰もが僕を祝福し、いつも厳めしい顔をしている兄さんにも笑顔が戻り、そして千手の遣いが僕に頭を下げて僕の誕生を祝った。

実に素晴らしい一日であった!!

そして今年もあの素晴らしい一日がやってくる。
僕の27歳の誕生日である!

にもかかわらず、僕はいま、蕎麦屋の個室の畳の上で、激しく混乱し、そして絶望していた。
余りにも絶望しすぎて、犬のように四つん這いになりながら動揺していた。

僕には誕生日がやってこないのだ…。

「ひとまず状況を整理した方がよさそうだな」

僕の絶望をよそに、怜悧そうな顔をした黒髪イケメンが口を開く。

あぁ、なんてイケボなんだ!
こんなイケボで僕は普段から会話していたのか!モテるはずだよ!
なんと罪深い、なんと罪深いイケメンなんだ僕は!!!

「おい、思っていることが口に出ているぞ…落ち着け。あと自分でいってて恥ずかしくないのか?」
「全然恥ずかしくないね!!!そんなことより、僕は絶望してるんだ!こんな銀髪色白ムキマッチョな姿でこれから先、僕は生きていかなきゃならないのかと思うと…絶望しかないよ!!!」

僕の心からの叫びに、黒髪美青年が腕を組みながら「はぁ…」と溜息をつく。その姿さえカッコイイな僕!!!

「少し黙れ。オレだって気持ちが悪くて仕方がないのだ。よりによって、自分自身の姿を、こんな形で再確認させられるなんてな」

そういうと扉間は僕の顔を卑劣そうに歪めながら呟いた。

「なぜオレのあだ名が『卑劣』なのか、全く理解できん。どうみてもイケメンだろう…」



短くまとめるはずの話が大きく脱線してしまった。
まぁ、とにかくだ、僕は目の前の『僕』を殴り、ようやく平静を取り戻した。

大変だ!!!
僕と扉間の精神が入れ替わってしまった!!!

ようはそういうことだ。うん。


・:*三☆・:*三☆・:*三☆

その昔、さる高名な忍僧が不思議な薬草を、清らかなる沢で見つけた。
わさびとよく似た実を地中につけるその薬草は「双生児の実」と名付けられ、一つの実を分け合い食すと、あら不思議…。

食べた者の精神が入れ替わり、互いを深く理解することができるであろう…という有難い神からの贈り物であった。


行きつけの蕎麦屋の店主に悪気はなかった。
なぜだかその日、イズナと扉間が、店が最も忙しくなる昼時に、仲良く二人で店にやってきたのだ。
カウンター席は埋まり、テーブル席も満席。なにより里長の補佐役を務める重要人物二人に、一般人との相席など頼めるわけもない。
かくしてイズナと扉間は奥の個室に通され、仲良く蕎麦を頼み、仲良く一本のわさびを分け合い食べることとなったのだった。

わさびは大きく立派で、いつも使っている小ぶりの一人用とは明らかに存在感が違っていた。店主は笑顔で二人にざる蕎麦を出しながら言った。

「木の葉の沢で見つけた野生のわさびです。召し上がってみてください」

「ほぉ、こんなものが木の葉の川で育っているのか…。初めて見るな」
「僕も初めて見たよ!美味しそう~。僕、わさび好きなんだよね」

真っ先に手を出したのはイズナだった。
イズナの「わさびが好き」という言葉に嘘偽りはなかった。本当に好きだったのだ。しかしすりおろす量は尋常ではなかった。

じょりじょり、じょりじょり、じょりじょり、じょりじょり、じょりじょり、じょりじょりすりおろし、とうとう扉間から「待った!」がかかった。

「おい、このわさびは一人用じゃないだんだぞ!どれだけ使うつもりだ」
「え、なにそれ。意味わかんない。わさびが欲しいなら新しくもらえば?」
「イズナ…おまえッ」

お忘れかもしれないが、二月十九日は扉間の誕生日である。
二人は同じ二月生まれ。
二人の置かれた状況は酷く似ていたのである。

一本のわさびを巡り、かつての好敵手たちは負けられない戦いへと向かっていった。

こうしてイズナと扉間は、それぞれが勝ち取ったわさびを薬味として使うことなく、直接口に掻き込み、冒頭に戻ることになる。

「わさびだけ食べたから罰が当たったのかな…」と不安げな面持ちで『扉間』が考え始める。
「そんなバカなことがあるか!わざびを薬味以外の方法で食べて悪いなど、聞いたことがないわ!」と不機嫌に『イズナ』が言い放つ。

二人はこの状況を何とかしようと頭を悩ませていた。
しかし忍僧はこうも言っている。食べる量に応じて持続時間は長くなる。食べ過ぎに注意せよ。

すべては後の祭りである。

「明日は僕の誕生日なのに…!」
「安心しろ、もうすぐオレも誕生日だ。少し日にちが変わっただけだろう」

「フザケンナ!!!」

『扉間』は迷いなくイズナを殴った。美しい右ストレートであった。
『イズナ』もまた黙ってはいなかった。

二人の感覚は懐かしいあの日に戻り、戦さながらの乱闘騒ぎへと発展したのだった。


・:*三☆・:*三☆・:*三☆

「何を考えておるんぞ、扉間!!」
「どうしたイズナ!何があったんだッ」

二人の戦さながらの乱闘騒ぎは、すぐさま火影の執務室へと知らせられ、最強の兄二人が駆け付けた。

「お主が乱闘騒ぎなど…信じられんのぞ。何か理由があるのだろう?いってくれ扉間!」
「あの野郎に何かされたのかイズナ!可哀想に…こんなに顔を腫らして。チクショウ…あの卑劣野郎!!」

その言葉に、周りにいた誰もが身の危険を感じ飛び退いた。第二ラウンド、マダラ対扉間が開始されるのだ…と!
しかしその予想を裏切り、扉間はマダラに頭を下げ謝罪した。

「すまなかった。今回の件は全面的にオレが悪い。この通りだ…許してくれ!!」

そういうと、あのプライドの高い卑劣な男が公衆の面前で両ひざを折り華麗に土下座を決めるではないか!

これに驚いたのはマダラだ。いつもなら、第二ラウンドが開始され、柱間が止めに入りグダグダになるという展開のはずなのに。

一体何が起こったのか…。

激しく動揺し、固まるマダラの目の前で土下座を続ける『扉間』。
しかし彼は、顔を伏せたままニヤリ…と黒い笑みを浮かべ、マダラの隣で同じように衝撃に立ち尽くしている『イズナ』へと視線を向け、無音のまま唇だけを動かして見せたのだった。

『ざまぁwwww』

この時、イズナの中の扉間は、イズナの本当の恐ろしさに鳥肌が立ったという…。

(この男…ッ)

頭脳派である扉間の好敵手であったイズナは、やはり扉間に負けず劣らず頭がよかったのだ。ただ一つ、扉間と決定的に違ったのは卑劣ではなかったということ。

そしてイズナは究極的に根性悪だったのだ…。

この先の人生に、何が待ち受けているのかを悟り、扉間は死を覚悟した。それは生命の「死」ではない。精神の「死」である。

(誰か…嘘だといってくれッ)


・:*三☆・:*三☆・:*三☆

『イズナ』は絶望していた。
別に、兄を誑かした憎きヤンホモの作った晩飯が予想外に美味かったからではない。うちはイズナの身体で食すのだから、マダラの作った飯が美味いのは当たり前である。

そういうことではなく、イズナから直接「死」を宣告されたから絶望しているのである。

何も知らないマダラは元気のない『イズナ』を気を遣い、明るく振る舞ったり、励ましたり。『扉間』にやられた怪我の具合を心配したり…と、信じられないくらい優しくて良い兄者だった。

きっといつもの自分なら、マダラのこの様な素顔を見たらマダラの弱みを握ったと大喜びしたことだろうし、この機に乗じてマダラに復讐したりしたことだろう。
しかしそんなことをしたら、待っているのは「死」だけである。

イズナとの乱闘騒ぎの後、マダラに手を引かれ午後からの執務に戻った扉間だったのだが、イズナの使っている部屋へ戻ると同時に一羽の可愛らしい小鳥が窓をつつき扉間を呼び寄せ、「死」を宣告したのだ。

『戻るまでこのまま生活しようよ。分かってると思うけど、誰かにこの事を話せば、それ相応の報いを受けてもらうからね。
今年の誕生日、最悪な日になりそうだと思ったけど…むしろ最高のプレゼントだよ。楽しくなりそうだねぇ~、と・び・ら・まっ』

さらにイズナはこう続けた、

『くれぐれも兄さんとは仲良くしてよね。もし兄さんが悲しそうにしてたら…僕、君の身体で何をするか自分でもわからないよ?』

前門の虎後門の狼とは正にこのことである。

事実を話せば、確実にマダラに殺される。里で暮らすようになってから、マダラのブラコンには拍車がかかりイズナが書類で指を切っただけで大騒ぎするようになったのだ。
イズナの身体を扉間が使っていると知れたなら…想像するだけで恐ろしい!!
かといって素直にイズナに従ったとしても、自分の身体を使いとんでもないことをすることは目に見えている。相手はあのイズナなのである…!!

かつて戦場で自分を止められたのは、うちはマダラとうちはイズナの二人だけであった。
マダラは別格だから仕方がないとしても、イズナには相当手を焼いたものだ。

自分が最も手を焼いた理由。それはイズナの根性の悪さにあった。

イズナは兎に角、性格が悪かった。足癖も悪く、手癖も悪く、何度も痛い思いをさせられたが、それよりなによりあの性格に手を焼いた。

自分でいうのもなんだが、自分は頭脳派である。忍としての力量も一族ナンバーツーだが、他よりも群を抜いて自分が強かったのは力だけに頼らない頭脳プレーにあった。
ところがイズナにはこの頭脳プレーが一切通じないのだ。
理由は簡単。ヤツは写輪眼の力もあったが、なにより性格の悪さで人の行動の裏を読むのが上手かったのだ…。

オレが先手を打つ前に、打つ手を封じる。
オレが先手を打てば、それを逆に利用して攻撃してくる。

いつぞや言われた言葉が今でも頭に残っている。

『お前の考えてることは、みぃーんなお見通しだよ。次に何をするのかも大体わかる。お前、卑劣だもんね。そういうヤツほど、読みやすいんだよ』

要するに、相性が悪いのだ。
拮抗した力なら、力以外のものが勝負を左右することになる。しかし頭脳までをも抑えられては、最早オレたちの勝負の付けどころは皆無に等しい。

あとは運を天に任せ、いつ終わるとも分からない戦いを繰り返すのみ…。

ところが、何の因果か運命か、オレたちの決着がつくことはないままに里ができ、そしてオレは衝撃の事実に気付いてしまったのだった。

この、どうしようもなく手癖も足癖も性格さえも悪い、顔以外にまるで良いところのないヤンデレ気質の男のことを、自分はどういうわけか、気に入っているのだと…。

淡い恋心のような何かを抱えながら、イズナと共に里で過ごした一年と数カ月。
まさかこんな日が訪れようとは、誰も予想していなかったであろう。

(とにかく…やり切るしかない。イズナとして、明日を乗り切るしか…ッ)

さもなければ、明日の夕刻、うちは族長宅の大広間で自分はうちは一族に殺されるかもしれない。なにせ奴らは頭がおかしいのだ…。
イズナの身体でいるからといって、身体生命の安全が保障されるとは限らない。

(最悪、イズナの身体を犠牲にして、このオレを抹殺するかもしれん!!)

扉間の不安をよそに、時計の針は止まることを知らず、とうとう日付は二月十日となり、うちはイズナの誕生日がやってきたのであった…


(その2)に続く
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