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柱マダに子供が生まれた話。
扉間がスゲーがんばってる!






イズナが七ヶ月を迎えたある日、マダラが体調を崩し寝込んでしまった。
2月に生まれたイズナもすっかり大きくなり、季節も移り変わり世間では台風シーズンが到来した頃だった。

七ヶ月になったイズナは、ひとりでお座りができるようになった。そのせいか、手近にある物を投げるようになり、面倒を見ているオレは犬のように「取ってこい」をさせらる日々だ。
それから、少し早いが這い這いができるようになった。

順調な成長ぶりである!

それに遠くにあるものを指をさして欲しがるようになった。加えて「イナイイナイバア」をすると喜ぶ。身体の成長だけでなく、知力面おいても順調な成長をみせている。
しかしそれと同時に厄介なことも起こり始めた。
主にその原因は兄者が作るわけだが、マダラが寝込んだその日も、兄者は例にもれず問題を越してくれた。

知力・体力ともに上昇中のイズナの活動範囲は驚くほど広くなった。最早、生後二三カ月の赤ん坊とはワケが違った。

気になるものを見つけると情け容赦なく口に入れる。
特に数日前のあの事件は酷かった…。
兄者が体調の思わしくないマダラの代わりにイズナの面倒を見ていたのだが、持ち帰った仕事があったらしく文机に向かう傍らイズナの世話をしていたのだ。それがいけなかった。いつのまにかイズナは兄者の硯箱から固形墨を持ち出し舐めしゃぶっていたのだ!
これにはオレも目玉が飛び出るほど驚いた。
残業を終え帰ってきた我が家で、可愛い小さなもみじの両手と口を真っ黒に染めながら固形墨を握りしめ、ご機嫌で墨を舐めていたのだから…。

「兄者!!!イズナが、イズナがぁあああ!!!」
「うをぁあ!??なんぞッ なんで真っ黒なんぞッ」

幸いにも兄者が使っている固形墨は、菜種油やゴマ油の油煙から採取した煤を香料と膠で練り固めた物だったため、口に入れても死ぬようなことはなく、また中毒に陥るようなものでもなかったが、この光景はオレたち二人にちょっとしたトラウマを与えることとなった。

「もう二度とイズナから目は離さんのぞ~~~~!!!」
「当たり前だ!馬鹿兄者ッ」

イズナを風呂に入れ、黒く染まった両手を洗い流している最中、兄者は半泣きであった。
泣きたいのはオレの方だ!!

しかし兄者の巻き起こしたハプニングはこれだけではないのだ…。
基本、兄者は抜けている。
部屋は綺麗だし、物は大切に使うが、神経質なオレとは違い「天然」というやつだ。
人から「忍の神」などと言われ、その仁徳をもてはやされる兄者だが、所詮、兄者もただの「男」。家に帰れば素に戻る。

仕事を終え(実際は終わっていないが)帰宅すると、兄者はまず自室で服を脱ぐ。
だが脱いだ服や火影の傘、さらには財布に至るまで、兄者は律義に衣装盆に畳んで入れておく。ここで一つハッキリ言っておくが、衣装盆に蓋はない。
蓋はないのだ!
悪くいってしまえば、蓋のない盆に、無造作に服や火影の傘、そして小銭の入った財布を置いておくのだ。

何が起こるか、もうお分かりだろう…。

定期的にイズナの襲撃を受け、服は涎まみれ、傘は放り投げられ、挙句、財布の中身はぶちまけられる。
おまけにイズナは漆塗りのこの盆を大変気に入っており、目を離すと徘徊してはこの盆の中に入り込むという有様だった。

「子供がいるということを忘れていやしないか、兄者…」

イズナによってぶちまけられたものを一緒に回収するオレの身にもなってもらいたい。そして今日もまた、兄者はオレやマダラの注意をすっかり忘れて衣装盆を畳の上へ置いたままにしていた。
本来ならば衣桁屏風とともに、部屋の隅に置かれるのが普通だが、幼い子供がいる家庭では衣桁屏風が倒れて子供が下敷きにならないよう、使用を差し控えるのが普通だ。そして我が家でも、イズナの誕生と同時に衣桁屏風は撤去され、物置にしまわれている。
だというのにいつまでも習慣が抜けない兄者は、「いつも通り」かつて衣桁屏風のあった場所に添わせて置いてしまったのだ。

「いい加減、イズナの手の届かない場所に物をしまう習慣を身に付けてくれ」
「すまぬ…つい習慣でな」

そういいながら兄者はぶちまけられた小銭を必死に探している。一つでも取り残しがあれば、まず間違いなくイズナが口に入れることは目に見えているため兄者も必至だ。だがその思いとは裏腹にここでも兄者の天然が炸裂した。

いや、これは「天然」というよりも、「ずぼら」の部類に入るのではないだろうか…。

兄者は自分の財布に小銭がいくら入っていたか覚えていなかったのだ。

「これで全部だと思うのだが…」

イズナの手によって破り捨てられ紙吹雪となったお札四枚は既にオレが回収して修復していたが、小銭に関してはさすがのオレも助けようがなかった。

「マダラは体調を崩している。これ以上イズナを預けておくわけにはいかん。今日はこの部屋にイズナが入り込まぬよう結界でも張っておいてくれ」

四つん這いになり文机の下を覗き込む兄者にそう言い置くと、オレは足早にマダラの休んでいる寝室へと向かった。



「寝ているところを、すまなかったな」

マダラからイズナを回収し抱き上げれば、イズナは嫌がるようにマダラへと手を伸ばし「あ”ー」と不平を漏らす。当然だ。まだ幼いイズナにとって、離乳食が始まったとはいえ相変わらずマダラは世界の中心だ。

「小銭は見つかったのか?」

気遣う様子のマダラだったか、今朝から寝込んだきり食事もろくに喉を通らない有様で、さすがのオレも心配になってくる。

「そんなことより体調はどうなのだ?離乳食が始まったとはいえ、イズナはまだお前にべったりだ。お前の風邪がイズナにうつりでもしたら事だぞ。早めにしっかり治しておけ」
「わかっている…」

オレの言葉に珍しく反論なく頷くマダラに妙な違和感を感じつつも、オレはこのマダラの体調不良が何を意味しているのか全く分かっていないのだった。



マダラの体調不良が一週間目に突入し、いよいよ不安になったオレはイズナとマダラを医者に診せることにした。

「そんな大げさにせんでも、寝ておれば治ると思うのぞ」
「マダラが一週間以上体調不良など、普通では考えられん!これはなにか重篤な病気に違いない。イズナにうつっていないか心配なのだ!」

いざとなったら病原菌を保有しているマダラを入院させ、イズナから引き離すことも考え、オレは仕事を休み、朝からマダラとイズナを連れ瞬身の術で医者へと飛んだ。

しかしそこでオレは思わぬ人物と出くわすことになる。

瞬身で飛んだ先…。それは木の葉で一番オレが信頼している医者の元なのだが、はて、なぜだろう。

「ヒカク…なぜお前がここにいる」
「そういう扉間殿こそ、マダラ様とイズナ様を連れられて何をしておいでなのですか?」

普通、家族の面倒は一家の大黒柱がみるものでしょう。と至極真っ当なことを言われ、しかしその「大黒柱」が「火影」であることを承知でこの発言なのだから、嫌味以外のなにものでもない。

「マダラが体調不良でな…。兄者はあの通り、手が離せぬゆえ、オレが連れてきた」
「そうでしたか」

…と、ここで既に気付いている者もいるだろうが、ヒカクとマダラは一切会話をしていない。
というより、会話ができない程、マダラの状態が悪いのだ。しかも72キロから落ちた体重が未だ戻らず、現在も60キロ後半を彷徨う有様だった。

(まずいな…。こんな状態のマダラを、よりによってヒカクに見られるとは…)

これではまるでオレたちがマダラを虐待でもしているようではないか!?

まだ幼く自分の立ち位置が分からないイズナは状況を理解していないのだろう。オレに抱かれながらヒカクに笑顔を向けている。
一方のヒカクはマダラを気にしつつも、初めて対面するイズナに強く興味を惹かれているようだ。視線がマダラとイズナの間で彷徨うように忙しなく動いている。

しかし、とうとう我慢できなくなったのだろう。ヒカクはイズナではなくマダラを選んだ。

「大丈夫ですか…マダラ様」

しかしマダラへと掛ける声はどこか硬質的で、戸惑いさえ感じられる。
頭領でありながら一族との確執ゆえに孤立し、一人勝手に居を千手へと移した挙句子供まで産んでしまったマダラだ。いくら妊娠中面倒を見ていたとはいえ、ヒカクもどのように接すればいいのか思い悩んでいるのだろう。
ヒカクの立場そして心境を察し、オレはあえて二人の会話を止めることなく静観することにした。

のだが、タイミング悪く、二人が会話を始めようとしたその瞬間、「うちはマダラさん、診察室へお入りください」と声がかかり、二人の交流は絶たれることとなる。

「いってくる…」
「お気をつけて…」

覚束ない足取りで診察室へと入ってゆくマダラを支えようと、ヒカクが腕を伸ばす。しかし一度伸ばしたその腕を、ヒカクはなぜか引っ込めてしまった。そして固い表情でマダラの背をじっと見つめたのだ。
その様子に、オレはつい「ついていかなくていいのか?マダラのことが気になるんだろう」と声をかけた。イズナが亡くなってから、ヒカクは献身的にマダラを仕えていた。おそらく今でもヒカクの心はマダラに仕えているはずなのだ。

だがオレの言葉に振り返ったヒカクは、見たこともないほどに動揺した顔をしていた。

あの「うちはヒカク」が、だ。
常にオレたち千手に対して硬質的で不愛想で無表情で、ともすれば感情の起伏さえ欠落したかのような対応をする、理性的なあの男がだ。

何かある…。オレは瞬間的にそう思った。
そしてオレの予想を裏切らぬ言葉が、ヒカクから発せられたのである。

「まさかとは思いますが…マダラ様は、また、千手の子を…」

ヒカクの言葉にオレの脳裏で、ある一つの出来事が蘇った。

(そういえば、あの時もマダラは、一カ月近く体調を崩していた…)

オレの中で時が止まったのは言うまでもない。

「そんな馬鹿な…」

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