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妊婦マダラちゃんの続きヾ(⌒(_*'ω')_もう妊婦じゃないけどな!ははっ





「なぁ兄者…。マダラのやつ、少し痩せたんじゃないのか?」
「お前も気付いたか!そうなのだ…どうにも最近、抱き心地が悪くなったような気がしての、体重を計るようにマダラに言ったら、本当に痩せておったのぞ!!」

一部、兄者から気になる発言があったような気がするが、敢えてそこは無視する方向でオレは言葉を続ける。
イズナも生後三カ月を過ぎ、少しずつ授乳間隔も開いてきた。最近では夜の授乳もなくなり、離乳食へ向け、薄めた果汁を少しずつ飲ませ始めているのだが…。

「この時期にマダラが体調不良では困るぞ兄者。まさかとは思うが、兄者…産後間もないマダラに手を出しておるのではあるまいな」

マダラの今最も重要な任務はイズナを育てることである。間違っても欲求不満の兄者の相手をすることなどではない!
兄者を睨みつければ、「そんなことはない!…とは言い切れないが…しかし自重はしておるぞ!」といまいち信用ならない答えが返ってきた。
とはいえ、通常の妊婦ならば出産後は「産後太り」というものがあるらしい事を知っていたオレは不安にならざるを得ない。

「病気…ということはないだろうな。今の時期にマダラに死なれるのは困るぞ」

イズナはまだ幼く母乳を必要としている。加えて喜怒哀楽が見え始め、機嫌の悪い時の泣き声は耳をつんざく程なのだ。マダラがいなくなったらどれほどイズナが泣き叫ぶことか…。想像するだけで恐ろしい!

「不吉なことをいうな扉間!マダラは元気ぞ、昨日だって…」
「昨日だと!??昨日というと、兄者がイズナの子守をオレに押し付けていた『昨日』のことか!」
「そ、そんなことも、あったかのぉ~」

ははは、と笑ってごまかす兄者を睨みつけ、オレは今朝、出勤前に見たマダラの後ろ姿を思い出し、一人、唸り声をあげるのだった。



(どう見ても細くなっている)

仕事が終わらない兄者を残し昼食をとりに千手邸へ戻ったオレは、庭に出てイズナをあやしている最中のマダラと遭遇した。
以前は外で食事を済ませてから顔を出していたのだが、使用人を雇い入れてからは用事がない限り自宅で食事をとるようになったのだ。どうせ給金を払うのなら、朝食と夕食だけでなく昼食も三人分作らせた方が得というものだ。
定額で最大限仕事をさせるというオレの思考を読んだのか、マダラは呆れたような顔をしてオレを見ていたが、そんなことは知ったことではない。使用人の給金は、現在、兄者とオレの折半で支払われているのだ。立場上、外食の多い兄者の分までこき使って何が悪い。

そんなわけで今日も自宅へ温かい食事を求めてやってきたオレなのだが、自宅に戻ってきたのは何も食事のためだけではない。改めてマダラの状態をチェックしようと思ったのだ。

兄者の話ではマダラの体重は平時71キロ前後だった。
そして先日計った時は65キロ。

どう考えても出産を機に痩せたことは否定できない。

そもそも妊娠時のマダラの体重が72キロであったことと合わせると、場合によっては妊娠時から痩せ始めたことになる。
イズナの生まれた時の体重が3017グラムということは、マダラは出産直後すでに69キロだったことになる。

(これは一体…)

庭でイズナをあやすマダラに、どれほどの自覚があるのだろうか。
一流の忍ならば自分のベスト体重から少しでも変動があれば動きに影響が出ることは熟知しているはずだ。ましてや、あの「うちはマダラ」が6キロも体重を減らして気付かないはずがない。

(体力も相当落ちているはずだ)

いったい何が原因なのか。太るはずの「産後太り」もなく、妊娠中から体重が減少するなど、普通では考えられない。
いや、そもそも妊娠からして常軌を逸していたのだから、体重面でも常軌を逸した何かがあるということなのか!?

真剣な眼差しをマダラの身体へ向けていると、振り返ったマダラから睨みつけられた。

「ジロジロ見るな、気持ち悪い」

心持ちイズナを庇うようにして振り返るあたり、まるで不審者から我が子を守っているかのようである。

「勘違いするな!間違ってもイヤラシイ意味で貴様を見ていたわけではないぞっ」
「当たり前だ!」

マダラの一喝するような言葉に、とうとうイズナが機嫌を損ね泣き出してしまう。するとマダラはますますイズナをオレから隠すようにして、視線を避けるのだった。

「おぉ、よしよし。可哀想になぁ…せっかく機嫌よく日向ぼっこしてたのになぁ、扉間のせいで…」

おい、オレはお前のことを心配してやってるんだぞッ

口まで出かかった言葉だったが、機嫌を取り戻したらしいイズナのキャッキャとはしゃぐ声を耳にして口を噤んだ。どんなにオレに懐いていようとも、イズナにとってオレは「叔父さん」にすぎず、マダラこそが掛け替えのない「母親」なのだ。

今この場にあるイズナの「幸福」をオレはどうしても侵すことができなかった。

…とはいえ、事はイズナの将来にもかかわることだ。結局オレは、マダラの機嫌を損ねない程度に食事の席で、最近の体調などを気遣うフリをして情報収集するのだった。

マダラの体調など正直どうでもいいが、マダラの母乳からイズナが栄養を得ている以上、これはイズナの命に関わることなのだ!!



兄者と違い事務処理能力の高いオレは午後からの仕事をサッサと片づけ、兄者に断りを入れ書庫へと向かった。
もしもの時のため、仕事には常に優先順位をつけて片付けるようにしている。マダラの入院も考慮に入れ、三日分の重要書類だけは処理したため気が楽だ。何があってもイズナの面倒だけは見てやれる。

(最悪、職場に連れてこればいいだけだしな)

まさか自分が赤ん坊を背負いながら仕事をする日がこようとは夢にも思わなかったが、これもイズナのためと思えば恥も外聞も捨てられるというものだ。
一度他の誰かに任せてしまえば、その状態が続くことは目に見えている。誰に頼んだとしても自分は納得しないはずだ。ましてや、うちはの者など言うに及ばず、かといって千手の者も信用ならない。

千手でもない、うちはでもない、ましてや男が産んだ子など、誰が真剣に面倒など見ようものか!

(オレがしっかりせねば!!)

書庫にある身体に関する巻物を読み漁りながら、オレは熱くなる目頭を押さえながら必死でマダラの体重減少の原因を探るのだった。




「よいですかな、扉間様」

しわがれた声の産婆は、扉間に声をかけた後、理路整然と講釈を始めた。

「赤ん坊が生まれると『プロラクチン』というホルモンが分泌され、これによって乳房にたくさんの血液が流れ込み母乳がつくられるのです」
「つまりマダラの血液が母乳の元というわけか…」
「マダラ様の場合は女性ではないので、多少違いがあるかもしれませんが、大まかな仕組みとしてはこうなのです」

この時点で扉間は心が折れそうになった。

マダラとイズナはまさに血を分けた関係なのである。遺伝的にも食物連鎖的にも血を分け合っているのである。

(なるほど、どうりでマダラに懐くわけだ!!)

今のイズナにとって、マダラはまさに世界の中心であり、神であり、自分の命を左右する唯一無二の存在と認識されているのだろう。そしてこの状態が、離乳食が始まるまで、あと二カ月は続くというのだから頭を抱えずにはいられない。

こんな話を聞いてしまうと、自分がどれ程心を砕き細心の注意を払おうとも、イズナをマダラの洗脳とうちはの呪われし血の定めから解放してやれないのではないか…とさえ思えてくる。

10カ月をマダラの腹の中で過ごし、この世に生れ落ちてからも5カ月近くをマダラの血液に頼って生きることになるイズナ。つまりイズナは、15カ月近くマダラの血肉のみを栄養に生かされていることになる。

子供にとって「父親」とは一体何なのか…。

(これでは兄者の存在意義がまるでないではないかッ)

扉間は信じていたのだ。イズナの身体に流れる千手の血を!
にもかかわらず15カ月もうちはの血肉で生き続けるイズナに、果たして千手の血がどれほどの影響を与えるというのだろうか。最早、イズナに流れる千手の血は、うちはの血に上書きされているのではなかろうか…。

しかしここで心折れるわけにはいかないのだ。
扉間はあくまでマダラの体重減少の謎について、各専門家の意見を収集しにきたのであって、精神的ダメージを受けるためだけにここに来たわけではない。

「通常女性は身体に多くの脂肪を蓄え、それを切り崩して妊娠・出産・子育ての際に活用するわけですが、マダラ様の場合は、妊娠時でさえ体脂肪率3%という状態で、蓄えゼロの状態から始まったわけです」
「それは…大丈夫なのか?」
「大丈夫ではないからこそ、その証拠にマダラ様の体重は出産後71キロから69キロに落ちたのです」
「つまり、マダラは妊娠中、すべての栄養をイズナに回していたということか…」
「さらに、母乳を与えるためには質の良い血液を作る必要があります。この時点で69キロに落ちていたマダラ様の身体から質の良い血液をいかにして作るか…もうお分かりいただけますね?」
「自分の身を切り崩して、母乳を…イズナに…」
「これ以上マダラ様の体重が落ちると現役復帰も難しくなります。体重を落とさないように食事量を増やしてください。今までと同じ量ではマダラ様の場合、間に合わないのです」

産婆の産婆らしくない言葉を胸に刻み付け、オレはその場から走り去った。瞬身の術など頭から消し飛んでいた。とにかく心の叫びに従い、全力で家まで駆けた。

マダラは、マダラは、その身を犠牲にして…!!!

「イズナぁああああ!!!!!」

今すぐイズナに足りない分の栄養を補わせなければ!
これ以上うちはの血肉でイズナの身体を汚染することは余りに危険すぎる!

マダラにたくさんの食べ物を与えよう。
人間の身体は絶えず新しい血液を生産しているのだから、今からマダラに質の良い血液を作るために栄養豊富な食べ物をたくさん与えれば、15日後にはイズナの口に入る母乳に変化が現れるはずだ。
それはマダラの身体に蓄積されたうちは色の血液からできた母乳などではなく、新しい新鮮な血液からできた母乳であるはずだ!

(これ以上マダラの体重を減少させてたまるか!!そんなものイズナには絶対に飲ませんぞッ)

その日の夜を境に、台所を任せていた使用人には別の仕事を与え、オレ自らが台所に立つことにした。
こうしてマダラの食事は千手邸において誰よりも量が多く、誰よりも栄養豊富で、見栄えも味も最高のものとなったのだった。

「なんぞ?マダラの食事だけ妙に豪華な気がするのだが…。しかもマダラだけ一品多いのぞ!」
「黙れ兄者。事はイズナの将来に関わるのだ。父親なら我慢しろ」
「まったく意味が分からんのぞーーーー!!!」
「黙れ!」

すべてはイズナの為なのだ!
あと二カ月。あと二カ月が過ぎれば!!!

離乳食がやってくるッ

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