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第二部的な…






生まれて初めて廊下を全速力で走った。
息を切らせ走り着いた先は兄者の気配がある執務室で、オレは挨拶一つせずその扉を力任せに押し開いた。

「兄者!!子供が出来たッ」

オレの言葉に兄者は持っていた筆を取り落し、「なんと!!」と両目を見開き固まった。かと思ったら勢いよく立ち上がりオレの元へズンズンと歩いてくる。

「子が出来たのか!?」
「あぁ、そうだ!」
「いつできたのぞ!??」
「オレが知るかッ」

吐き捨てるように返したオレの言葉に、兄者は「そうか…」と呟くと、視線を左右に彷徨わせ始めた。

「そうか…子供がのぉ…」

この時点でオレは「何かおかしいな」とは思ったのだが、オレ自身、酷く動揺していたため気付くのが遅くなったのだ。

「男として責任はとらねばならんぞ」
「責任…というと、『結婚』か」
「当たり前ぞ!子を孕ませておいて、知らぬ存ぜぬではまかり通らぬ!!そんな中途半端な気持ちで付き合うものではないぞっ」

兄者の説教するような強い言葉に、オレは返す言葉が見つからない。
確かにそれもその通りだ。
マダラはこれで二人、兄者の子を産むことになる。普通に考えれば『妻』といって差し支えない。むしろそうなるべきなのだ。

しかし事情が事情なだけに、世間一般の常識や世間体などというもの自体が当てはまらないのも、また事実。

「うーむ」と考え込むオレに、とうとう兄者はブチ切れた。

「扉間!俺はお前がそんな薄情な男だとは思わなかったぞ!!もういい、その者の名をいえ。俺がお前の代わりに生まれてくる子の父になろうっ」
「…いや、父になるもなにも、兄者の子供だが??」
「ぞ?」

オレたち二人の間で時が止まったのは言うまでもない。
そして再びオレたちの間で時が動き出した時、瞬間的にオレの怒りは頂点に達し、気が付けば兄者の頭を叩いていた。

「兄者はオレをそんないい加減な男だと思っていたのか!!」
「痛い!!痛いのぞ!子が出来たというから、てっきり!」
「ふざけるな!オレは兄者とは違うぞッ」

祝言を挙げる前から相手を孕ませるなど、どこの下劣の行いか!
そんな道義にもとる行為を、このオレがするはずがない!!
兄者と一緒にするな、この万年発情期が!

小一時間ほど兄者に説教を浴びせた後、背後の扉がノックされる音でオレは現実に引き戻された。
世間一般に広く認識されているオレのイメージとは違い、実はオレは短気でキレやすい激情家な面があるのだ。

扉がノックされた後、顔を出したのは桃華で、オレたちの会話の一部始終が筒抜けであったことを指摘された。

恥ずかしすぎて泣きそうだ!!!


・:*三☆・:*三☆・:*三☆

事情が事情なだけに兄者には定時に仕事を上がってもらった。
相変わらずマダラの抜けた穴は埋まらず、火影の執務机には未決済の書類が溜まっていたが仕方ない。なにせ木の葉の里に関わる事なのだ。

もっとも、この「木の葉の里に関わる事」は、日中行われた兄者への説教を通じて里中に知れ渡ったようだが、この際そんなことはどうでもいい!
どうぜ遅かれ早かれ、兄者がデレデレした顔で「また子が出来たのぞ~」と執務室を訪れる者に吹聴し、里中に知れ渡ることになるのだから…。

しかし、だ。

誰がこの事態を予想できたであろうか!?
「一度あることは二度ある」と先人たちも言っているが、こんな未曽有の出来事が二度も起こってたまるか!

とはいえ頭のどこかでこうなることが予測済みであったのも、また事実。

『混ぜるなキケン』を混ぜ合わせれば、やはり同じ結果になるのだ。

(おそらく、確立の問題で子が出来るのではなく、兄者の精子がマダラの体内に作用するのに必要な量が蓄積された場合に…うをぉおあくぁwせdrftgyふじこlp;)

「どうしたのぞ、扉間。話は聞いておったのであろうな。またマダラの面倒をローテーションで見なければならんのぞ?しっかりしてくれ」
「分かっておる!!分かっておるわ!大体、そのローテーションの案はオレが考えたものだ!」
「なんぞ~。一人でボーっとしたり、急に怒り出したり、まるで妊婦のようぞ」

兄者の言葉に瞬間的にブチ切れるオレ。
今日で何度目だ…。

「妊婦ではない!!だいたい、すべては兄者のせいではないかッ」

今だって兄者はマダラに寄り添いベタベタとその身体に触っているのだ。
妊婦だぞ!妊婦なんだぞ!??

「兄者は今すぐマダラから離れろ!!」
「何をするのぞ!?いたい、腕がもげる!なんなんぞーーーー」
「何でもいいからマダラから離れろ!」

肝心のマダラはつわりが酷いらしく、座布団にすわり俯いたまま会話に一切入ってこない。

「マダラ、お前はもう寝ろ。イズナのことはオレが面倒を見る。今のお前では役に立たん」
「すまんな…そうさせてもらう…」

ふらふらと立ち上がり自室に引っこんでいくマダラを追いかけ兄者も消えた。
こんな調子では明日から兄者の仕事は一切期待できない。
実際、イズナの時も兄者は体調を崩したマダラに付き添い仕事を休んでいたのだ。その時には誰も妊娠だなどとは夢にも思っていなかったわけだが…。

居間に取り残されたオレの隣で、何も知らないイズナは幼児用の布団に横たわり安らかな眠りについている。手には最近お気に入りの鷹のぬいぐるみが握られており、見る者の笑みを誘う。
鷹狩が趣味だったというマダラは、イズナにも鷹を好きになってもらいたいと手ずから縫い上げたのだ。

イズナが存命中には兄の趣味に付き合いイズナも狩場に顔を出していたという…。

小さな頭を撫ぜながら、オレは眠るイズナに問いかけた。

「お前にも兄弟ができるのだそうだ…嬉しいかイズナ」


・:*三☆・:*三☆・:*三☆

うちは一族というのは、皆、総じて頭がおかしいのではないだろうか。

いや、そんなことは当の昔に判り切っていたことなのだ。ただオレが言いたいのは、こうも変わり身の早い連中だったのか…ということなのだ!


今朝、朝一で千手邸の門扉を叩くものがあった。
うちはヒカクである。

朝っぱらからやってきた客人に対応したのはオレで、顔を洗い食事の席に向かう途中のことだった。

ヒカクはいつもの無表情でもって、手に菓子折りと思しき風呂敷包みを携え立っていた。

「朝っぱらから何の用だ。不躾だとは思わんのか?仮にも里長の住む屋敷だぞ」
「火影様におかれましては、創設の頃より里の健全な運営のため格別のご尽力、ご努力を続けられておりますことに対し、深く敬意を表しております」

そこで一端言葉を区切ったヒカクは、一歩前に踏み出すと、「しかしだからこそ、この時間帯に馳せ参じたともいえます」と言葉を続けた。

正直、オレはあのうちはの目が嫌いだ。

あの目でじーーーーーっと見つめられると、背筋がゾッとするのだ。
まるで人外の何かに見つめられているかのような気持ちになる。

それが赤く変化したときなどは、言うに及ばず。

視線を避けつつ、オレはヒカクに用向きを訊ね、早々に追い払うことにした。

しかし、だ。

ヒカクはあの無表情でもってこう応えたのだ。「マダラ様をお迎えに上がりました」…と。

「なにをいっている…」
「つわりが酷いようでしたので、里帰りをお勧めしに参ったのです」

イズナ様もいらっしゃることですし、ご兄弟だけでマダラ様の面倒を見るのは、最早、不可能。
以前のようにマダラ様専用の護衛部隊を編成したとしても、イズナ様のお世話はどなたがなさるのです?まさか狐の面を付けたどなたかがなさるのですか??

「ここは一度、里帰りなされた方がよろしいかと思います。その方がマダラ様も安心して寛げる。胎教の為にもストレスは溜めない方がいいのでは?」
「そんなことは分かっておる…」

分かっておるが、なぜ今ここで、このタイミングでお前たちが出張ってくるのだ!!

喉まで出かかった言葉をグッと飲み込む。
マダラは戸籍上、「うちはマダラ」であり「うちは一族の頭領」なのだ。
イズナの母でもなければ、里長であり千手一族の頭領の妻でもない。

マダラがここを出ていくのにオレたちの許可は一切必要ないのだ。

そして、いま目の前にいるのは統領補佐である。

「お邪魔しても宜しいですね」

オレの返事を待たず、ヒカクは屋敷内へと当然の顔をして足を踏み入れたのだった。

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