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雪が積もったのでその記念に。
こんなに積もるのは久しぶりで楽しくなりました!






木の葉に初雪が降った。
未明から降り始めた雪は止むことを知らず、とうとう朝には積雪20センチを超え、歴戦の猛者たちでさえ寒さに震え、出勤が遅れがちになる程であったという。

そんな雪の日にあって、珍しく扉間の朝はのんびりとしたものであった。
理由は簡単。彼は今日、休みなのである。
久々にもぎ取った休みを、彼は今日一日、自宅で過ごす事を決め、昨夜布団に入り目を閉じた。
しかし朝起きてみれば一面の銀世界である。
そしてこんな寒い日に思うことといえばただ一つ。

(イズナの傷は大丈夫だろうか…)

無理の利かない身体であることを踏まえ、イズナは現在も自宅療養のまま職場に顔を出していない。そんなわけでイズナのことを憎からず思っている扉間は、雨の日や寒い日など、イズナの身体を心配しているのだった。
加えて今日はイズナの唯一の家族であるマダラが朝一出勤の日である。マダラにおいてはこの寒い中ご苦労なことだが、それ以上に気にかかるのは家に一人残されるイズナのことだ。

(様子を見に行ってみるか…)

淹れたての温かい緑茶を啜りながら、これまた朝一で出勤するらしい兄の「行ってくるのぞ~」という半泣きの声に応え、扉間自身も腰を上げたのだった。

時刻は朝の5時半。冬の陽は未だ東の空から顔を見せず、どんよりとした雲が空を覆う、薄暗い時間帯であった。


・:*三☆・:*三☆・:*三☆

止んでいた雪が再び降り始めたのは、扉間が自宅を出て直ぐのことだった。

降る雪は例年に比べて水分量の少ないものであるらしい。さらさらとして重たさを感じさせない雪は、積もっても依然その軽さを忘れず、歩みを進めるたびに掻き分けられた雪が左右へと舞ってゆく。
誰にも踏み荒らされていない純白の雪原に足跡を刻むという行為は、不思議と扉間の心にも子供じみた喜びを与えており、降り始めた雪をみても寒さひとつ感じることなく、うちは邸へと到着してしまった。

振り返ればそこには延々と続く自分の足跡。
そして自分の目の前には何者にも侵されていない白銀の…というわけにもいかなかった。

神経質で律義なマダラは、扉間の兄である柱間よりも早く屋敷を後にしたらしく、門から大通りへ向かう足跡が規則正しく刻まれている。

(少し遅かったか…)

うちは邸に自分の足跡を最初に刻めなかったことに落胆しつつ、しかし扉間はすぐに目敏くもう一つの足跡を発見するのだった。
その足跡はマダラのものよりも後につけられたものらしい。
足跡の中に降り積もる雪の具合からしてマダラは30分以上前に家を出ているが、もう一つの足跡には雪がさほど降り積もっておらず10分前後に誰かが刻んだものだと推測された。

そしてこの場合「誰か」は一人しかいない。

(イズナのやつ、こんな雪の日に出かけたのか!?)

大通りへと向かうマダラの足跡とは真逆の方向へと延びる足跡。その足跡は、方向も真逆なら、足跡のつき方もまた真逆なのであった。
規則正しく一定の歩幅で、目的地に向かい真っ直ぐと延びるマダラの足跡。
逆にイズナの足跡は歩幅もバラバラで右へ左へと蛇行しながら、自由気ままに雪の上を歩いている様子が見て取れる。

(まるで子供だな…)

寒い日には傷口が痛むから腹巻をするようになったのだと聞いていたが、この寒さの中、果たして腹巻程度で痛みを和らげることはできるのか…。
扉間は降る雪に視界を遮られながらイズナの足跡を追いかけることにした。

未だ療養中であるイズナの足で、この雪の中、遠出するとも思えない。早々に回収して、温かい茶を飲ませて火鉢に当たらせて温めてやろう…そんなことを思いながら扉間は新たな一歩を雪原へと刻み始めるのだった。


・:*三☆・:*三☆・:*三☆

うちは邸の門から左へ延びるイズナの足跡。
その足跡を追いかけ、最初の曲がり角を曲がったところで新しい発見があった。小さな動物の足跡が、うちは邸の垣根から道を挟み反対側の家の垣根へと繋がっていたのだ。

(大きさからいって猫か…)

どうやらイズナは猫を追いかけて家を出ることになったらしい。
この様子では薄着とみて間違いないだろう。

溜息をつき、扉間は肩に降り積もった雪を払いながら、再びイズナの足跡を追いかけた。
しかし次の曲がり角を曲がったところで呆れるような光景に遭遇した。どうやイズナは雪が降り積もり枝の垂れ下がった木に悪戯をしていったようなのだ。

いや、「悪戯」というよりは、もしかしたら親切心だったのかもしれない。あるいは、雪が積もり、苦しげに垂れ下がっていた木の枝を気の毒に思ったのかもしれない。

理由は定かではないが、とにかく、雪が積もり垣根から道へと垂れ下がった木の枝を思いっきり引き下げ…そして手を離したのだ。

おかげで木に積もった雪は、反動ですべて払い落とされている。
そしてその代わりとばかりに、木の周りには降り積もった雪とは別の形で、雪が散乱していた。

余程楽しかったのだろう。足跡はその木の周りで三往復ほどしてから先へ進んでいる。もちろん、周囲の木、すべてが同じ状態になっており、この雪の中、常緑樹の葉っぱを見せる木が5本ほど、道に彩を添えていた。

(あのバカ…)

足跡の様子と相まって、子供の悪戯のようにしか思えない有様である。
少なくとも自分なら雪の中、こんなことをして回らない。多分、他の者もこんなことはしないだろう。

(まぁ…兄者なら、もしかしたらやるかもしれないが…)

眉を顰めながら歩みを進めると、今度は小動物の足跡とイズナの足跡が並んで見つかった。どうやら猫を発見できたらしい。

…と思ったのも束の間、なぜか一匹と一人の足跡は並行してどこまでも真っ直ぐ伸びていく。そして三件目の家の垣根を過ぎたあたりで、猫の足跡が消えていた。正確には、垣根の内側へと入り込み、追跡できなくなっていたのだ。これにイズナは動揺したらしい。イズナの足跡が垣根の前でうろうろと定まりなく移動した後、垣根に沿うように歩き出していた。

…と思ったら、道の脇になぜか小さな雪だるまが一つ。

猫が出てくるのを少しの間待っていたようである。乱れていた足跡は、実のところ、イズナが足元の雪を掴み雪だるまを作っただけのことであった。

(何をやっているんだあのバカは…)

おまけに近くにあった南天の実を勝手にむしり、雪だるまに赤い目を付けているではないか。
足跡がしっかり残っているため、誰がやったのかも丸分かりである。

と、そこまで考え、扉間は自分の足跡を振り返った。

(まさかとは思うが…、いや、そんな馬鹿な…)

雪よ、もっと激しく降ってくれ!
そしてオレの足跡を消してくれ!!

扉間は雪よけのために被っていた傘を目深に被り直し、誰もいない早朝の雪道を、顔を隠しながら足早に立ち去るのだった。


・:*三☆・:*三☆・:*三☆

「まったく、どこをほっつき歩いているんだ!」

その後もイズナの足跡は猫を追いかけつつ、うろうろと徘徊し、とうとう扉間が見知った界隈まで来てしまった。そして扉間が溜息をつきつつ傘に積もった雪を、首を振ることで払い落とした時、前方から「あ、扉間だ!」と声がかかった。

雪は徐々に激しさを増し、今では少し先を見るのも大変な状態になっている。

「イズナか?」
「あたり~!」

笑いながら近づいてくるイズナは、扉間同様、しっかりと防寒対策をしており、その姿に扉間はしばし言葉を失った。
逆にイズナの方は不思議そうに「何やってるの?」と訊ねてくるではないか。

「お前を探していた」とも言い出せず、扉間はずっと気になっていたことを訊いてみた。

「お前こそ、どこで何をしていたんだ…」
「僕?僕はねぇ…」

猫を追いかけてたんだ。いつも庭に遊びに来る子がいるんだけど、今朝は雪のせいか、足跡だけ残してどこかに消えちゃったから、気になって追いかけてみたんだ。
そしたらビックリ!千手の家の庭に入っていくんだもん。
あの子、扉間の家の子だったんだね。

扉間の部屋の火鉢に当たりながら、イズナは「兄さんには出かけてたこと内緒にしてね」と付け加えた。

猫なら確かに心当たりがあった。扉間に内緒で柱間が拾ってきて育てていた三毛猫だ。しかし三日ほど前、とうとう扉間に見つかり捨ててくるよう言いつけられたのだった。

「ねぇ、あの子の名前なんていうの?名前わかんなかったから、勝手にミケって呼んでたんだけどさ」
「奇遇だな、兄者もミケと呼んでいた」

イズナの言葉に応じながら、扉間は思った。

兄者のやつ、オレの言いつけに従って猫を捨てたりしていないだろうな!!

その日を境に、扉間はミケをいたく可愛がるようになったのだという。


・:*三☆・:*三☆・:*三☆

「おかしいと思わんか~?この間は『猫は飼わんぞ、捨ててこい!』と言っておったんぞ。それが昨日、家に帰ったら『猫はどうした兄者。あれはうちの猫だ。捨てたりしていないだろうな!』と、こう手のひら返しぞ?わけわからんのぞーーー」

不満を漏らし執務机に突っ伏する柱間に、マダラは読んでいた書類から顔を上げ「猫か…猫は良いぞ」と口を開いた。

なんでも数か月前からマダラのところに三毛猫が遊びに来ているらしい。イズナには内緒で餌をやったり、寒い日には部屋に上げてやったりして可愛がっているのだそうな。

「マダラに優しくされて、猫も幸せぞ~」
「イズナは昔から犬派だったからな。見つかったら自分も犬を飼うと言い出しかねない。絶対いうなよ」
「おぉ…わかった。二人だけの秘密ぞ!」


こうしてミケはいろいろな場所に別荘を持ち、餌をもらい、立派なデブ猫へと成長していくのであった。

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